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聖書や神話を知らんと理解できんアートが多いのでエピソード別にまとめてみる(新約聖書篇7) 〜東方三博士の礼拝

1000日チャレンジ」でアートを学んでいるのだけど、西洋美術って、旧約聖書や新約聖書、ギリシャ神話などをちゃんと知らないと、よく理解できないアート、多すぎません? オマージュなんかも含めて。
それじゃつまらないので、アートをもっと楽しむためにも聖書や神話を最低限かつ表層的でいいから知っときたい、という思いが強くなり、代表的なエピソードとそれについてのアートを整理していこうかと。
聖書や神話を網羅したり解釈したりするつもりは毛頭なく、西洋人には常識っぽいあたりを押さえるだけの連載です。あぁこの際私も知っときたいな、という方はおつきあいください。
旧約聖書篇は全65回で完結しました。こちらをどうぞ。

いまは新約聖書をやってます。ログはこちらにまとめていきます。
このあと、ギリシャ神話。もしかしたらダンテ『神曲』も。


このエピソードも有名だねー。

東方三博士(はかせ)、とか、東方三賢者、とか、東方三賢人とか、いろいろな呼び名で呼ばれている。博士もしくは賢者・賢人をラテン語で「マギ(Magi)」というので、「三人のマギ」と呼ばれることもある。

信仰者でもミッション校出身でもないボクも、なんとなくこんなイラストイメージを知っていたくらいは有名だ。

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でもね、なんか読み込んでいくと、意外と「裏があるエピソード」だな、これw

キリスト教布教のために広告代理店のプランナーが暗躍した形跡があるw(←比喩ですよ比喩)


まぁちょっと読み解いていこう。

まず、何の博士(賢者・賢人)かというと、「占星術」の博士らしい。

当時の占星術は、今の「星占い」というイメージよりずっと科学っぽかったみたいで、天文学から農業に必要な気候データなどを提供したり、天変地異を先読みして警告したりする大事な仕事だったらしい。

で、この博士たちが天の星を読んで「おお、はるか西方で救世主(ユダヤの王)がお生まれになった」と知り、東方の異教の地からえっちらおっちら赤ちゃん(イエス)を拝みに来た、というのがこの物語だ。


ポイントは「異教の地から来た」というところ。

そう、ユダヤ人が拝みに来るならまぁ普通だ。
でも、異教の地の偉い学者さんがわざわざ拝みに来る、という設定になっているのがミソである。

つまり、こういうことだ。

ユダヤ人のためだけの宗教だったユダヤ教と違って、キリスト教は、異教の人にも敬われるえらい宗教なんだよ! 

イエスはユダヤ人以外にとっても救世主なんだよ!

つまり、キリスト教は全世界のヒトが対象だよ! ユダヤ人だけが対象じゃないんだよ!


世界にそうアピールするためにこのエピソードが練り込まれた、とボクは思う。

そう、旧約聖書においてイスラエル民族(まだユダヤ教が出来てなかったのでイスラエル民族と呼んだ。旧約聖書のラストの頃にユダヤ教ができ、ユダヤ人が成立する)は、唯一神を選び、「この神はユダヤ人だけを救う。ただしその見返りとして厳しい律法(モーセの十戒)を守らないといけない」という契約をした。

でも、その後、ユダヤ教の一派としてキリスト教が現れたわけだけど、この新興宗教は(特にパウロが)全世界への布教を試み、結果的に成功する。

このエピソードがマタイによって書かれたころよりもパウロが布教した以降のほうがずっと「全世界」を意識している。

そういう意味で、後世、「これはめちゃめちゃ布教に使えるエピソードだ!」って気づいた「プランナー的な人」がいて、どんどん物語を盛っていったんだと思う。

後述するが、この三博士(マギ)は7世紀にそれぞれの名前までつけられている。

そのころの人だと思うな。そのプランナー。

キリスト教を全世界に広めるために、ぜったい誰かがプランニングしたよね?w



実施プランのひとつとして、イベントにもなっている。
「公現祭(エピファニー)」というお祭りだ。

公現祭(顕現日)は、東方三博士の訪問により、「異邦人に対して主の教えが開かれた日」として祝われるようになった祭りだという。

そう、つまり、

ユダヤ人専用の選民宗教から大幅グレードアップして全世界宗教になったことを世の中に大きく広めるイベントだ。


ガレット・デ・ロワという公現祭に食べるケーキまで作られた。

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7世紀頃に名前がつけられたのは前述した。
出身地域も設定されたし、年齢まで設定された。そして聖人に指定されてもいる。単なる異教の学者だったのに、そのころには「聖人」だ。


