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第5回WBC 侍ジャパンメンバー決定

 イチローがセンター前に決勝のタイムリーヒットを放ち、最後の打者を抑えたダルビッシュが吠え、亀井がズボンの裾を上げた第2回WBCから14年。再び大会制覇に挑む栗山英樹監督率いる侍ジャパンのメンバー30人が明らかになりました。

 正式発表前に報道で続々とメンバーが明かされる状況はどうかという気もしますが、選手にしてみれば調整のため早く知れるに越したことはありません。この時期で陣容を確定できたことはポジティブなニュースと言えるでしょう。

 そんな侍ジャパンの選手たちを2022年シーズンの成績と合わせて見ていきたいと思います。

先発投手

ダルビッシュ有(右) サンディエゴパドレス
30試合 194.2回 16勝8敗 防御率3.10 奪三振率9.11

山本由伸(右) オリックスバファローズ
26試合 193回 15勝5敗 防御率1.68 奪三振率9.56

今永昇太(左) 横浜DeNAベイスターズ
21試合 143.2回 11勝4敗 防御率2.26 奪三振率8.27

佐々木朗希(右) 千葉ロッテマリーンズ
20試合 129.1回 9勝4敗 防御率2.02 奪三振率12.04

 先発として起用される投手は上記の4人と予想。今永のところは他の第2先発の選手から起用されるかもしれませんし、準々決勝以降は今永も第2先発に回るでしょう。また、大谷翔平は本人のコメントからリリーフ起用としています。

 第2回WBCで優勝投手となりベテランとなった今も進化を続けるダルビッシュ、NPB最強投手の山本、槙原寛己以来28年ぶりの完全試合という偉業を成し遂げた佐々木の三本柱には歴代でも屈指の夢があります。

 昨年11月に行われた豪州との強化試合を見る限り、佐々木のメジャーリーグ公式球への適応が若干の不安要素です。それでも彼自身ボールに慣れるための準備を進めており、大会本番での実力発揮に期待したいところ。高奪三振率で支配力に優れた先発投手たちは侍ジャパンの大きな武器と言えるでしょう。

第2先発

伊藤大海(右) 北海道日本ハムファイターズ
26試合 155.2回 10勝9敗1ホールド1セーブ 防御率2.95 奪三振率6.48

戸郷翔征(右) 読売ジャイアンツ
25試合 171.2回 12勝8敗 防御率2.62 奪三振率8.07

宮城大弥(左) オリックスバファローズ
24試合 148.1回 11勝8敗 防御率3.16 奪三振率7.71

髙橋宏斗(右) 中日ドラゴンズ
19試合 116.2回 6勝7敗 防御率2.47 奪三振率10.34

高橋奎二(左) 東京ヤクルトスワローズ
17試合 102.2回 8勝2敗 防御率2.63 奪三振率9.91

 球数制限があるWBCでは先発投手が長いイニングを稼ぐことが難しいため、リリーフとして複数イニングを投げる第2先発が重要です。そのためのメンバーには、シーズン中に先発として多く起用された投手のうち、先発の4人に入らなかった上記の5人が起用されるでしょう。

 規定投球回に到達して二桁勝利の伊藤、戸郷、宮城に加え、奪三振率が9.00を超えるダブルタカハシを擁する陣容は豪華です。先発を中心に活躍してきた若い投手たちであることから、どこまで第2先発という役割に適応できるかが鍵になるでしょう。その点で、伊藤はオリンピック、宮城、高橋奎、戸郷は日本シリーズの経験があり、若いながら場数を踏んでいる投手たちのため、メンタル面の不安が小さいことは好材料です。第2回大会の田中将大以来となる高卒3年目シーズンのWBC日本代表入りとなった髙橋宏には、今後の糧となる経験を得ることも期待されます。

