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虎に翼 第14週

「そのくらい、いいじゃないの。向こうも謝ってるんだし、いいかげんに許してあげたら」
そう第三者から言われた時のあの無力感。笑顔で謝罪を受け入れてこの場を丸く収めてしまえば、周りの全員が喜ぶってことはわかってるんです。でも「そのくらい」と言われた私の怒りは、どこにも行く場がない。


穂高先生の退任記念祝賀会で、花束を渡すことができなかったのは、大人として間違っている。間違っているとわかっていてもそうしてしまう、それが寅子。怒ればつい「にゃにゃにゃー!」と叫びながら手が出るし、相手を(わざとではないけど)大怪我させたことだってある。怒りを我慢できない人。
でもその、場の空気に飲まれず、自分の怒りをひっこめない寅子の強さがあの「私たち怒っているんです」の演説を、祝賀会という場でできた理由。
だとしたら、やっぱり私はその怒りを支持したいな。

昔、穂高先生に届かなかった「私は、今、私の話をしているんです!」って寅子の怒り。あの時女子たちは雨垂れだと言っておいて、退官する今になって「自分も雨垂れのひとしずく」だなどと、弱い者側にいる気分になっている。法律の世界から消えるしかなかった女子たちからみたら、絶対的に強いところにいる人なのに。どうして最後まで強くあってくれなかったのか。それは怒っていいよ寅子、一緒に怒ろう、「ガキ!」と桂場に罵られても。

…桂場は桂馬で、大好きな穂高先生と、(認めないだろうけど)大好きな寅子を、どうしても仲直りさせたかったんだろうなあ。
穂高先生が亡くなった悲しみを、山盛りのあんこと皿まで食べて紛らわしたい桂場の、隠しきれない愛情が、いつかちゃんと寅子にも届きますように。
「桂場くんが団子を食べてるのを見るのが好き」
わかるわライアン…私も好き。

きゅるりん

穂高先生だけでなく、星長官も去っていった。
竹もとで朗読する星長官の美しい声。老人から子どもまで聞き入っているシーン、思い出すと泣いちゃう。短い出演期間で、とても大きな印象を残した星長官。素晴らしかったです平田満さん。
私もなんとか香り高い出涸らしになりたい。
そして 穂高先生の「気を抜くな。君もいつかは古くなる」この言葉は忘れずにいたい。


バリバリ働いてラジオにも出て、有名人になっていく寅子。その背中をさみしげに見る優未のことが気になる。お母さんなんだから娘のことをもっと見てあげなきゃ!と言いたくもなるけれど、あの家の6人分の食費生活費を稼ぐために朝から晩まで働いている寅子に、そこまで求めるのはあんまりだ。それでは「母として妻としても、仕事でも満点を求められる」と苦しんでいた働く女性たちへの仕打ちを私もしてることになる。でも優未はかわいそうだし、家のことを全部やってる花江ちゃんのことも気がかりだし…誰も悪くないのにどうしてこんなにしんどいのー。

このしんどさを少しやわらげるために、また出てきて「なるほど」って微笑んでください星航一さん!

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