バルタザール  Balthasar (青年の姿)アフリカ人 or アラビア人
メルキオール  Melchior (壮年の姿)コーカサス人 or ペルシャ人
カスパール   Casper (老人の姿)インド人

青年・壮年・老年の3世代が集まることで「あらゆる世代がイエスにひざまづく」ことを表し、ペルシャからインド、果てはアフリカから来た設定にしたことで「全世界がイエスにひざまづく」ことを表した。

ね、プランナーが暗躍してるでしょ?w

いやホント、布教のためにいろいろ考えてんなー。

下の絵(イタリアはラヴェンナのサンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂のモザイク画)では、絵の上に名前が書いてある。
左から、バルタザール、メルキオール、カスパールだ。

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諸説あるが、バルタザールはアラビアの王、メルキオールはペルシャの王、カスパールはインドの王として表されることも多いらしい。

いや、いつの間にか王にまでなってるし!

キリスト教の権威つけ戦略すさまじいw


・・・いや、信仰している方、すいません。
イエスが語っているいろいろな言葉はフィクションじゃないと思っているんだけど(当時としては革新的な言葉の数々なので創作は難しい)、この辺の、特にキリスト幼少期のエピソードは確実に「キリスト教布教のための創作」じゃないかと思うんですよね。

どうやってこの新興宗教を広く布教しようか、と苦心した跡がいろいろ見える(気がする)。


ちなみに、この三人には意味があるらしい。

ファン・デル・ウェイデンの絵(↓)だと、手前から順に、カスパール (老人)、メルキオール(壮年)。バルタザール(青年)だ。そして、アジア、中近東、アフリカだ。

これは当時の世界観を表しているらしい。つまり、

アジア=体力が衰えた老人、
中近東=気力・体力充実している壮年、
アフリカ=無知な若者

ということも表しているらしいよ。

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ついでに言及すると、アニメ『エヴァンゲリオン』(原意は「福音」)のNERV本部のメインコンピュータは、その名も「MAGI」(マギ)だ。

そして、人格移植OSを用いた3つの独立したシステムによる合議制なのだけど、その3つが、メルキオールバルタザールカスパー

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なんとなんと!
いやぁ、NERV、東方の三博士に制御されていたのかw 知らんかった。



さて。

ちょっとだけマジメにストーリーの話を。

前回書いたように、福音書は4つあってそれぞれ取り上げているエピソードが違ったりする(同じものもある)。

4つのうちのひとつ、ルカ伝では、イエス生誕の目撃者として前回の「羊飼い」を選んだ(創った)

で、マタイ伝では、イエス生誕の目撃者として「東方三博士」を選んだ(創った)ということだ。


この三博士(マギ、賢者、賢人、王)は、東方で「星」を見て、「新しいユダヤの王様が生まれたようですが、どこにいらっしゃいますか?」と、まずエルサレムに住むヘロデ王を訪ねる。

当時、パレスチナ周辺は遠くローマに支配されていて、元「南・ユダ王国」の統治を任されていたのは、ヘロデという王だったのだ。

↓近年、お墓が見つかっている。


ヘロデはびっくらこく。

そ、そんな話は聞いておらん・・・(というか、王はわしだ。なんだ?あたらしいユダヤの王って)
そ、それは救世主ということか?・・・そうか(けしからん。わしをさしおいて)
わかった。もし、その子を見つけたら、わしにも教えてくれ(ホントかどうか知らんがそんな子は邪魔だ。すぐ殺してくれよう)

博士たちはこう言う。

昔の預言によれば、その子はベツレヘムにいるでしょう。
さっそく探しに行ってきますね。

で、三人はイエスを見つけ、拝み、ヘロデ王の「見つけたら教えてくれ」という約束を破って(不穏なものを感じたんでしょうな)、そのままあっさり国に帰ってしまうわけ。

で、ヘロデ王は逆上し、「救世主というのはどこのどいつだ! なに? わからん? だったらベツレヘム中の二歳以下の幼児を全員殺してしまえー!」と命令を下す(イエス大ピンチ!)。