リリーフ

湯浅京己(右) 阪神タイガース
59試合 58回 2勝3敗43ホールド 防御率1.09 奪三振率10.40

大勢(右) 読売ジャイアンツ
57試合 57回 1勝3敗8ホールド37セーブ 防御率2.05 奪三振率9.47

松井裕樹(左) 東北楽天ゴールデンイーグルス
53試合 51.2回 1勝3敗7ホールド32セーブ 防御率1.92 奪三振率14.46

栗林良吏(右) 広島東洋カープ
48試合 48.1回 0勝2敗6ホールド31セーブ 防御率1.49 奪三振率10.99

宇田川優希(右) オリックスバファローズ
19試合 22.1回 2勝1敗3ホールド 防御率0.81 奪三振率12.90

大谷翔平(右) ロサンゼルスエンゼルス
28試合 166回 15勝9敗 防御率2.33 奪三振率11.87

 先発同様リリーフも球に力があり、打者を制圧できる布陣です。その中でクローザーとして見込まれるのは、東京オリンピックでも重責を果たした栗林でしょう。大勢、松井もクローザーとして結果を残した投手たちで、栗林に繋ぐ役割のほか、状況によって抑えを務める可能性があります。

 さらに所属チームで抑えを務める投手だけでなく、セットアッパーの湯浅も代表入り。独立リーグ出身投手として初めてタイトルを獲得した右腕には、ピンチの場面の火消しなど、中継ぎならではの役割も期待されるでしょう。

 さらにシーズン19試合登板の宇田川がサプライズ選出されています。昨年7月まで一軍登板できない育成選手だった右腕は、最速159キロの速球と複数のフォークボールを武器に好成績を残し、オリックスの26年ぶりの日本一にも貢献。イニング跨ぎを含めた便利屋のような役割が期待され、他の投手より少ない実績ながら説得力のある人選となりました。

 そして注目は二刀流の大谷翔平。先発の項でも述べた通り、本人が長いイニングが難しい旨をコメントしていることから、投手としてはリリーフ起用が予想されます。打者として活躍した後にクローザーとして登板となればこれ以上ないほど夢が膨らみますが、メジャー移籍後は先発専任で調整の不安もある大谷を重要な場面で起用するのはあまり現実的ではなさそうです。30人のうち大谷以外の投手が14人という陣容を考えると、大谷の起用は打者にほぼ限定されるかもしれません。

捕手

甲斐拓也(右) 福岡ソフトバンクホークス
130試合 打率.180 1本塁打 1盗塁 OPS.498

大城卓三(左) 読売ジャイアンツ
115試合 打率.266 13本塁打 1盗塁 OPS.755

中村悠平(右)東京ヤクルトスワローズ
86試合 打率.263 5本塁打 OPS.695

 通算OPS.834の打てる捕手・森友哉がライオンズからバファローズへ移籍し、新天地で投手とのコミュニケーションなどシーズンへの準備を優先したことから出場辞退。上記3名が代表選出となりました。侍ジャパンの戦力を考えると森の辞退は痛いですが、捕手というポジションの難しさを考慮すればやむを得ないでしょう。

 栗山監督のコメントを見るに、正捕手は甲斐が有力視されます。これは森がいたとしても変わらなかったかもしれません。打率.240を超えたシーズンが一度しかなく、2022年シーズンはOPS.500を切るなど、打撃面では期待が難しい選手ですが、日本シリーズや東京オリンピック等の実績が評価される形となりました。第4回WBCでは2022年シーズンまでの通算OPS.544の小林誠司が打率.450、OPS1.055と大活躍しており、短期決戦となるWBCでは何が起きてもおかしくありません。捕手として周囲の信頼厚い甲斐ですが、打撃で予想を裏切る結果を残せば14年ぶりの優勝が近づきます。

 甲斐に次ぐ2番手は2021年日本シリーズMVPの中村です。2022年は下半身の張りで出遅れるなど86試合出場に終わりましたが、スワローズをリーグ連覇に導いた実績は揺らぎません。打撃でも甲斐ほどマイナスにならない期待があり、スタメンでも計算できるでしょう。

 そして森の辞退で空いた枠には同じ左の打てる捕手・大城が選ばれました。捕手を務めながら二桁の本塁打を放つ打力は大きな魅力で、左の代打で起用される可能性もあります。また、ジャイアンツでチームメイトの小林誠司は上述の通り前回大会で別人のような活躍を見せましたというか別人だったと考えなきゃ今の醜態の説明がつかないが、選出当初から正捕手として期待されていたわけではありませんでした。打撃で勝る大城がスタメン起用されることも十分にありえます。

