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映画『ミラベルと魔法だらけの家』少し考察【ネタバレ有】

家族の崩壊と復活を描いたディズニーのミュージカル映画『ミラベルと魔法だらけの家』。「家族は大事だよ」なんて説教臭いストーリーのように思わせておいて、実際は家族の息のしにくさ新しく定義される「家族」の姿を描いた素敵な作品でした。
「家」の魔法が素敵だったので、ネタバレ有りのレビュー(考察)をしたくなりました。少しだけお付き合いください。

※ネタバレ有りのレビューです


【考察①】アルマの魔法


画像出典:映画『ミラベルと魔法だらけの家』公式Facebook

本作の本当の主人公はアルマでしょう。本作はアルマの魔法から始まります。最初に物語のように語るアルマの過去には、アルマ自身の感情が語られていませんでした。しかし、2度目にミラベルに過去を話す時、アルマの悲しみまで語られました。
夫……家族を失い、悲しみ、怒り、願う。その時「魔法」が現れるのです。

マドリガル家はみんな魔法の力を持っていますが、魔法を見せない者が2人います。それがミラベルアルマです。2人とも魔法の力を持っていないように見えますが、実は2人とも「魔法」を持っているのではないでしょうか。
2人は同じ魔法の力を持っているのだと、私は思っています。

アルマが力強く願ったのは、「愛する人を守る力」でした。その結果、アルマは「家族が自分のように、愛する人を失って悲しまないようにする」力を手に入れたのです。アルマの愛する人・家族を守る「家」。愛する人が、愛する人・家族を守れるように「魔法の力」を授ける「家」。この「家」こそがアルマの魔法の力です。

しかし、「家族を守る」という気持ちが強くなりすぎた結果、家族1人1人の個が見えなくなってしまいました。そもそも家族とは何なのか? 私たちは何者なのか? 私は・彼女はどんな人物なのか? 見えなくなったのです。
「家」はアルマ自身でもあります。「家」が崩壊するその寸前まで、魔法のロウソクではなくミラベルを守ったのも。アルマの「家族の守りたい気持ち」を表しているのです。
しかし、「家族」を見失い、家と魔法は崩壊します。

【考察②】ミラベルの魔法


画像出典:映画『ミラベルと魔法だらけの家』公式Facebook

崩壊によってアルマは、「家族」は「愛する人を命がけで守ろうとする気持ち」が集まってできるものだと思い出します。アルマの夫が、家族に見せた行動、それが家族を家族たらしめるのだと。それを思い出させたのはミラベルでした。

家族の中で唯一魔法らしい魔法を持っていなかったミラベル。持っていないからこそ、彼女は常に「自分」を持っていました。自分に何が出来るのか、何が出来ないのか。今何が起きていて、何をすべきなのか、誰に頼れば良いのか。ミラベルは自分には魔法も何もないと思っていますが、そんなことありません。

今回、家族のために何かしなきゃと走っているうちに彼女は、彼女自身のことも家族の本当の姿も知ることになります。そして家族も、ミラベルを通して自分自身のことを知っていくことになるのです。みんながみんな、お互いのことを想っていて、でも想っているからこそ「家族」が崩壊していく……。

ミラベルは、家族それぞれの弱さと本当の姿を引き出し、愛します。そしてまた「愛する人を命がけで守ろうとする気持ち」を持つ者同士が一緒に住める「家」を作り上げるのです。
ミラベルの魔法の力は、アルマと同じなのです。

ミラベルが愛し、ミラベルを愛する人が集まった「家」をミラベルが再び作り上げました。あの「家」は復活したのではなく、新しく生まれた、のではないでしょうか。

ドアノブを触って開けた先が、魔法を授かった人に合わせた場所になっていました。ミラベルが触ったドアノブは玄関。この家全体がミラベルの「場所」になっているのも素敵です。

そして、ミラベルの魔法による光は、家だけではなく村全体にも伝わります。アルマにとってもミラベルにとっても、村に住んでいる人々みんなが愛する人で「家族」なのです。
血の繋がりも魔法の有無も関係なく、みんなが住んでいるこの場所が「家」。

ミラベルは誰よりも人を見て、人を愛し、人に愛される。リーダーになる素質があり、家族が集まる「場」になる人物。だから、まだ魔法の力は授けられていなかったのでしょう。

まとめ

家族を守らねばと想うあまり、「家族」とは何なのかを忘れてしまい家族は崩壊してしまいました。それを再び、思い出させ「家」を作り上げる。本作は家族の崩壊と復活を描いた物語。「家族」を愛で集まる人と再定義しているのも魅力的です。新しく家族に迎え入れられた人が「愛で溢れすぎて困った人」なのも印象的。
私たちに彼女たちのような魔法は使えないけれど、実はそれぞれに魔法のような力はあるのかもしれません。

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