これが有名な幼児虐殺。
そしてマリア一行は命からがらエジプトに逃避行する。

次々回くらいに取り上げるエピソードだ。


前置きが長くなった。
東方三博士がエルサレムに移動していく情景を追ってみよう。

その道中をわりとリアリティを伴って描いているのが、ジェームズ・ティソさん。
ちゃんとラクダだし、アラブっぽい格好をしている。
東方というから、ペルシャあたりから来た、と考えるのが自然だしね。

でも、こういうリアリティは、他の画家さんはまったく追わない。

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サセッタ
ラクダじゃなくて馬だ。
つか、不思議な絵だなぁ。なんでこんな下りにする必要があったのか(逆に絵の構図としては面白いけど)。真ん中ちょい上の稜線が重なったあたり(つまりフォーカルポイント)にいる「頭に光輪がついている3人」が三博士だろう。そうかー光輪かー。ほんとに聖人にまで昇格しちゃったんだな。

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イヴァーニ・グランウァルド・ベーラ
夏だね夏。
つまり、やっぱりイエスが生まれたのは冬じゃないんだな。羊飼いたちも放牧していたしね。この絵も馬。

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フェレンツィ・カーロイ
なんか前途暗そうな3人の旅w

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レオネルト・ブラマー
「こっちだよ」って天使の導きつき。

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アンドレア・デル・サルト

真ん中の三人。手前から、メルキトール、カスパール、バルタザールだろう。

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で、ヘロデ王に会った後、彼らはベツレヘムに着く

町の中を探し回り、ようやく家畜小屋を探し当てる。

彼らはそこで救世主を見て這いつくばるわけだ。
礼拝というより平伏に近い感じ。



この場面は、巨匠たちも含めて、名画がたくさんだ。
ただ、ほぼすべて「説明的な絵」なので、名画は名画だけど、わりと似たり寄ったりになっているのが玉に瑕。

無理矢理分類してみると、大きくは3つに分けられるかな。

(1)イエスにひざまづく
(2)イエスの足にキスする
(3)赤ちゃんイエスがなにかしら反応している

では、その分類で見て行ってみよう。


(1)イエスにひざまづく


基本的に、カスパール(老人・インド方面←本当は肌が黒いはずだけど)がひざまづき、他のふたりは見ている(順番を待っている)パターンが多い。


レンブラント

喜ばしい場面なのだろうに、なんか全体に重苦しい絵。マリアの顔もゆがんでいる。なんだろう。イエスの受難の人生を「占星術師」たちが指し示しているのだろうか。

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ベラスケス
イエスはなんか「いいとこのボン」みたいにおくるみにくるまれている。照明がイエスに当たってて印象的ないい絵。
三博士、みんな若いね。バルタザールは完全にアフリカ系。
右手前の花はなんだろう。なにか意味を持っていると思うのだけど。

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レオナルド・ダ・ヴィンチ
下書き的だけど、これ、描き上げて欲しかったなぁ。超おもしろそうな絵だ。表情とかとてもいい。

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ヒエロニムス・ボス
ボス特有の世界観で見ていて飽きないな。ファンキーだ。

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この屋根の上の顔色悪いヤツw

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左奥でいじけてるヤツw
(お産した布とかを洗って乾かしてるのかな? ということはマリアの母のアンナか ←たまに描かれることがある)

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つか、中央の家の中の下着姿のセクシーな王様みたいのは誰だ!? 猿顔の家来がいるw(もしかしてヘロデ王に対する揶揄かな)

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ファン・デル・ウェイデン。

有名な絵。ボロボロの家畜小屋にやってきた偉い人たち。その雰囲気がよくわかる。マリアも三博士もいい。空には導きの星が見えている。

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ハンス・ジュス・フォン・クルムバッハ
完全に三人とも王様だね。お付きの従者も多い。

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プッサン
いや、ちょっと平伏しすぎでしょw 這いつくばってにじり寄る三博士(ここでは王様っぽくなく、市井の学者ぽい)。マリアの顔はとてもいい。

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ヤコポ・バッサーノ
これも相当にじり寄っている。四つん這いw

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ジョルジョーネ
かなり遠くで膝をついて敬っている。
贈り物を持っている博士もいる。
三人が持ってきた贈り物は「黄金」と「乳香」と「没薬」。それぞれに意味があるのだけど、複雑になるので省略。