内野手

一塁
山川穂高(右) 埼玉西武ライオンズ
129試合 打率.266 41本塁打 OPS.953

二塁
山田哲人(右) 東京ヤクルトスワローズ
130試合 打率.243 23本塁打 10盗塁 OPS.790

牧秀悟(右) 横浜DeNAベイスターズ
135試合 打率.291 24本塁打 3盗塁 OPS.861

三塁
村上宗隆(左) 東京ヤクルトスワローズ
141試合 打率.318 56本塁打 12盗塁 OPS1.168

岡本和真(右) 読売ジャイアンツ
140試合 打率.252 30本塁打 1盗塁 OPS.805

遊撃
源田壮亮(左) 埼玉西武ライオンズ
108試合 打率.266 2本塁打 12盗塁 OPS.655

中野拓夢(左) 阪神タイガース
135試合 打率.276 6本塁打 23盗塁 OPS.647

ユーティリティ
周東佑京(左) 福岡ソフトバンクホークス
80試合 打率.267 5本塁打 22盗塁 OPS.688

 内野でスタメンが確実視されるのは、第1回大会で4番を務めた松中信彦以来NPB18年ぶりの三冠王を獲得した村上です。2月に23歳となる若武者が4番打者として侍ジャパンの命運を背負います。ポジションは一塁の経験もありますが、三塁の可能性が高いでしょう。

 一塁は山田、岡本、牧といった選手たちの可能性もありますが、ユーティリティ性皆無の山川を選んだからにはスタメンで期待していることでしょう。セパ両リーグの本塁打王が共演する破壊力満点の打線となりそうです。

 二塁はシーズンでは不調も国際大会の実績十分な山田と若く勢いのある牧のふたりが選ばれました。どちらをスタメンにするか悩ましいところですが、守備力も考えると山田に分があるように思えます。

 遊撃は長年侍ジャパンを支え、東京オリンピックではキャプテンも務めた坂本勇人けつなあな確定したためシーズンで故障を連発し低迷したこともあり、調整を優先して出場辞退となりました。2022年シーズンも不調とはいえOPS.759を記録した坂本の不在は痛手で、遊撃手の打撃にはあまり期待できません。現役ナンバーワンの守備力を誇る源田のスタメン起用が有力です。もうひとりの遊撃手は2022年シーズンのOPS.761と打撃で他に勝るホークスの今宮健太との予想もありましたが、実際にはタイガースの中野を選出。勢いのあるフレッシュな選手を多く選ぶ栗山監督の方針に合致したことに加え、スピードを誇り代走ができるユーティリティ要員として計算できることが評価されたのでしょう。

 このほかジャイアンツの主砲・岡本とホークスの韋駄天・周東もメンバー入りしています。

 岡本は村上と山川の存在を考えるとスタメン起用の見込みは低くなります。一方で今回の代表は捕手と遊撃手の打力が弱く、代打を送る機会が増える可能性もあるため、右の代打を務めることになりそうです。また、現在の本職である三塁のほかに一塁と左翼の経験を持つユーティリティ性も期待されていると思われます。

 育成出身の周東は、2019年のプレミア12で全て途中出場ながら4盗塁で大会盗塁王となり、侍ジャパンの優勝に貢献しました。今回も代走の切り札として同様の役割が予想されます。また、内野のほかに外野での起用も多いことから、4人しかいない外野の控えとしての役割も兼ねることになるでしょう。

外野手

左翼
吉田正尚(左) ボストンレッドソックス
119試合 打率.335 21本塁打 4盗塁 OPS1.008(バファローズでの成績)

中堅
ラーズ・ヌートバー(左) セントルイスカージナルス
108試合 打率.228 14本塁打 4盗塁 OPS.788

右翼
鈴木誠也(右) シカゴカブス
111試合 打率.262 14本塁打 9盗塁 OPS.770

控え
近藤健介(左) 福岡ソフトバンクホークス
99試合 打率.302 8本塁打 8盗塁 OPS.879

 外野は3ポジション全てをメジャーリーガーが守る豪華布陣。鈴木は中軸としての出場が予想され、吉田は中軸のほかに高出塁率を生かした1番打者起用もありえます。

 そして最注目はアメリカ国籍ながら母親の母国である日本の代表選手となったヌートバーです。25歳の若い外野手で、長打力だけでなく2022年シーズンのIsoD.112と選球眼を兼ね備えています。カージナルスでは主に右翼での起用でしたが、侍ジャパンでは他のメンバーとの兼ね合いで中堅を守ることになりそうです。

