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「苦しむ心をもつ人を待つ甘い罠」との付き合い方

私の母は、長く心の病を患っていた。その影響のせいもあるのかな。人生のすぐ隣には「心を病むとは、どういうことなのか」というテーマが居続けた気がする。

その中でしみじみわかった。

この社会は、心の病に対して厳しすぎる!
そして、偏見が大きすぎる!

母が心を病んだのは30年程前のこと。
だから、当時よりは多少は進歩しているーーと思いたいけれど、果たしてどうなのだろう。

ただ確実に変わったことはある。
それは「学べる手段」「知る手段」が増えたことだ。

マンガとか、手軽に「心の病」について知れるようになったのは、よい変化だと思う。クリエイターのみなさんと、読者のみなさんの協働作業の成果ですね。

「心の病」について学ぶうえで、とても興味深く読んでいるマンガがこちら。

精神科医の主人公の物語を通じて、さまざまな症例・不調について丁寧に描かれていて、とても参考になることが多い。
そして、毎回考えさせられてしまう。

物語の主人公は、こう話している。

「僕はこの国に、もっと精神病患者が増えればいいと思っています」

医療とつながることで、苦しみの渦中にある人が救われる……うん、確かにその可能性は高まるかもしれない。

ただ、医療につながれば何とかなるほど単純な問題なのだろうか。
この物語のすごいところは、そこまで描いているところだ。

ちょうど今日、51話「解離性障害」の続きが更新されて読んだ。
さいごのあたりのシーンがこれだ。
(この男性は、物語の主人公・精神科医の弱井)

「Shrink~精神科医ヨワイ~」第51話

これ、本当にそうだな……と思った。世の中を見渡すと、「苦しむ心をもつ人を待つ甘い罠」「心の弱った人につけこむビジネス」は、びっくりするほどたくさんあるのだもの。

「弱った心につけこむ」なんて書くと悪意があるだろうか。

もちろん「癒し」は必要だ。
そういうサービスに、私もたくさん助けられている。

極端な話かもしれないけれど、

↑これも一理あるなと思うのだ。

私は長くビジネス書の編集者をしていたので、自己啓発の世界はわりと身近なものだった。そして、サービスの受け手となっている人のなかには、過去に心を病んだ経験をもつ方も少なくない。

「仕事がきつくて、うつになって、休職をして、その間に読んだ●●さんの本に感化されて直接学ぶようになったら、人生が変わりました」

なんていう話、何度も聞いたことがある。

胡散臭い? 
この言葉だけだと真意はわからないけれど、私は、前向きに生きられているのであればいいのではないかと思う。

自己啓発セミナーの講師しかり、占い師さんや水商売の方などは、多くの場合、心の病の専門家ではない。
でも、じっくり話を聞いてくれる。誰かに受けとめてもらえる。愛をもって真剣に向き合うことで、人は癒されることもある。
もしかしたら、強い薬なんか必要ないケースもあるのだろう。

一方で、知人が某有名心療内科に通っていた時の話。

「精神科医は診察中、目も合わせてくれない。『眠れてますか? 食べられていますか? じゃあお薬出しておきますね』で終わるんだよ。で出された薬を飲むと、気分が悪くてもう廃人みたいになる」

すべての精神科医が、マンガの主人公のようだったらシンプルなのだけど、そうはいかないのが現実だ。

「知識・技術のない素人だけど、愛をもって接してくれる人」
「知識・技術があるプロだけど、機械的に処理するような人」

どちらが本当に、人を救えるのだろうか。

ただ、実際のところ、愛や傾聴が本心からのものもあれば、お金に目が眩んだハリボテであるケースもある。
お金に目が眩んだ”癒しサービス”と、心が弱った人がマッチングすると、悲惨な出来事が起きることだってある。

自己啓発やスピリチュアルで身を崩した人、何人か知っているのだけど、ある人は、誰彼かまわずセミナーに誘いまくって、疎まれて、結果的にどんどん孤立していき……今はどこで何をしているのか、わからない。

これは自分の助けになるものなのか、偽物ではないか……見極める目が大切なのだと思う。
ただ、心が弱っているときはその真贋を見極めるのが難しい。理性的な判断、行動ができなくなっている可能性だってある。

ああ、いよいよ難しくなってきたぞ。

心の病は、どんなふうにケアされるのがいいのだろうか。
弱った心につけ込むビジネスと、どう向き合えばいいのだろうか。

オチも答えもなく、ただ「難しいなぁ」と思い悩んだだけなのだけど。

こういう話が「難しいよね」「悩ましいよね」とオープンにできるようになることが、まず必要なことなのかもしれない。

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