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虎に翼 第16週

人の顔と名前を覚えるのがとにかく苦手です。だから新潟編の高瀬役の俳優・望月歩さんを「あれ、どこかで何かとても印象的な役柄で見たような気がする、なんだったっけ…」と思いながら一週間。
思い出したのは、仕事しながら画面の端でいつも見ているNetflixのおかげ。「アンナチュラル」の第7話まで来たところで「白井くんだー!」とやっと記憶がつながりました。
成長して顔が大人になったというのもあるんですが、今演じている高瀬くんとは全然別人で、わからなかった。役者さんってすごいですね。でも、あの一見気が弱そうで優しげなのに、目の奥に強い火が燃えているような表情は、やっぱり同じ、望月歩さんでした。


外からは見えない・あるいはもう治ったように見える、苦しみと心の傷。
「寄り添う」「あなたのことを思って」というような言葉のもと、悪気なく傷のカサブタを剥がす。そういうこと、されたこともあるし、たぶんしたこともある。高瀬くんを取り巻く人々の姿に、苦い記憶がぎゅーんとプレイバックする週でした。

法律は「罪に対して罰をあたえる」決まりであると同時に「決められた以上の罰はあたえない」決まりでもある。
カサブタを剥がされ続け、耐えきれずに暴力を振るってしまった高瀬くんは、注意処分という罰を受けた。でもその罰を受けたおかげで、平気で彼を傷つけるような人たちの手からは守られる。法律は人々を守る、汚してはいけない大切な泉。


周りに傷つけられ続けている高瀬くんとは正反対の、いつも笑顔(しかし響く舌打ちの音)な、弁護士の杉田兄弟。「持ちつ持たれつ」と何かと寅子の便宜を図ろうとするけれど…「持ちつ持たれつ」という時に最後に得をするのは「最初から持っている人」なんですよね。

周りに「お互い様ですから」と自分が持っているものをあらかじめばら撒いて、しばらく経ったある日「お互い様ですから」と欲しいものを回収に来る。「最初に何も持っていない人」は、ただ搾り取られていくだけ。
寅子の家に届けられるご馳走の見返りに、どんなものを搾り取るつもりだったのか、こわいわー。
彼らの欲まみれのご馳走と違って、大事な兄との思い出とともに優未へと渡される高瀬くんのキャラメルの、なんとおいしそうなこと。「いい子」であることをやめて、母娘で食べる夜中のキャラメルの、なんとすてきなこと。おいしいものはふたりで。


心に傷を隠しているのは、高瀬くんだけではなく。
寅子も、ずっと優三さんのことを思い続けている。
優三さんは本当はどんな人だったのか。優未にそれを語るのは、猪爪家の人たちにはできない、寅子にしかできない。
「胸がつまって話せない」という自分の気持ちも含めて、ゆっくりでも、「あなたのお父さんはね」って、優未に話せたらいいね。
そんな寅子にぼそぼそと不器用に話し続ける星さんも、きっと亡くなった妻のことはずっと傷として抱えている。
彼らのカサブタは、いつか自然になくなるのだろうか。そんなカサブタを、そっとはがさないように見守ることが、私にはできるだろうか。

わかる。

しかし「ゆうべ、泣きましたか?」は。星さん、それは好きになっちゃうわ(私が)。

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