 4人目の外野手は今年からホークスへ移籍する近藤が選ばれています。天才的なバットコントロールで代打も含めて期待ができますし、守備でも捕手や内野手としての経験があるため有事の保険になりうる存在です。

指名打者

大谷翔平(左) ロサンゼルスエンゼルス
157試合 打率.273 34本塁打 11盗塁 OPS.875

 二刀流の大谷翔平は先述の通り打者としての起用が主となるでしょう。先発ローテーションを担いながら歴代日本人メジャーリーガー屈指の成績を記録する打棒は圧巻の一言。上位打線でチームを牽引する活躍が望まれます。


 打線は以下のように予想します。

1番 セカンド   山田
2番 指名打者   大谷
3番 ライト    鈴木
4番 サード    村上
5番 レフト    吉田
6番 ファースト  山川
7番 センター   ヌートバー
8番 ショート   源田
9番 キャッチャー 甲斐

 2番から大谷、鈴木、村上と強打者が並ぶ夢のような打線を組むことが可能で、リードオフは実績豊富な山田のほか、高出塁率の吉田やヌートバーを起用する選択肢もあります。また、4番を吉田や山川に任せ、1番から大谷、鈴木、村上を並べてしまう手もあります。どうしても捕手と遊撃手の打力が気になりますが、上位打線の破壊力は過去に優勝した大会の布陣にも劣りません。


 明らかになった30人を確認すると、支配力に優れた投手陣と破壊力ある打線が大きな武器と言えそうです。また、源田と山田による堅守の二遊間もチームを助けてくれるでしょう。下位打線が不安要素となりそうですが、近藤、岡本、牧、大城といった選手たちが代打に控えることでカバーできます。周東と中野のスピード溢れるリザーブコンビもチームのアクセントとして機能するはずです。

 これらを踏まえて最後に記したいことをいくつか。

1.左の中継ぎ不在

 大谷を含めた投手15人のうち、左腕は今永、宮城、高橋奎、松井の4人。さらに所属チームでリリーフを務めているのはクローザーの松井のみで、「左の中継ぎ」は選ばれていないことになります。

 ジャイアンツの中川皓太やファイターズの宮西尚生といった左腕が万全であればブルペンに厚みが加えられたことでしょうが、勤続疲労で実現しませんでした。

 ただし、今大会のルールは2022年シーズンのMLBに準ずるとのことで、投手は打者3人と対戦するかイニングを完了するまで交代できない「ワンポイント禁止ルール」も採用されることになります。そのため、左の中継ぎ不在が大きな痛手となるリスクは低そうです。左右関係なく打者をねじ伏せられる速球派が揃ったことも左に拘る必要性を減らしています。

2.若手重視の選出

 今回のメンバーはとにかく年齢層の低さが印象的です。ダルビッシュこそ36歳のベテランですが、その次の世代となると山田、甲斐、源田、大城といった30歳の世代です。メンバーのほとんどは20代で、25歳以下の選手たちも数多く選出されています。

 こうした大会では「精神的支柱」としてベテランを選出するのが定石ですが、その役割を期待される坂本勇人、柳田悠岐田中将大大野雄大など、いわゆる「ハンカチ世代」は誰も選ばれていません。

 この背景にはベテラン選手側がけつなあな確定してシーズンに向けた調整を優先して辞退したこともあるでしょうが、ここまで年齢層が偏ったことから、栗山監督自身もシーズン前に開催されるWBCでは若い選手の方が有利と考えているように思えます。

 ベテラン選手はよく30歳を超えた頃から身体の変化を実感して運転免許を返納するそうですが、その変化と向き合いながらの調整を強いられるベテランより、生きの良い若手に心置きなく活躍してもらおうという意図があるのかもしれません。