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フラ・アンジェリコ & フィリッポ・リッピ
これもいい絵だな。三博士が訪ねてきたことを聞いて、町の人が押し寄せた感じだろうか。孔雀は「復活(腐ることのない肉)」の寓意。イエスの今後を示しているのだろう。

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マティアス・ストーメル
これもいい絵だね。カスパール、必死w カスパールの後ろにいるカメラ目線の子どもは、雇い主か寄進者の子どもか何かだろうか。もしくは若い頃の自画像。

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ウィルヘルム・ステッター
なんか遠近法を使っているわりに、登場人物の縮尺が全体に変な絵だ。メルキオールだけ妙にでかく目立っている。

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ヴィルモス・アバ・ノヴァク
ちょっと抽象系。手前の塊は跪いて丸くなっているカスパール。
立っている男はヨセフだろう。半分消えている。

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(2)イエスの足にキスする

実際にキスしてないけど「キスする勢い」というのも含んだ。

あと、足もとに顔を近づけて「イエスが割礼をしているか股間を覗き込んでいる」という説もある。
とはいえ、ユダヤの習慣である割礼を異教の人が確かめるなんて、理屈上おかしいよなぁ。


マザッチョ
後ろのふたりの王冠を従者たちが外している。つまり「王」なんだな、三人とも。博士だったのになーw
というか、中央に印象的に使われている「赤」が鮮やかだね。

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ピーテル・ブリューゲル
この絵のカスパールは完全に股間を覗き込んでるね。
三博士(王?)はそれぞれ贈り物を持っている(バルタザールは黒すぎてわかりにくいけど右手前ね)。
マリアの後ろで耳打ちしているのは誰だろう。

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ドメニコ・ギルランダーイオ
この絵(↓)はいろんなエピソードが同居している。

上の天使たちは「受胎告知」
右奥が「羊飼いの礼拝」
左奥が「幼児虐殺」「エジプト逃避」
左手前でカメラ目線で指さしているのが「洗礼者ヨハネ」
そして、真ん中手前が「東方三博士の礼拝」だ。
(他にもあるかも)

そして、まわりにいるリッチそうな人々は雇い主や寄進者や時の権力者のパターンだろう。カメラ目線は画家の自画像か。

もう、なんつうか、「オールスター夢の競演!」って感じだね!
たぶんお金払った人が「もうさ、全部入れてや。全部!」って頼んだんだろうなぁ。

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ムリーリョ

イエスの凝視がすごい。目力!
左隅の子どもたちは完全に誰かに対するサービスショットだね。
それはともかく、きれいないい絵だと思う。

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マルコ・ピノ
中央上に導きの星。そして平伏しにじりよるカスパール。

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アントニオ・ヴィヴァリーニ
神も聖霊(白鳩)も天使の楽隊もいて、神側の出席者は勢揃い。
人間側は、もう完全に「軍隊を引き連れた王様たち」の巡行だね。

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ティツィアーノとその工房。
足の裏をなめさせてやってる風のイエス。
全体に地味な絵ではある。

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ジョット
天使を含め、光輪がある聖人だらけの絵。ほぼ全員が聖人。どうなんだそれ。

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(3)赤ちゃんイエスがなにかしら反応している


ルーベンス
ルーベンスは3枚あるんだけど、どれもイエスに動きがある。
3枚とも素晴らしい絵だと思うけど、特にこの1枚目。

なんか三博士の驚きと前のめり感が伝わってくる。イエスもそれに応えており、とても劇的な場面となっている。マリアも美しい。

この絵はとてもいいな。
なんか好きなのでこれを「今日の1枚」としよう。

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2枚目のルーベンスもとてもいい名画だ(↓)。
3博士の表情がそれぞれとてもよく(黒人のバルタザールなんて実にいい表情だ)、イエスがハゲ頭に手を乗せて(マリアに乗せられて)カスパールを祝福しているのも可愛いなぁと思う。神々しいし。
人々(従者たち?)の構図や動きもよく、さすがルーベンス。

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3枚目のルーベンスは、マリアに照明が当たってて美しい。
イエスは自らカスパールの頭をなでなでしてる。
いや、これも名画やねえ。ルーベンス、うまいなぁ。。。

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巨匠デューラー
イエスが積極的に動いている絵。黒人のバルタザールだけちょっと若すぎて威厳がないけど、それは「アフリカ=まだ未熟な若者」の象徴としてわざとそう描いているのだろう。

