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引っ越しは「敗退」「撤収」だと思っていたら違った、という話。

いつもテレビや映画など、エンタメの話をしていますが、今回は番外編。引っ越しましたよ、大変だったんですよ、という、長い長いひとりごと。4000字あります。

頑固な臆病者の引っ越し

一度決めたらずっと同じことをし続けて、新しいことを気軽に始められない性格です。「頑固」と言われることが多いですが、どちらかというと「臆病」なのだと自分では思っています。今までとやり方を変えて悪いことが起きたらどうしようと怖くて、ひとつのことをやり続けるタイプ。
家についても同じで、理由がなければ引っ越さずにずっと住み続けてきました。若い頃は東京の東中野という街の中で、ぐるぐると3回も引っ越しました。一人暮らしでワンルーム→妹と住むので広い家→一人暮らしに戻り狭い家、の三軒すべて歩いて回れる範囲。いい街でした。結婚してからは、夫の転勤のために東北地方と横浜を転々としたので、引っ越し回数は多い方ではありますが、できたらずっと動きたくない。

ということで、横浜のとある街の古いアパートに10年も!住み続けていたのに、このたびとうとう引っ越しました。でも、前述のとおり、変化が怖い性格で、家も街も好きだったので、まだそのまま住むつもりだったんですよねー。でもそういうわけにはいかない事情があれやこれやと持ち上がり、「引っ越そう!」「ここに決めた!」「引っ越し!」を、1ヶ月でやり切りました。無茶。

で、ここからは人に話しづらかった愚痴になっちゃうので、そういうの大丈夫よ、という人だけ読み続けていただければ。ずっとこのまま動かないぞ、と思っていたのに戦いに敗れ、本拠地を撤収することになった顛末記。…だと思っていたら違ったかも、な話。

突然のおとなりさん問題

2022年の始め、何ヶ月か空いていた隣室に新しい入居者たちがやってきたことからすべてが始まりました。

引っ越し初日から、うちの駐車場に無断で駐車。にぎやかに引っ越し作業の物音はして、でも挨拶どころか「駐車場を貸してください」のひとこともないので、「あの、もうすぐ車が帰ってきますので、どかしてください」とこちらから声をかける羽目に。その日以来、毎日のように停められるので困って管理会社に連絡。ところがその数日後にまた無断駐車、それどころかホースを引っ張ってきてその場でジャバジャバと洗車スタート。あんまりだ!とまた管理会社に電話。

そして、ある夜帰宅したら大勢でバーベキューパーティーされてたんですよ、うちの駐車場で。テーブルと椅子出して、お肉焼いてモクモクと。

他にも、うちの自転車に、雑巾や洗った靴を引っ掛けて干してある。カゴにゴミが捨てられている。

駐車場や道路に、吸い殻の山ができている(これは近隣住人が管理会社に苦情を入れる事態になりました)。

朝5時や真夜中に、家が揺れるほどの騒音が響く。

どうしてこんなことを?悪意たっぷりの恐ろしい人たちが引っ越してきたの?
そう思いますよね、怖いですよね。ところが違うんです。いちばん困ったのは、相手にまるで悪気がないことなんです。「他の人が使ってない間、借りているだけ」「騒がしいかもしれないけど、友達が来て楽しいから仕方ないよね」という、感覚の違い、境界線のゆるさみたいな…。

もしもこれが「悪い人たちにひどいことをされている」なら、もっとやりようがあったと思うんですが、「自分とは根本的に習慣や考え方が違う人たちと、うまくいかない」場合、どうしたらいいのかわからなくなってしまった。あまりに無邪気に行動しているので、え、私の方が心が狭いのかしら?と思ったり、苦情を管理会社に言っても「そういうマナーについては人それぞれですから」とか迷惑そうな返答が返ってきたり。ひどい会社だ。

普通ならもうここで「だめだこれは、誰にも話が通じない」と引っ越すのかもしれないけど、なんだかそれは「負け」のような、こちらが悪いんじゃないのになんで?みたいな気持ち。でも、すぐ隣の家に住んでる人たちにマイナスの気持ちを持ち続けている自分のことも嫌で。もうこのあたりで、結構精神的にドロドロでしたね、今思うと。人を嫌うのって、どこかにエネルギーを吸い取られてる気がする。

管理会社に何度も連絡して(またか、という扱いをされながら)数ヶ月かけてやっと無断駐車はなくなり、少しだけ静かにもなった夏の終わり。最大の問題が。

虫、大発生。

ここからは虫の話です。ちょっとアレなので、この辺で閉じてもいいですよ?

