虎に翼 第8週
はるさんが食事の記録の横に「家族に滋養のあるものを」と書き添えている。そこに花江ちゃんが「第日本国防婦人会」のたすきを掛けて帰宅するところから始まったこの週は、1942年。
朝ドラ民にはおなじみの「婦人会」。「贅沢は敵だ」「金属を差し出せ」など、主人公に嫌なことを言ってくる集団として描かれることがほとんどだったけれど、虎に翼では、ごく普通の主婦である花江ちゃんがごく普通に加わっている。その方が、こわい。
結婚した寅子は、弁護の依頼が増えて順調。…と思いきや、依頼人の嘘を見抜けずに落ち込み、妊娠して具合が悪くなり、久保田先輩や中山先輩が弁護士を辞めていくことにショックをうけ、「私だけしか残っていないんだ」と無理して働いて倒れて、最終的には事務所を辞職。なんてこった。
男装のよねさんは試験に落ち続ける。久保田先輩は言葉遣いを変えさせられる。世間の考える「女性像」に合っていないと、弁護士として仕事さえさせてもらえない。そして結婚していないと、信用されず仕事は来ない。でも結婚したら、どう考えても絶対満点なんて取れないのに、妻として母として社会人として満点をもとめられる。なんてこった。
自分の好きな服を着たい。自分らしい話し方をしたい。結婚してなくても、結婚して子どもができても、仕事をしたい。それだけなのに。
弁護士として仕事させてもらうには、すべてで満点をとるしかない。それができないのなら、「無理して子どもになにかあったらどうするんだ」「結婚したからには、よき妻よき母であるべき」という「優しい言葉」に「ありがとうございます」と感謝して仕事を辞めるしかない。なんてこった。なんで誰かの許可が必要なの。
穂高先生は「先生」なんだと思う。先生は、生徒全体を見る。1人だけを見ているわけにはいかない。それはわかる、わかるけど。
あの日、寅子を法律の道に誘ったのは、「寅子」を見ていたからではなく「法曹界」を見ていたからだった。硬くなった法曹界の石を穿つための雨だれを、できるだけ多く集めたかっただけで、雨粒ひとりひとりのことを考えている余裕なんてない。穂高先生には、「私は、今、私の話をしているんです!」という寅子の言葉は届かない。君のためを思って、という優しさの暴力で、勝手に事務所に妊娠のことを話し、事務所の人たちも心からの優しさで寅子を追い詰める。そしてもう寅子には居場所がない、仕事をするすべがない。
なんてこった。
直道も優三も轟も、戦争に行ってしまった。
どうか無事に帰ってきて、と思うのと同時に、あんなに優しい彼らに、人を傷つけることを強いる戦争が、花江ちゃんに婦人会のたすきを掛けさせる戦争が、嫌でたまらない。
そして、金曜日の「あさイチ」のプレミアムトークゲストが岡部たかしさんなのが、本当に嫌すぎる。
いや、お話を聞けるのはもちろんすごくうれしいんだけど、朝ドラクラスタとしては「やめてお父さん、今は来ないで」って気持ち。
複雑朝ドラごころ。
優三さんの優しさにやっと気づいてくれてよかったよ、トラちゃん。
それにしてもあの変顔の別れ…(思い出し泣き)
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