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虎に翼 第9週

5月3日は、憲法記念日。国民の祝日になるくらい、憲法は大事なもの。たぶん学校でも習った、はず。
…でも私、日本国憲法について、何も知らない。すべてを通して読んだこともないと思う。
トラちゃんが読み上げて「ね、すばらしいでしょう?」と教えてくれるまで、そのすばらしさに目を向けていなかった。

「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」

そして優三さんが語りかけてくれるまで、意味がわかってなかった。

「トラちゃんができるのは、トラちゃんの好きに生きることです。また弁護士をしてもいい、違う仕事を始めてもいい。優未の、いいお母さんでいてもいい。僕の大好きな、あの、何かに無我夢中になってる時のトラちゃんの顔をして、何かを頑張ってくれること。…いや、やっぱり、頑張んなくてもいい。トラちゃんが後悔せず、心から人生をやりきってくれること。それが僕の望みです。」

「あなたはあなたの好きなように生きてほしい、心から人生をやりきってほしい」この優三さんの思いが、憲法なんだ。そうだったのか。あああ。全然わかってなかったよ。


主要登場人物が3人も亡くなる一週間。これがこのドラマのいちばんきつい週で、あとはいいことしかないと、信じたい。
直道さん、優三さん…どうか無事にとあんなに祈ったのに。ほんとに毎日泣きっぱなし…。

しかしまさか、お父さんの言い訳と懺悔を笑いながら聞き、笑顔のまま彼の死を知らされるとは思わなかった。人の死に際にあんなに笑ったの初めてかもしれない。直言さん恐るべし。岡部たかしさん恐るべし。

とはいえ、ほんとに死はきつい。こんなに簡単に人が死んでいくんだなあ、戦争って。

きついのはもちろん視聴者だけではなく。
寅子の目からいつものキラキラした光が消え、理不尽なことにも「はて?」が言えなくなっている。かといって泣くわけでもなく、ずっと無表情。それを見かねたはるさんに「ぜいたくじゃありません、必要なことです」と背中を押され、街角の飲み屋でどぶろくと焼き鳥を注文しては見たけれど、おいしいものは一緒に、と約束した人がもういないから食べられない。
その焼き鳥を包んで走ってきてくれたおかみさん、あの場所でたくさんの「今は飲むしかない」人たちを見てきたんだろうな。きっとあの人も元は料理屋など開いていたんだろうな。いろんなものを無くしたから、無くした人たちの気持ちがわかる人。

「必ず帰ってくるって言ったじゃない」と怒り泣きしながら食べる焼き鳥を包んでいた新聞に書かれたのが、新しい「日本国憲法」…ああ、これが、あの、ドラマのオープニングのシーン!

「これ以上、心が折れて粉々になる前に」と、壊れる寸前の寅子をはるさんが送り出し、飲み屋のおかみさんが焼き鳥と一緒に新聞を渡す。大切なものをなくした人同士がよりそいあった結果、日本国憲法が寅子の手に渡り、もういちど立ち上がるための力になる。


「男だからって、あなたが全部背負わなくていい。そういう時代は終わったの」
勉強が大好きなのに進学を諦めて「この家の大黒柱にならなくては」と思っている直明に、憲法の意味を強く語りかける寅子。

「仕事でも母としても妻としても満点を取れ」と言われるか、逆に異様にちやほやされる女。「家を支える大黒柱になれ」とプレッシャーをかけられる男。これらのモヤモヤへのベストアンサーは、花江ちゃんの言った「これからは、家族みんなが柱になって支えていけばいいわよね」だと思う。はるさんが家族のおいしいごはんを作る。花江ちゃんは子どもたちを育てる。寅子は自分の力で稼ぐ。直明は大学で勉強する。それぞれは小さな柱だけど、みんなで集まればしっかりした家になる。


橋の下の老婆が、日本国憲法を読んでいる。竹もとの夫婦も、ふかし芋を売りながら読んでいる。
生まれた国に帰った人、家を守るために望まない結婚をした人、子どもたちと引き離された人、信条を曲げずにいた人。あの友だちもみんなどこかで、無事で、憲法を読んだだろうか。「差別されない」の一文に、どう感じただろうか。

そして、いまだ生死もわからない轟、絶対生きてるよね轟、あなたまでいなくなったら絶望が深すぎて耐えられないのでよろしくお願いします。

鼻に芋の皮。どうしてそんなところに。

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