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【記憶を刺激する写真1】親戚宅の洗濯物スタンド

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洗濯物を木製の洗濯バサミで、ビニル製のワイヤーに干すということを知ったのは、イギリスで居候生活したときだった。
洗濯バサミを「ペグ」と英語でいうのを知ったのも、その家の居候になって、
私とあまり年齢が変わらない女性家主が教えてくれたときだった。

日本のようなプラスチック製でも、イギリスの木製でも、
洗濯バサミの小さな跡が乾いた洋服に残るのが同じだったことは、
自分だけの小さな発見のような気がした。

ある日、彼女と私の2人ともが庭に洗濯物を干していた。
雲行きが怪しくなり雨粒が落ちてきたのは、
彼女が買い物へ行ってから間もなくのこと。
果たして雨足がひどくなるかどうかは分からなかったけれど、
急いで庭へ出て、洗濯物を取り込んだ。まずは自分のものを。

そして一瞬迷って、彼女の分も。
私たちは食事も洗濯も掃除も自分のことは自分でというスタイルだった。
それはお互いにとって、とても心地よかった。
だから、彼女の洗濯物を取り込むことはおせっかいかもしれないと迷ったのだ。案の定、帰ってきた彼女は言った。
「ありがとう。でも、そのままにして濡れてしまってもよかったのよ」

そんな彼女とも、私がスイスに住んで数年したころにパタリと音信が途絶えた。が、1年前、忘れていた記憶の中からこの洗濯の思い出が浮かんだ。
「いつか、ぜひ会いましょうよ」と彼女から突然のeメールが届いて。

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