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プリトニア国物語 1話 異質な国

「そこでは多くの人がにぎわっています。」
「パパ、どうしてこの国はにぎわっているの?」
ルーカスはせっかちだ。いつもわたしがベッドの上で本を読んであげると、きまってどこかで会話を挟んでくる。
「それは後で出てくるよ。エドガー、話は最後まで聞くもんだ。」
「この国の人々は自分のやりたいことができました。人を救いたいと思う人は医者に、人前に出ることが好きな子は俳優に、だから、こんなにもにぎわっているのです。」
ルーカスは何か言いたそうだったので、わたしはルーカスが自分の手で自分の口を塞いでいるのを優しくとってあげた。
「それって普通のことじゃないの?」
この疑問に私は優しく答えよう。
「決して普通のことではなかったんだよ。ルーカスが生まれる前のプリトニアでは親の仕事が自分の将来の仕事だと決まってたんだ。」
「そーなんだー。今にそれだったらダメだね。じゃあパパは昔から国を守る仕事をしててんじゃないんだ。パパはむかしなんだったの?」
「とにかく、今の王様がプリトニアを変えたんだ。王様もお前みたいなせっかちなお方だった。」
「僕その話が聞きたいな。」ルーカスは笑顔をこちらに向けてきた。
「この話は前の王様の時代からはじめないとね。」



王は尋ねた。
「わが執事リチャードよ、此度の留学で得たこと話せ。」
リチャードは跪いてから話始める。
「はい、正直に申し上げますと、、隣国ユニオンは我がプリトニアよりも明らかに栄えていました。人々は活発に働き、互いの仕事を助け合っていました。そしてそこにはたくさんの人の笑顔が見られました。それに比べると、我が国の国民は、自分たちの仕事に対する意欲が薄れてきているように感じます。」
王は眉をひそめ、また聞く。
「では、なぜ隣国の国民は意欲的に働く人が多いのに対して、わが国にはそういった人々が少ない原因は何だ。」
王宮内に緊張感が張り詰める。
リチャードは王の目をまっすぐ見ながら話す。
「それは好きなことをする自由です。」
リチャードが放った一言は少し間が抜けていた。
そのせいで王宮内の緊張感は一気に解けて、王の横に立っていた大臣達は鼻で失笑した。
王は人が変ったようになって言う。
「わが友リチャードよ、きっと長旅で疲れているのだろう。帰国直後に呼び出してすまなかった。今日は休むといい。外国へ行くと病んでしまうというのも聞いたことがあるしな。」
リチャードは頭激しく掻いた。悔しい気持ちがあふれてきた。彼は口下手で何と言ったらいいかわからなかった、というべきか何もかもがリチャードにとって新鮮すぎて言葉が出なかった。が、それでもこのプリトニアの異質さについて知ってほしかった。プリトニアには自由がない。それをどうしても伝えたい。次第に、その感情は怒りに変わった。
「病んでいるのは王のほうだ!」
激しく怒るリチャード。
「わたしはこの原因不明の不景気に病んでいる王を知っている。その証拠に、王はこの頃行政なさらない。わたしはそれをどうにかしたい。」
「リチャード、私はお前に政治のことに口出しさせるために留学を許可したわけではないんだ。」
王はそう言ってリチャードを帰した。


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