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味噌にJAS認証が制定されてもうすぐ1年

2022年3月31日に「みそ」に対し、農林水産省の日本農林規格(JAS規格)が制定されました。何がどうなったのか。

そもそもJAS規格とは?

JASとは「日本農林規格:Japanese Agricultural Standards」。
・食品や農林水産分野で農林水産大臣が定める国の規格
・市場に出回る食品や農林水産品の品質や仕様を一定の範囲・水準に揃えるための基準

JASについて/農林水産省)

つまり、国が定めた食品の規格ということ。
「この材料でこういう風に作ったら醤油って名乗れますよ」というような基準です。

JAS規格において、醤油は濃口醬油、淡口醤油、白醤油、再仕込み醤油、たまり醤油の5つが定められていて、それぞれの原材料や作り方、品質、アミノ酸量などが細かく定められています。

味噌はJAS規格が無かった

しかし、これまで「味噌」に関してはJAS規格がありませんでした。なぜなら、各家庭で作っていたので、バリエーションがありすぎた。

材料×材料の配合×作り方×熟成期間…

それぞれの掛け合わせによって無数の「味噌」が日本にはあります。きっと、いつの時代かに「味噌もJASをつくろう!」と取り組んだけれど、「むーりーっ!」ってなったんだろうな。

ついに味噌にもJAS規格が!

「収まりきらんから、ま、いっか。」となって月日が過ぎ・・・ついに味噌にもJAS規格が制定される日が!。(2022年3月31日制定/4月30日施行)
制定された規格内容の中で私が気になったところをピックアップすると、

  1. みそは大豆+麹+塩を発酵させたもの。

  2. みそには脱脂加工大豆は使わない。

  3. だし入りみそも「みそ加工品」ではなく「みそ」と呼べる。

  4. みそにはアスペルギルス・オリゼーを使う。

  5. みそに使う麹はばら麹か豆麹。

というところ。

原文を一部抜粋↓

3 用語及び定義
3.10 みそ

次に掲げるものであって、半固体状のもの
a) 大豆若しくは大豆及び米、麦等の穀類を蒸煮したものに、米、麦などの穀類を蒸煮してこうじ菌を培養したものを加えたもの又は大豆を蒸煮してこうじ菌を培養したもの若しくはこれに米、麦などの穀類を蒸煮したものを加えたものに食塩を混合し、これを発酵させ、及び熟成させたもの
b) a)に砂糖類、風味原料等を加えたもの。
注釈1 半固体状とは、さらに出したときに流れて崩れない程度のものをいう。
3.11 米みそ
みそのうち、大豆(脱脂加工大豆を除く。)を蒸煮したものに、米こうじを加えたものに食塩を混合したもの
3.12 麦みそ
みそのうち、大豆(脱脂加工大豆を除く。)を蒸煮したものに、麦こうじを加えたものに食塩を混合したもの
3.13 豆みそ
みそのうち、大豆(脱脂加工大豆を除く。)を蒸煮してこうじ菌を培養したものに食塩を混合したもの

4 要求事項
4.1 こうじ菌
みその生産に用いられるこうじ菌は、Aspergillus oryzoeでなければならない。
4.2 こうじ
みその生産に用いられるこうじは、ばらこうじ又は豆こうじでなければならない。

出典:日本農林規格JAS「みそ」

1.みそは大豆+麹+塩を発酵させたもの。

つまり、みそは大豆を使うことが必須。それによって「味噌」として販売できない危機となった味噌蔵さんがいました。

愛媛県南部にある味噌蔵さんでは、麦麹と塩だけで長年「麦みそ」を作ってきました。
それが、「みそは大豆が必須」となったら「お宅の味噌は『みそ』じゃないね。消費者が混乱するから『麦みそ』と名乗って売っちゃいけないよ」と通告を受けた、と言う話。

法が後から来たくせに何をいっとるうさぎさん。
なんとかここの味噌蔵は「麦みそ」と名乗って販売できるようになったようなのでよかった。

一方で、ひよこ豆味噌や小豆味噌など、大豆以外の豆を使った味噌作りもある。個人で作る分には関係がないけれど、販売するとなると「みそ様発酵調味料」という表記になるかもしれない。

