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紙絵本vsデジタル絵本、どちらが良いの?

テレビ、スマホだけでなく、最近はスマートスピーカーまで・・・ご家庭には当たり前の存在となったデジタルツール。私達の生活がデジタル化していくことに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
ベネッセ情報教育サイトで第10回目として、下記の取材記事を公開して頂きました。

記事では、「アナログ学習」と「デジタル学習」とを組み合わせることの効果について言及しました。デジタルが普及するにあたり、「デジタル vs アナログ」どちらが良いのか?という議論を多く見かけます。特に、「絵本の読み聞かせ」研究では懸念する声を耳にします。
けれど、絵本作家が作り上げた世界を繰り広げるための表現媒体として見るのであれば、そこに優劣はあるのでしょうか?

例えば「まり」(谷川 俊太郎 (著), 広瀬 弦 (イラスト))の観察研究において、デジタル絵本の読み聞かせと紙絵本の読み聞かせには、それぞれ異なる対話が生まれていることが分かりました。デジタル絵本の「まり」は、物理シミュレーション機能が備わっていて,4種類の素材のまりを選択し,素材の質感を感じながら、紙絵本と同じ空間を指で,あるいはiPadを傾けて、身体の動きを伴って操作することができます。紙絵本を親に読み聞かせてもらい、デジタル絵本で遊び、再び紙絵本に戻り、自分で読み上げる等々、何度も「まり」の世界を味わう子どもの様子が観察されました。
この例に見られるように、「デジタル vs アナログ」の二項対立で考えるのではなく、どのような表現媒体を用いながら子どもたちの活動をより豊かにしていくかが問われているのだと考えます。

佐藤朝美 (東京大学)・佐藤桃子 (株式会社ベネッセコーポレーション)(2013), 「紙絵本との比較によるデジタル絵本の読み聞かせの特徴の分析.」 日本教育工学会論文誌,Vol.37, Suppl.号, pp.49-52. 

未来の絵本作家たち

もちろん、これまでの読み聞かせ絵本として愛され続けている紙絵本は、これからも親子の時間を豊かにするものとして引き継がれることと思います。

いっぽうで、現在進行形として、新たな絵本も新たな作家たちにより作られています。その素敵な創造世界を見逃すのは子どもにとって勿体ないことではないでしょうか。例えば、第5回デジタルえほんアワードの受賞作品「Oh! The magic drawing app」アプリは、しかけ絵本の新たな形態を提案してくれています。
Anouck Boisrobert & Louis RigaudのWeb(https://ludocube.fr/game/oh/

受賞コメントページにもあるように、二人の作家はそもそもデジタルクリエイターではなく、紙絵本の作家でもあるのです。「That's My Hat!」は紙のしかけ絵本で、ページをめくった時のワクワク感はアプリに引けを取りません。

ベネッセ情報教育サイト記事では「クロスメディア」という言葉も紹介しました。「デジタル vs アナログ」どちらが良いのか?ではなく、それぞれに適したコンテンツ(就寝時の絵本の読み聞かせ、遊びの世界を広げたい時の読み聞かせ等々)を選ぶ、あるいは、どちらのメディアも行き来しながら、より効果的に絵本を体験していくのはいかがでしょうか。

そして・・・
デジタル・ネイティブ世代のクリエイターが、絵本という領域に新たな世界観を創造し、感動をもたらしてくれることを見逃さないようにできるといいですね!!

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