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地域運営組織とは ~地域の「共」を考える#2~

人口減少や高齢化、ライフスタイルの変化などにより地域コミュニティが弱体化しています。一方で、独居老人の孤立、買い物難民の増加、子どもの貧困、耕作放棄地の増加、獣害など積み重なっていく地域課題・・・

こうしたなかで、公(行政、公助)と私(個人、自助)のあいだにある「共」をどうやって育んでいけるだろう?

この問いに向き合う<地域の「共」を考えるシリーズ>です。
前回は「新しい農山村コミュニティ」についてまとめました。

今回は「新しい農山村コミュニティ」の発展系ともいえる「地域運営組織」を取り上げます。

まとめるにあたり下記のレビュー論文を参考にしました。

荻野亮吾・似内遼一・深谷麻衣・高瀬麻以(2021):地域づくり分野と都市計画分野における コミュニティ ・ エンパワメント手法の比較,佐賀大学大学院学校教育学研究科紀要,6(1),121-156.https://onl.la/3vPearu



地域運営組織とは?

総務省によれば、地域運営組織とは「地域の暮らしを守るため、地域で暮らす人々が中心となって形成され、地域内の様々な関係主体が参加する協議組織が定めた地域経営の指針に基づき、地域課題の解決に向けた取組を持続的に実践する組織」と定義されています。

つまり、地域のいろんな人たちが話し合って(協議)、地域課題を解決していく(実行)ための組織です。


地域運営組織には主に「一体型」と「分離型」の2パターンがあります。

  • 一体型:協議機能と実⾏機能を同⼀の組織が合わせ持つもの

  • 分離型:協議機能を持つ組織から実⾏機能を切り離して別組織を形成しつつ、相互に連携しているもの

出典:参考[3]p.2


具体的な事例の位置づけは下記の図がわかりやすいです。住んでいる地域の実情にあいそうな組織形態を探してみるとよさそうですね。

出典:参考[4]p.4


背景にある哲学・原則

人口減少や高齢化、自治会加入率の低下、市町村合併の進展に伴う地域課題の多様化・広域化などによって地縁組織が役割を果たせなくなっています。

そこで、地域運営組織は「自助」を支える新たな「共助」の担い手、そして協働による「公助」のパートナーとして、町内会・ 自治会の機能を補完し、市場、集落、行政によるサービス提供機能の低下によって生じた隙間を埋めていくことが期待されています。

出典:参考[5]p.2


進め方

地域運営組織の形成や運営のプロセスには「知る」「動いてみる」「かたちづくる」「持続・発展させる」4つの段階があるとされています。

  • 知る」:地域運営組織の必要性について知ること、その必要性について地域で暮らす人々に気付いてもらうこと、及び「気付き」から地域の課題や将来像を考え、そのためにやるべき活動を決めること

  • 動いてみる」:地域の将来像に向かって、まずは可能なことから活動し始める

  • かたちづくる」:地域の課題解決に向けた活動の受け皿として、協議と実行の組織を形成していくことで、組織内における体制及び役割分担並びに既存組織との連携・役割分担を行う

  • 持続・発展させる」:地域運営組織を運営し、地域の課題解決に向けた取り組みを、より効率的・効果的に実施する組織として強化を図っていく

出典:参考[5]


とはいっても、実際にどうやって組織を立ち上げて運営していったらいいかわからないですよね。。こちら総務省が出している研修テキストと事例集が参考になるかもしれません。あとはやりながら調整していくというのが実際のところだと思います。

出典:参考[5]

▶︎研修用テキスト:https://www.soumu.go.jp/main_content/000820874.pdf

▶︎事例集:https://www.soumu.go.jp/main_content/000820876.pdf


運営上の課題

地域運営組織6,064団体を対象にした調査の結果をみると、地域運営組織の持続的運営に向けた課題として最も多くあげられていたのが「⼈材の不⾜」。活動の担い手、リーダー、事務局いずれも人材が足りていないのが現状です。

そのほか、地域住⺠の当事者意識の不⾜、団体の役員・スタッフの⾼齢化活動資⾦の不⾜などに関しても⽐較的多くの団体で課題となっています。

出典:参考[3]