2.みそには脱脂加工大豆は使わない。

そもそも世界的に見て大豆は「油を取る作物」。食品として利用している方が少ないそう。そんだけ、大豆からは油が出るということ。
醤油を作る上ではその油が邪魔者になるから、脱脂加工大豆を利用するメーカーさんがいます。

でも、「脱脂加工大豆は油を搾る段階で薬剤を使っているから避けたい」という考えがあるので、私個人としても「丸大豆」を使った醤油を選びたいところ。

今回、「大豆(脱脂加工大豆を除く。)」という文言があることにより、みそには脱脂加工大豆は使われないということになりますね。(今まではどうだったのか知りませんが…)

3.だし入りみそも「みそ加工品」ではなく「みそ」と呼べる。

果糖ぶどう糖液糖やぶどう糖などの甘味、たん白加水分解物や昆布エキスなどの風味原料が入っているものも「みそ」と呼べるということ。
この辺は、裏面の表示をしっかり見て買えばいい話ですね。

4.みそにはアスペルギルス・オリゼーを使う。

5.みそに使う麹はばら麹か豆麹。

ここが「今回のポイントだ」と議事録では述べられていました。この2点は、みそのJAS規格が制定された背景につながっています。

この規格では、日本の伝統的なみその製造工程、その根幹であるこうじを作る方法が骨子となっています。国菌である、国の菌であるこうじ菌の一種であるアスペルギルス・オリゼーを用いてばらこうじや豆こうじを作ることを必須条件とすることで、日本の多様なみそを守る規格となっております。

出典:日本農林規格調査会議事録

どういうことかと言うと、

【前提】
アスペルギルス属の菌を食品に使っている国はないと言ってもいいほど、日本独自の食文化である。
◎ 中国をはじめとする大陸の麹文化は、アスペルギルス属ではなくクモノスカビ(Rhizopus)やケカビ(Mucor)を利用している。
◎ 大陸の麹は「餅麹」で大きなブロック状の塊。
◎ 日本の麹は「ばらこうじ」で米粒や大豆の形をしている。(大豆をつぶして塊にしてから麹菌をつけた「みそ玉麹」もある。)
 ↓
【だから!ここがポイント】
アスペルギルス・オリゼーを使っているものが「日本のみそ」である。
◎ 日本の麹文化であるばらこうじや豆こうじを使うのが「日本のみそ」である。

日本独自の誇るべき発酵文化の特長を定めた「みそ」になるのだな、という印象。

背景は国際的ブランド力の強化

「みそ、まとめんの無理じゃね?」となったものの、なぜここにきてJASを制定したかと言うと、「みそ(Miso)というものの国際的ブランド力の強化」だと言える。

 日本のみそを含むアジアの有塩発酵大豆製品は、SOYBEAN PASTEとして区分なくひとくくりで示され、販売されており、海外の消費者は、これらの違いを認識せずに安価な商品を選択して購入するため、日本のみそは苦しい販売競争を強いられている状況にあります。
 こうした状況を踏まえまして、アジアの有塩発酵大豆製品と日本独自のみそを明確に区別し、世界市場における日本のみそのブランド力を確保するため、今回、みその特色JAS規格原案を御提案いたしました。この規格を作ることで、アジア地域で生産・販売される安価なみそ類似品との差別化や、将来的にそれらの類似品が国内に流通した場合にも、日本のみその独自性を訴求することができると考えております。さらに、海外の方に日本のみそを正しく理解していただくことも期待されます。

出典:日本農林規格調査会議事録

議事録の中には、「韓国のテンメンジャンがMisoという表記で販売されいている。」という記載もあるため、

「これが日本のMisoじゃー!!!」

と世界に訴えるために作られたJAS規格ってこと。

感想

今回のみそのJAS規格を見ると、醤油が定められているアミノ酸量などの成分的な規定はなかった。

「みそはやっぱり、ざっくりとした規格しかできないよね」。

が感想。
麦みそは名乗って販売できるようになったけれど、昔からあるものに「枠(規格)」をはめることで湧くから漏れることは必ず起こる。今後また何かしら発生してくるんだろうな。

八丁味噌発祥の味噌蔵2社が「八丁味噌」と名乗れなくなるのは、また別の話。

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