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ヘンドリック・ファン・バーレン
イエスがハゲ頭をつるつる撫でて祝福しとるw
バルタザール(黒人)は帽子とって「私も撫でてもらおう!」って用意。うしろのメルキオールは右上の画面外の何かを見つめている。聖霊か天使だろうか。もしくは占星術師だけあって星を見て驚いているのだろうか(中央上に光っているのは導きの星だろう)。
左のカメラ目線の子は、例によって誰かの子どもをサービスで描いたんだろうな、と思う。

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バティスタ・マイノ

イエスの右手が中央の神を指している(もしくは導きの星を指している)。

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ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス
イエスは贈り物に手を伸ばしている。ちょっとカスパールのハゲ具合と絶壁頭が心配! あと、バルタザールの肌を黒くしすぎじゃないだろうか。

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アルブレヒト・アルトドルファー

美しい絵。イエスは贈り物に無邪気に手を差し伸べる。天には導きの星。なんか賑々しいいい絵。

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ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ
いやー、最高に賑やかだ。
そして、ストーリーが全部描いてあるわかりやすい絵でもある。
左上は星を見つけた三博士。中央上はヘロデ王に会いに行く三博士。そして右から中央下に向けてはイエスを拝みに来た三博士、である。
イエスは手を伸ばしてカスパールを祝福している。従者たちは天を見上げたり抱き合ったり喜んでいる。

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この絵は動物たちも隅々までおもしろい。
馬が笑ってたり、その横に豹がいたり、

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猿のカップルがいたり、鳩が交尾していたりw(白鳩=聖霊なんだけど、いいのか?w)

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足もとにはどさくさに紛れて盗人っぽいのがいるw

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最後にちょっと変わり種を。

ボッティチェリ
これ、東方三博士の絵ではあるのだけど、イエスに跪いているのは博士じゃない。メディチ家のフィレンツェ支配を確立したコジモ・デ・メディチらしい。カスパールに扮してはいるけど。

すぐれた肖像画家でもあったボッティチェリがこの絵の中にいろんな人を描き込んでいる。そういう要請だったのだろう。まぁ「おべっかアート」やね。

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画家本人は右端にいる。
ボッティチェリの自画像としてよく使われる有名な絵。

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そしてそのすぐ左に、この絵を寄進した人(お金だした人)、デル・ラーマ。
オレオレって自分を指さしてるw
そんなわけで、この絵は「デル・ラーマの礼拝」という別名すらある。

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そして、陰の主人公は左端にふんぞり返っているロレンツォ・デ・メディチ。栄華を誇るメディチ家の若き当主。

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右後ろにいるこの人もカメラ目線だから、きっと有名な人なんだろうな。
ちょっとボッティチェリに似てるので、兄弟とかかしら。

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ということで、とにかく聖家族(イエス、マリア、ヨセフ)と一緒に有名人をいろいろ描いた、っていう絵だ。ある種の記念写真的。

たぶん寄進したデル・ラーマによるゴマスリ目的の絵だと思われる。



ということで今回はオシマイ。

名画が多かったけど、わりと似たような絵が多く、まとめながら少し中だるみしてしまった。

次回は、聖母子
聖書のエピソードではないけど、「聖母子像」って山ほどあるんだよね(というかほぼ無限にある)。それをテーマに沿って集めてみたいと思う。

これまた手間がかかりそうな・・・(泣)。




この新約聖書のシリーズのログはこちらにまとめて行きます。
ちなみに旧約聖書篇は完結していて、こちら

※※
間違いなどのご指摘は歓迎ですが、聖書についての解釈の議論をするつもりはありません。あくまでも「アートを楽しむために聖書の表層を知っていく」のが目的なので、すいません。

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この記事で参考・参照しているのは、『ビジュアル図解 聖書と名画』『キリスト教と聖書でたどる世界の名画』『聖書―Color Bible』『巨匠が描いた聖書』『新約聖書を美術で読む』『名画でたどる聖人たち』『アート・バイブル』『アート・バイブル2』『聖書物語 新約篇』『絵画で読む聖書』『中野京子と読み解く名画の謎 旧約・新約聖書篇』 『天使と悪魔の絵画史』『天使のひきだし』『悪魔のダンス』『マリアのウィンク』『図解聖書』『鑑賞のためのキリスト教事典』『西洋・日本美術史の基本』『続 西洋・日本美術史の基本』、そしてネット上のいろいろな記事です。



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