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ティク・ナット・ハンの手記〜Call Me by My True Names

ブログから転載。


前回の記事でご紹介した、ティク・ナット・ハンの記事を読んだとき、少し疑問に思っていたことがありました。

2011年の4月のこと。後に何度も繰り返し訪れることになった、仏教瞑想センターに、はじめて滞在しました。その瞑想センターは、スリランカの山の上の古都キャンディから、近郊の山をさらに1時間車で上った、ティープランテーションのなかにありました。通いの料理人と庭師がひとりずついるほかは、在家の瞑想の教師がひ...

詩の原題は、Call Me by My True Names、「名前」の部分が、names と複数形になっているのです。

その頃すでに奇跡講座の学習者であった私は、「なぜ、『ほんとうの名前』がいくつもある、という表現になっているのだろう」と訝ったのでした。

2011年4月の終わり、キャンディの瞑想センター離れた私は、インドに渡り、ガンジス川上流のヨガの町リシケシへと飛び、そこで約2ヶ月を過ごしました。

ここでも、たくさんの心に残る出会いがありました。

そのリシケシ滞在中、あるとき私はネットカフェで、スリランカの瞑想センターでダイアリーに書き留めた、あの詩のことを調べていました。

そこで見つけたティク・ナット・ハンの手記を読んで、実はこの詩が、実話に基づいてしたためられたものだ、ということを知ったのです。

そして、なぜこの詩において、「ほんとうの名前」がいくつもある、という表現になっているのか、ということも。

そのリシケシのネットカフェで、当時書いていたmixiの日記に投稿した、その手記の対訳を以下にご紹介します。

ぜひ、詩とあわせてお読みください。

私が暮らすフランスのプラム・ヴィレッジには、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、そしてフィリピンの難民キャンプから、毎週何百という手紙が届きます。

それらを読むのはとても心の痛む作業ですが、我々は読まなくてはならないし、連絡をとらなくてはなりません。できるかぎりの援助をしようとしていますが、苦しみはとてつもなく大きく、時に落胆させられます。

ボートの難民の半数が海で命を落とすといわれており、東南アジアにたどり着けるのは残りの半数だけですが、たとえたどり着いたとしても安全とはいえません。

In Plum Village, where I live in France, we receive many letters from the refugee camps in Singapore, Malaysia, Indonesia, Thailand, and the Philippines, hundreds each week.

It is very painful to read them, but we have to do it, we have to be in contact.

We try our best to help, but the suffering is enormous, and sometimes we are discouraged.

It is said that half the boat people die in the ocean. Only half arrive at the shores in Southeast Asia, and even then they may not be safe.

大勢のボート難民の若い女の子たちが、海賊によってレイプされています。

国連や多くの国が、こうした海賊行為、海賊が難民にさらなる苦痛を与えつづけることを防ぐため、タイ政府を援助しているのにも関わらず、です。

ある日、我々のもとに、タイの海賊にレイプされた小さなボートの上の少女について綴られた手紙が届きました。

彼女はたったの12歳だったのに、海に飛び込んで亡くなりました。

There are many young girls, boat people, who are raped by sea pirates.

Even though the United Nations and many countries try to help the government of Thailand prevent that kind of piracy, sea pirates continue to inflict much suffering on the refugees.

One day we received a letter telling us about a young girl on a small boat who was raped by a Thai pirate.

She was only twelve, and she jumped into the ocean and drowned herself.

あなたはこうした出来事に接すると、まず海賊に怒りを覚えます。

当然ながら少女の身になって考えるわけです。

もっと深く見るにしたがい、別の見方で見るようになります。

あなたがちいさな少女の側に立つのは、かんたんなことです。ただ銃をとって海賊を撃てばいい。

しかし我々は、それをしてはいけません。

When you first learn of something like that, you get angry at the pirate.

You naturally take the side of the girl.

As you look more deeply you will see it differently.

If you take the side of the little girl, then it is easy. You only have to take a gun and shoot the pirate.

But we cannot do that.

瞑想中に私は、もし私が海賊の村に生まれ、彼とおなじ環境で育ったとしたら、私が海賊になった見込みはとても大きい、ということをさとりました。

シャム湾岸で、毎日に何百という赤ん坊が生まれていること、そしてもし私たち、教育者、ソーシャルワーカー、政治家、その他のひとびとがこの状況について何もしなかったら、25年後には彼らの多くが海賊になるだろうということを。

これは確実です。

もしあなたか私が、今日そうした漁村に生まれたとして、25年後には海賊になるかもしれないんですよ。

もしあなたが銃をとって海賊を撃つなら、我々みんながこうした事件が起こる状態に、多かれ少なかれ責任があるということなのです。

In my meditation I saw that if I had been born in the village of the pirate and raised in the same conditions as he was, there is a great likelihood that I would become a pirate.

I saw that many babies are born along the Gulf of Siam, hundreds every day, and if we educators, social workers, politicians, and others do not do something about the situation, in twenty-five years a number of them will become sea pirates.

That is certain.

If you or I were born today in those fishing villages, we may become sea pirates in twenty-five years.

If you take a gun and shoot the pirate, all of us are to some extent responsible for this state of affairs.

長い瞑想のあと、私はこの詩を書きました。

この詩のなかには、3人のひとびとが出てきます。12歳の女の子、海賊、そして私。

我々は、お互いを見て、お互いのなかに自分自身を見ることができるでしょうか?
詩のタイトルは、「どうぞ私をほんとうの名前で呼んでください」、なぜなら私にはほんとうにたくさんの名前があるからです。

それらの名前のうちのひとつが聞こえたら、私は「はい」と言わなければなりません。

After a long meditation, I wrote this poem.

In it, there are three people: the twelve-year-old girl, the pirate, and me.

Can we look at each other and recognize ourselves in each other? The title of the poem is "Please Call Me by My True Names," because I have so many names.

When I hear one of the of these names, I have to say, "Yes."

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