 先に触れた左腕の少なさを考えると大野は入れても良かったように思えますが、投手ひとりの左右に拘るよりはチーム全体の方針に沿うべきでしょう。

3.中堅手不在

 外野手は4人しか選出されておらず、その中にセンターを本職とする選手はいません。カージナルスで右翼を中心に外野3ポジションを守るヌートバーが有力ですが、ヌートバーを含めたMLB球団所属選手は宮崎キャンプへの合流時期も未定で、選手間の連携について不安を拭いきれません。鈴木や吉田も含めたスタメン組の不調時に備え、塩見泰隆近本光司といった外野手を選んでも良かったのではないかと思います。

 一応、2022年シーズンにファイターズでセンターを守った近藤を起用することもオプションではあるでしょう。また、控えとしては周東も計算の内に入ります。とはいえ彼らがいるから磐石とまでは言い切れません。吉田、ヌートバー、鈴木のレギュラー組が不調に陥らないこと、そして本職中堅手不在によりGG佐藤の悲劇が再発しないことを祈るギャンブルに勝つことが世界一の必須条件となります。そこまで分の悪い賭けではなさそうですし、賭けに勝った場合は内野を守れない塩見や近本が余剰戦力となる可能性も高いため、今回の選出がベストでないとは断言しがたくもあります。30人というメンバーの数を考えればやはり塩見か近本、あるいは守備力に優れ年齢的に今後への良い経験となりそうな岡林勇希を入れる余地もあったでしょうが……。

4.岡本和真の起用法

 外野をひとり入れるなら誰を外すのかという話になってしまいますが、その場合に真っ先に名前が挙がるのは岡本でしょう。一塁には山川、三塁には村上がいるうえ、牧も一塁手として起用される可能性があります。これらの選手とポジションが被り、二遊間を守ったり代走を務めたりできるわけでない岡本は余剰戦力となってしまう恐れがあります。

 源田や甲斐の打順で送る右の代打や、左翼手としての経験もあることが選出の要因であることは推察できます。しかし岡本の左翼守備を計算するくらいなら本職の外野手を選出すべきで、期待通りに岡本が機能せずチームが柔軟性を失ってしまうことが最悪のシナリオとなります。

 それでも岡本を選んだ理由として、三塁を守れることが大きかったのかもしれません。山川と牧を三塁手として計算することは難しく、何らかの事情で村上を三塁から外すことになった場合には岡本が代役の筆頭候補となります。打線の中核を担う村上の守備負担を減らすため一塁に回し、三塁を岡本に任せるプランもあるでしょう。

 何より、WBCで小林誠司が打率.450打つのが国際大会なら、プレミア12で中村剛也が打率.150に終わるのも国際大会。村上、山川、大谷といった強打者たちでも期待通りに結果を残せるとは限りません。彼らが不調に陥った際には、ジャイアンツで継続して結果を残している岡本の存在が世界一に向けた最後の望みとなるのです。

5.捕手の打力

 やはり森の辞退は侍ジャパンにとって大きな痛手です。正捕手起用が見込まれる甲斐の打撃は計算できませんし、中村もマイナスにならない程度には打つかもしれませんが、勝負どころでは代打が必要になってしまうでしょう。打撃型捕手として期待される大城はここまで強化試合にも招集されておらず未知数と言わざるをえません。

 それを見越して代打要員と思しき選手を複数選出していますが、無尽蔵に代打を送れるわけではありませんし、代打を送った後に出場する捕手には試合途中からの難しい役割を託すことになります。いくら下位打線でも捕手がある程度打たないことには苦戦を強いられるでしょう。

 14年ぶりの世界一に向け、3人の捕手のうち誰かに小林誠司が乗り移ることを願いたいところです。え?2022年シーズンの打率.148、OPS.362が乗り移った?


 侍ジャパンはプレミア12、オリンピックと着実に国際大会の忘れ物を取り戻してきました。残るはイチローのタイムリーとダルビッシュの咆哮、そして亀井のズボンの裾上げ以来のWBC制覇だけ。あの時のイチローのようにほぼイキかける、なんなら完全にイク大谷と栗山監督を見られることを楽しみにしています。


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