虫問題でとうとう敗退

10年住んでいて、これまでほとんど虫が出ない部屋でした。最初の隣人が家のまわりにゴミ袋を置く人たちで、その頃は黒Gが年に数回出没。その家が引っ越して、次の隣人はうってかわって毎日玄関前を掃除するようなきれい好き。それからは年に一度遭遇するかどうか…という感じになりました。そしてその家は春頃に引っ越して、しばらく隣は無人、そこに新しい隣人が来たのが2022年1月。

2022年の夏の終わり、突然チャバネGと台所で遭遇。それも複数。
ご存知かもしれないですが、茶Gは飲食店などに多いヤツらで、一般の家にはあまりいないんですよ。もちろんこの家で見たのも初めて。ぎゃー!と成敗しながら脳裏に浮かぶ、隣人宅の様子。暑い日はいつもドア全開(で、上半身裸で生活しているのがどうしても目に入り、これも悩みの種だった)で、前を通るたびに部屋の中のゴミ袋が見える。そして家の周りに積まれたゴミ袋。
大急ぎで茶Gに効くという毒餌を通販で購入、出そうな場所に設置、家中の掃除スタート。毎日2回掃除機、食器などを放置しない、などいろいろがんばったのに、茶Gと遭遇し続ける毎日が始まりました…。

毒餌、観察すると食べたあとがあるし、部屋の隅に死骸も見つかるので効いているはず。それでも毎日元気に走るGとばったり出会う。寒くなれば減るだろうと思っていたけど、12月になっても変わらず。何度も種類を変えて注文した毒餌は数十個になりました。そこまでしても、帰宅してあかりをつけたら床を数匹が走っているのを見た時の嫌な気持ちと、成敗した後のこれまた嫌な気持ち。これが本当に毎日毎日続いて、ある日、あー、もうだめだー、とぷつっと燃料切れになりました。これだけ対策してもこんなに出る、これは私がこれ以上頑張っても、たぶんプロに依頼しても無理だ、だって隣という無限の供給元(たぶん)があるんだもの。

そして、長年住んで馴染みきっていた部屋を出て、新しい家を探す決断をしたのでした。敗退して撤収だな…と苦い思いを持ちつつ。

撤収、支払い、前進

この家の家賃は、半分が仕事部屋なのもあり私が払ってきました。引っ越しって、お金がかかりますよね。そんなに大金出せない…と思っていたのも、引っ越そうとしなかった理由。転勤とかなら会社からお金が出るじゃないですか。でも「引っ越したいから」は、全部自分持ち。
引っ越しについてぼんやり考えてた夏頃、ここもいいかなと思っていた部屋が内見を申し込む前にタッチの差で借りられてしまったのは、その「今は余分なお金がないし」というためらいのせいもあったかも。あと、そこまで本気で引っ越しを考えてなかったのかも。

ところが。真剣に引っ越ししようと決めたら、ここまでに納品してたいくつかのお仕事のお金が同時に入金されたんですよ。合わせるとちょうど引っ越し費用と同じくらい。

そして賃貸サイトを見て、良さそうな物件の内見を不動産屋さんにお願いしたら「その条件なら、この辺もいかがですか?」と提案された別の家で、窓からの景色を見て「あ、ここだ」とピンときた。この街の風景を見ながら暮らそう、と。
「私はここから動かない!」という頑なさと臆病さがゆるんで、他の人のおすすめを素直に聞けるようになり、新しいことを始めるタイミングが、今、やっときたのかもしれない。変化を受け入れて違う方向へ進むのは、敗退でも撤収でもなく、ただの前進なのでは。そのためにお金を使うのは(使わないのにこしたことはないけど)正しいのでは。

ということで、どーんと(ほんとに、どーんと)お金を使って、前へ進んだのでした。

敗退ではなく勝利

一ヶ月で引っ越しの手配と仕事を全部いっぺんに進めて、もうむちゃくちゃ大変でしたが、なんとかやり切って、今、新しい部屋で書いています。スケジュールの変更を受け入れてくださった取引先のみなさんには感謝しかないです、ありがとうございました。

そして引っ越してみたら、たくさんの変化がありました。

…静か。家が静か。「防音があまり行き届いてないです」と事前に聞いていたんですが、周りの生活音はそれなりに聞こえるけれど、全然気にならない。今までの、イヤフォンしないと耐えられないほどの隣人たちの騒音、あれはやっぱりおかしかったんだと今更ながらよくわかった。
アップルウォッチで睡眠の状態を見ると、前の家では毎日四時半に、たぶん車の音で目が覚めている。新しい家に来てからは朝までぐっすり。
そのほか、引っ越し先の収納が少ないので思い切っていろいろ捨ててすっきりしたとか、前の家にはなかった洗面台があるので、毎日自分の顔をケアするようになったとか、景色がいいので仕事の途中で窓の外を見るのがいい気分転換になってるとか、静かだから仕事への集中力が増した気がするとか、挨拶した隣人たちがみんないい笑顔だったとか…あれ、これ、いいことしかないのでは。敗退じゃなくて、勝利したのでは。こんなことなら一年も悶々と悩まず引っ越しておけばよかった…でも、やっぱりこういうのはタイミングですね。

頑固と臆病という荷物を思い切って手放して、不安ながらも新しい場所へと前に進み、「なんだ、なんとかなるじゃないか」と自信がつきました。敗退でも撤収でもなかったなあ、引っ越し。新しい街と新しい家って、いい。「新しい」は、こわくなかった。この経験を大事に、もっと「新しいこと」をやってみたいかも、という気持ちになってます。
そんなわけで、新しいお仕事大大募集中です!貯金も使い切っちゃったし!揉み手!



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