虎に翼 第17週
「苦労は、星の数ほどございましたよ」
ああ、久しぶりに聞けてうれしい、涼子さまワード。
玉の言葉に珍しく声を荒げた「おぞましいことをおっしゃらないで!」も含め、彼女の世界にはこんなに豊かな表現があるのかと惚れ惚れします。生きていてくれてよかった、涼子さま、玉ちゃん。
「寅子の家に届けられるご馳走の見返りに、どんなものを搾り取るつもりだったのか」
前回のnoteに、私はそう書きました。寅子の家に「お互い様ですから」とあれこれと届け物をする弁護士の杉田兄弟、特に兄の太郎について、不快感しか持っていなかった。たくさんの物を持っているのにもっと欲しがる嫌なやつ、だと思っていた。
だから、優未を見て泣きじゃくる彼の、その思いがけない姿に言葉を失った。彼もたくさんの大切なものを失ってきたんだな。あのご馳走の数々には、見返り欲しさの黒い欲だけではなく、娘と孫娘を思い出させる母娘を心配する気持ちも含まれていたのだろうか…ほんのちょっとだけかもしれないけれど。
本当にその人が思ってることなんて、表面からはわからない。
おたがいを思いあっている涼子さまと玉ちゃん。とても大事に思っているのに、何年も何十年もそばにいるのに、本当に望んでいるものを、お互いに言葉にできない。
「私がこうすればあの人はきっと」「私さえいなければ」
そんな思い込みから自由になって、「お嬢様」「玉」の間柄からも解き放たれ、ふたりの「you」となっていく。よかった、ほんとによかった。そして、稲さんがライトハウスで働くことになったのもよかった。
言葉にしないと、本当の気持ちはわからない、伝わらない。
「秘密です」と微笑んだ航一さんの秘密とはなんなのか。美佐江の赤い腕飾りの謎は解けるのか。
来週はまた波乱の週になりそうでドキドキ。
それにしても、妖しい笑みで近づきたい相手に腕飾りを配る(そして思い通りにならないと引きちぎる)美佐江、こわい。彼女とは正反対の、近づいてくるクラスメイトから距離をとる優未に、シンパシー。友だちって、もちろんすばらしい存在だけれど、無理に「作る」ものではないし、それぞれのペースで大丈夫。だよね、優未。お母さんがしんどそうだなと思ったら変顔してみせる優しい彼女、その優しさをちゃんと受け止める誰かがきっといつか現れる。