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恋愛ドラマにおける、ヒロインの湿度変化。

あー、さみしい。「いいね!光源氏くん」が終わっちゃってさみしい。
烏帽子でジャージの千葉雄大さんが現代の東京を歩いてるという映像だけで大勝利なんですが、前回のnoteにも書いた「役割と本来の自分」「女性と結婚としあわせと」など、いろいろ考えたくなることがストーリーに含まれているところも、すごくよかった。
そしてとにかく伊藤沙莉さんが演じた沙織殿が、よかった。
あの、光くんと中ちゃんに対する、乾ききって素早いツッコミ。両思いになっても、べたつかずにちょっとだけ涙ぐみつつ、からりと笑顔のヒロイン。

「恋つづ」でも思ったんですが、最近の恋愛ドラマのヒロインは、湿度が低い。べたべたじめじめしない。

再放送することが発表された「愛していると言ってくれ」は、25年前のドラマ(!!!)ですが、今思えばヒロインの紘子は、かなーり湿度高めです。
未見の人にネタバレになってたら申し訳ないけど、紘子ってひとりであーだこーだ悩んで泣いて、そのあげくにあんなことやこんなことして、結果ああなってこうなって、それ全部君が悪いんじゃないかーい!ひとりで勝手にジメジメネバネバしてー!みたいな人なんですよ。でも、あの頃はドラマも彼女も大人気だった。

恋つづの七瀬は、泣きながらも相手に向き合って気持ちを全部伝えようとする。悩んでも自分一人で決めて立ち去る。湿度が低くあろうとする彼女は、ベタベタせずに、さっと泣いた後は涙を自分で乾かしてる。まあそんな人だから、天堂先生が「俺の知らないところで泣くな」「勝手にいなくなるな」と追いかけてくれるわけですが。
紘子が七瀬ポジションにいたら「ひとりはつらい…(メソメソ)だれかなぐさめて…(ちらっちらっ)」って感じで、涙を乾かす気ゼロだと思うんですよ。湿度100%。

沙織殿も、泣くのは「絶対に光くんには落ちないんだからぁ」と、ひとりで耐えようとするシーン。「いなくならないでね」とつぶやくのは、寝言。
すがりつかないし、光くんが消えた後もきっぱりと婚活に励む。湿度ゼロ。
しかし紘子が沙織殿ポジションなら、消えた後「光くぅぅぅぅぅんっ!」と号泣するシーンが、泣かせる音楽と思い出のアレコレ映像ともに絶対入る。

いや違うんですよ、紘子の悪口を書きたいんじゃないんです。
この25年で、「好きな男がいないと生きていけない私。恋で生活もぼろぼろになってしまう。でもこれが真実の恋!」みたいなものが「恋愛ドラマ」だわ!と思っていた人々の感覚が、かなり変わったんじゃないかなあって思って。

恋つづの七瀬ちゃんは、看護師としてちゃんと仕事ができるようになりたいという思いがまずある。
光源氏くんの沙織殿は、仕事ができて生活を楽しむ女性として描かれている。
「人生、恋だけじゃないから。他にもだいじなもの、いろいろあるから」
ってことになってるのが、令和の恋愛ドラマヒロインだなーって。

涙を流しながらも、その涙におぼれず、なんとか自分で乾かして、きっぱりさっぱりと湿度を低くして生きて行く。「今」は、そういう女性の方が、好きです。
…とはいえ、「愛していると言ってくれ」を見ながら実況するのもたのしみなんですけどね。携帯電話もなかった時代の恋愛の湿り気にどっぷりつかって、びしょびしょになりたい気持ち。たまには。
そしてとにかく、あの、トヨエツの指を振りながら(なに?)と聞く、あの姿をまた見られるの、しあわせすぎ。

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