これらの課題に対する行政の支援策も各種あるので、使えるとことは活用しつつ、できる人ができる範囲で取り組んでいく柔軟性が大切だと思います。どうしたって人口は減っていくので、少ない人手でできるやり方を工夫する努力は大事になっていきそうです。

▶︎行政の支援策一覧:「小さな拠点・地域運営組織の形成に関する事業・制度について」https://www.chisou.go.jp/sousei/about/chiisanakyoten/meeting/pdf/r04-0510_4_siryou.pdf

行政の役割も変化が求められています。これまでは公共サービスの提供者という立ち位置が強かったかと思いますが、これからは地域運営組織の「伴走者」として、組織の形成や運営上の課題に対応していくことが期待されています。そういった点では、行政職員の伴走力向上もあわせて取り組んでいってほしいところです。


編集後記

2024年度に7,000団体まで地域運営組織を増やそうというのが国の方針となています。でも、数じゃないでしょうと思うわけです。内実が伴っているのかどうか、地域運営組織ができることで地域課題の解決に向かっているのか、ますます地域側の負担が増えてはいないだろうか、そういった質的な部分での精査が必要です。

地域運営組織をつくりましょう!自分たちの地域のことは自分たちでやってね!そうやって ”地域の主体性” という名の下に、行政が地域へ差し伸べる手を引こうということになってしまうことも懸念されます。

繰り返し意識したいのは、地域運営組織は協働による「公助」のパートナーであるということです。行政のやりきれない生活支援サービスの隙間をただ地域運営組織が埋めていくというだけでなく、行政と地域運営組織が一緒になって地域の困りごとを解決したり、より暮らしやすい環境をつくっていくことが持続的な地域運営には重要だと思います。

じゃあ、どう協働したらいいの?となりますよねぇ。その答えがすぐに出せればどんな地域も今ごろ創生されていると思うのですが。。いろいろな方法論は研究や実践事例を通して示されてはいるものの、本質は本気でやる人が組織ごとにいるかどうか、そういう人たちが組織間をまたいで協力し合えるかどうかではないかと思います。

地域運営組織というとかっちりと組織だったもののように聞こえますが、きっとそうした組織のほとんどが地域の未来を本気で考える人たちの仲間内の飲み会や寄り合いがもととなっていると思います。

行政として、自治会として、PTAとして…そういった組織の枠から離れて、いち地域住民として今困っていることや将来こうなってほしいといった話がざっくばらんにできるゆるやかな場づくり・関係づくりが地域の「共」の基礎になるのではないでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございました!新しい里づくり研究室(さとけん)では、都会と田舎、山と海、自然と人間のあいだにある「里」に光をあてた研究や実践を紹介しています。記事の感想、里づくりのお悩み、気になるテーマなど、お気軽にコメントお待ちしております😊


参考

[1] 荻野亮吾・似内遼一・深谷麻衣・高瀬麻以(2021):地域づくり分野と都市計画分野における コミュニティ ・ エンパワメント手法の比較,佐賀大学大学院学校教育学研究科紀要,6(1),121-156.
https://onl.la/3vPearu

[2] 総務省HP:「地域運営組織」,<https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/chiiki_unneisosiki.html>(参照2023-04-12)

[3] 地域力創造グループ地域振興室(2022):地域運営組織の形成及び持続的な運営について. https://www.soumu.go.jp/main_content/000820919.pdf

[4] 地域の課題解決のための地域運営組織に関する有識者(2016):地域の課題解決を目指す地域運営組織 -その量的拡大と質的向上に向けて- 最終報告,https://www.chisou.go.jp/sousei/meeting/chiisana_kyoten/rmo_yushikisyakaigi/rmo_yushikisyakaigi-saishuuhoukoku.pdf

[5] 総務省地域力創造グループ地域振興室(2017):地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業研修用テキスト,https://www.soumu.go.jp/main_content/000820874.pdf

[6] 総務省地域力創造グループ地域振興室(2017):地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査 事例集,https://www.soumu.go.jp/main_content/000820876.pdf

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