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おもいで橋

面影橋から

春の長崎

うすら寒い 3月の

遠いむかしの写真には

まだ19の私が
西陽に照らされた髪を垂らして
片方一重、
片方二重の
あの目を細めて

柔らかに 微笑み

まるで何も知らず

不安な大人の姿で写っている

菜の花と川のせせらぎ

眼鏡橋を背にして

浮かび上がる黄金色の

春の黄昏、1990年

あなたも一緒にいたことが
非常に繊細な痛みを
わたしに教えてくれました

眼鏡橋からつたわるふたりの
面影は
シャッター音と共に
時のかなたへ消え、
かつ残った1枚の写真は
もう 残像でしか無いにも関わらず

わたしの記憶から消えていない

面影橋から だれにともなく挨拶したら

当時のあなたももう居ない事だし

記憶の中からも 思い出も あるかなしかの執着も

すべてを すっかり消してしまおうと思っています。

春浅き夢 長崎を想う 今 2023年

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