親が「温かくしなさい」とか言ってたのは子どものためももちろんあるけど、「自分が寒いから」が一番大きかったんじゃないか説
11月を前にして、朝晩すっかり冷え込んできた。
つい1ヶ月前くらいまで暑かったので、余計に寒く感じる。
若いときには、このくらいの気温で寒がるとか考えられないことだった。
というのも、ボクはとても寒さに強い若者だったのである。
10代〜20代前半、ボクは寒さに超鈍感で、常に薄着で通しており、「季節感のないヤツだなぁ」とか友人に笑われたりしていた。
真冬でも半袖で平気だったし、コートも薄いのを1枚しか持っていなかった。雪が降り注ぐテニスコートで、ボクだけ半袖短パンで写っている写真とか、いまでも残っている。
よく外国人にいるよね。
真冬でもTシャツ一枚みたいな超薄着のヒト。
ボクがまさにそれだったのである。
ひと言で言うと、暑がりだ。
新陳代謝が活発だったのかもしれない。
真冬でもふとんをかぶっていると暑いのですぐ蹴ってしまう。
そんなボクを見かねて、母はよく言ったものだ。
「温かくしなさい。お腹が冷えるでしょ。ほら、ちゃんとふとんをかけなさい!」
あれから40年近く経ち、ボクも60歳に手が届く年齢になってしまった(なんてこった)。
そして今、ムスメに同じことを言っている。
「そんな寒い格好してないで、温かくしなさい」
「こんなに寒いのに窓を開けたまま寝るとか、風邪ひくぞ」
「ちゃんとふとんかぶって寝なさいって」
いったい何度言えばわかるんだプンプン。
え? なんでそんな小言を言ってるかって?
決まってる。
寒いからだ。
こんなに寒いのに、何でムスメは薄着で窓開けてふとんもちゃんとかぶらないで寝てるのか!
ちょっと憤ってすらいる。
風邪ひくぞ!
お腹冷やすぞ!
明日も会社だろ!
だって朝晩、本当に冷えこむじゃん?
こんなに寒いのに、なんでムスメはあんな薄着でふとんもかぶらず・・・
・・・あ。
あれ?
もしかして暑いの?
ムスメよ、もしかしてキミはこの気温でも暑いのかい?
こんなに冷え込んでいるのに、窓を開けたまま寝て、その上ふとんを蹴っちゃうくらい暑いのかい?
あ〜・・・・
なるほど暑いんだ・・・
今年24歳のムスメは、この寒さに薄着でも大丈夫なんだ・・・
・・・そういえばそうだった。
オレ、雪降ってても半袖で平気だったじゃん!!!!
そして、いっつも親から口うるさく言われていた。
でも、聞かなかった。
だって暑いんだもん。
いまは寒い。
ちょっと冷えるとすぐ床暖(床暖房)つけ、妻に「まだ早い!」とか怒られたりしているくらいは寒がりだ。
秋口からすでにヒートテックを着ている。ヒートテックが発明される前はいったいどうやって生きていたのだろうレベルに寒がりだ。
そう、つまり、あんなに寒さに強かったボクも、寄る年波、すっかり寒さに弱くなってしまったのである。
・・・なるほど。
きっと母も同じだ。
きっとトシを取って、寒さを身に沁みて感じていたんだ。
口うるさく、そしてしつこく「温かくしなさい」って注意してくれていたけど、きっとあれは、とにかく自分が寒いから、「こんなに寒いのに、なんでこの子はこんな薄着でいるの? 風邪ひくじゃない!」と憤っていたんだ。
そうかぁ。
もちろん、カラダを冷やすといいことないという知恵も、風邪をひくといろいろ大変だという経験則も、そして我が子の健康を思うという愛もあったと思う。
でも、実は「とにかく自分が寒い」というのが根本的な理由だったのではないか、と、自分が寒さに弱くなった今、思う。
なるほどね。
順繰りなんだな。
お母さん、あのとき言うこと聞かなくてごめんなさい。
でも、暑かったんです。
そしてムスメよ。
もう言わん。
勝手にせい。
そのうち親の「寒さ」がわかるときが来る。
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