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もったいない人、その1

たとえば、私の知人。彼は正しい人。そして優しい人。

私があーでもないこーでもないと世の中について熱く語っているとき、上手くいかないことを愚痴っているとき、彼はまさに正論で答えてくれます。あるいは優しさ故の厳しい言葉をくれます。そして、私は思うんです。

「おっしゃるとおり、だけど…なんかヤダ!」

納得いかない、認めたくない、聞く耳もちあわせてない。彼の言葉に身体が拒否反応を示すのはなぜ?

それは、きっとタイミング。

彼が正しいことを言うとき、私はすでに興奮マックスで、もうなにが正しいのかなんて分からない状態に陥っています。頭から湯気がふいているんじゃないかと思うほどの沸騰状態です。そこに氷(正論)を一粒投げ込まれたって、すぐに溶けて消えてしまう。沸騰をとめない限り、いくつ氷を入れたって、溶け続ける。だから、響かないんです。

「あいつの言っていることはもっともだけど、なんか腹立つ」

彼の周りの人からよく聞く言葉。冷静になって考えると、彼はちっとも悪くない。だって、正しいこと言ってるんだから。ただ、それを聞いてもらえないって、とてももったいないことだと思うんです。

「なにか言いたいなら、まずは私を火から下ろしてくださいな」

勝手に興奮している分際で申し訳ないけれど、まずは私を落ち着かせてください。沸騰が収まるように少しずつ火を弱めてください。火が完全に消えるのを辛抱強くまってください。そして、熱いけど触ることができるくらいに私が落ち着いたら、どうぞ氷をひとつ、そっと入れてみてください。

そのとき、あなたの氷(正論)は、私を心地よく冷ましてくれます。小さな氷でも、きっと、私にとって大きな手助けになります。言ってくれてありがとう、と心の底から感謝できます。

人になにかを伝えるって、難しい。

自分の伝えたいように、人に響くように伝えるって、本当に難しい。

おしゃべり好きとして、もの書きの端くれとして、常々そう思っています。だから、彼みたいに、いいこと言ってるのに伝わらない人をみると、あぁもったいない、と思ってしまうんですよね。

もったいない人、その1は、タイミング。

さて、その2はなんでしょう?

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