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【連載9】田んぼの除草で決めたこと

 お米の有機栽培で頭をかかえるのが、除草作業。昨年は、「アイガモロボ」の実証実験に参加する機会に恵まれた。アイガモロボは、太陽光エネルギーで田んぼを泳ぎ回る抑草ロボット。スクリューで田んぼの表面を濁らせて、雑草を生えないようにする仕組みで、大注目されている最新のロボットだ。

 アイガモロボを導入するためにはまず、田んぼをできる限り平らにしなくてはいけない。レーザーレベラーなどの便利な機械は持ってないので、ドライブハローで少しずつ土を動かした。アイガモロボが座礁しないよう、いつになく田んぼを見回りに行って水深を測り、深水に耐えられる丈夫な苗づくりにも取り組んだ。稲作の基本と言える田んぼの均平・水管理・育苗。新型ロボットがやってきた田んぼで、初心に戻ることができた。

 それと昨年、私が意識したのは、「田んぼと自分を分けて考える」ということ。お米農家の大先輩に「田んぼはあなた自身」と言われたことがある。田んぼは自分を映す鏡のようなもので、雑草をたくさん生やしてしまうと、みっともない自分が恥ずかしかった。そんな田んぼを見るのが憂鬱で、だんだん田んぼから遠のいてしまう、田んぼはどんどん荒れる、という悪循環。集落の人から厳しいことも何度も言われた。そうなると、自分自身を否定して、具体的に何が問題なのか考えるのをやめてしまう。

 だから思い切って、「田んぼと私は別」と考えることにした。どれだけ雑草が生えても、「自分よくやってる」と励ましながら、どうしてそうなったのかしっかり向き合うんだ、と決めて田んぼに向かった。
 結果、昨年は例年になく雑草を抑えることができた。稲刈りの時、通りがかった農家に「よい田をつくったのう」と声をかけられたのは、初めてだった。今年もなにが起こるか分からないけど、どんな田んぼになっても、絶対に自分自身を否定しないぞ! という宣言だけはここに残しておきたい。


全国農業新聞2023年1月27日付に寄稿
【連載】つれづれ農日記/女ひとり米農家になる記録

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