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それぞれの「あの夜」と「ラジオが好き」のかたち。

オールナイトニッポン55周年記念公演「あの夜を覚えてる」
実際のニッポン放送社屋を使って生配信するというとんでもない演劇。20日の初日と27日の千穐楽を見ました。

ネタバレ感想、スタート。


初日見てあまりにすばらしかったので、これは千穐楽も見ましょう、とチケットとってどちらもリアタイできたんだけど、大正解だった。
初日の「ん?」と思ったところを見事にリカバー、細かいところでセリフ変えたりシーンをつけたしたり、小道具大道具が変化してたり、なるほどこんなふうにブラッシュアップしたのかー、とおもしろかった。もちろん、初日のあの勢いもすばらしかったのですが。
まさか「千夜一夜物語」が初回と千穐楽と別脚本になってるとは思わなくて、この部分だけでも永遠に2回分アーカイブ残してもよくない?と思っちゃいました。千葉雄大さんの声の演技がすばらしいのはよく知ってたけど、その才能が遺憾無く発揮されてましたよね。

そしてあの、ラストの、リアクションメール。
ちょっとあれは…あんなすごいこと、どうしてできるのかと思う。スタッフも、キャストも。見ている私たちも。
「藤尾涼太のオールナイトニッポン」が一晩だけ復活してうれしいぞ、とラジオネームでメール送ったし、がんばれの気持ちでチャットした。あの時間、私たちはたしかに「尾っぽ」のひとりとして、あのラジオブースと繋がっていた。
それをその場でパーソナリティーとして受け止めては返していく千葉雄大さんのすごさ、絶対忘れられないと思う。何度も見返しているんだけど、そのたびに一緒に泣いてしまう。
この人を「藤尾涼太」に決めてくれて、ありがとう。
そしてほんとに、「千葉雄大のオールナイトニッポン」のレギュラー放送を、ぜひ、いつか。


ひとことで「ラジオが好き」と言ってもそこにはたくさんの種類、たぶんそう思っている人の数だけの「好き」がある。
特定のパーソナリティーが好きで、その番組だけはかかさず聞く、という「好き」。
仕事中や勉強中にずっと聞いてるよ、という「好き」。
ハガキ職人として、毎週複数の番組にネタを送っているという「好き」。
これらは聴取者・リスナーとしての「ラジオが好き」。

そしてこの演劇「あの夜」で、ラジオ番組を作っている立場の人たちのたくさんの「ラジオが好き」を、私たちは目撃することになった。

植村さんは、リスナー的な「好き」が大半だったAD時代を経て、作り手としての「好き」を、ディレクターとして手に入れる。
元ハガキ職人のイエスマンは、「読んでくれたらいいな」から「楽しませる」プロの「好き」になる。
ディレクターの堂島さんも放送作家の加野さんも、プロデューサーの野々宮も、それぞれの「好き」をつきつめる。ミキサーの一ノ瀬さんの、クールな「好き」のプロフェッショナルさも大好き。ADの相原さんも、自分なりの「好き」へと変化していく。マネージャーの小園さんはたぶん、ラジオでもまじめな藤尾さんの姿勢が「好き」。
そして藤尾さんは、ラジオが好きすぎて、自分の言葉をそのまま出すことをためらう。

すべてフィクションの、お話の中でのことなんだけど、たぶん本当にラジオ番組を作っている人たちも、こんなふうにそれぞれの「ラジオが好き」と向き合っているんだろうな。

あ、本物のラジオ番組、オールナイトニッポンのパーソナリティーの人たちが、この演劇を見て「あれは俺の番組のことじゃん!」と、散りばめられた小ネタのことをうれしそうに話題にしてるのも、よかった。彼らもラジオが、当たり前だけど、好き。

ああ、よかった。私たちがラジオを好きなように、作っている人たちがラジオを好きでいることを、こうして確かな形にしてもらえて、よかった。


第一幕の冒頭、MDプレイヤーで何かを聞いている誰かの手が一瞬映り、誰だか明かされないまま若き日の植村さんがラジオ聞いて自分のハガキが読まれるシーンになる。
第二幕の藤尾さんによる「フリートーク」で、親友がラジオ番組をMDに録りためたものをくれた話となり、最初に映ったのはそれを聞きながら上京する藤尾さんだったとわかる。
その時のラジオ番組が、寺ちゃん(放送作家の寺坂さん)がパーソナリティーなんですよね。二人が聞いているのが同じ番組だったとしたら、彼らをラジオの世界に向かわせた大きなきっかけは、寺ちゃんだったということに。寺ちゃんすごいぜ。


オールナイトニッポン55周年記念公演「あの夜を覚えてる」
27日千穐楽のアーカイブ期間があと数時間で終わる…というタイミングで、なんと最終日の今夜8時から自主的に同時視聴イベントが始まっていて、私も9時くらいから参加しました。キャストの人たちも何人かいらして裏話を聞かせてくれて、楽しかった。
アーカイブだから、それぞれが好きなタイミングで見られるんですけど、これ、「みんなで一緒に、同時に」が楽しいんですよ。そういうところも、「ラジオ」だと思う。同じ時間を遠い場所の人たちと共有する。
もう、みんな、ほんとにラジオが好きだなあ。私もですけどね。
むねいっぱいくうきすいこんで、ばかまじめに、これからも、ラジオ好きでいきましょう。


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