見出し画像

お金のリファクタリング ~前提の変化~

これまでの記事はこちらにまとめました↓


長く使われてきて、そしてその後も使われる必要のあるシステムは、どこかのタイミングでそのシステムを刷新する。新しい技術は日々生まれ来るし、ビジネスの動向も常に変遷するので、ちょっとした改修や機能追加だけでは、使用に耐えられなくなるからだ。

世の中や技術の情勢が変われば、システムの前提も変わるので、
これまでのシステムが担ってきた役割を整理しつつ、
変化した前提の元に、新しいシステムをデザインする。

「お金」というシステムも、そのシステムが隆盛した頃と今とでは、前提とするもの――つまりは私たちを取り巻く社会は、あらゆるものが大きく様変わりしている。
例えるなら、スマホどころか一般家庭にPCも普及しておらず、ハードディスクも備え付けられていなかったような時代に作られたシステムを、現在に至って使用しているような感じだ。

というわけで今回は、お金というシステムを取り巻く前提条件が、そのシステムが隆盛した頃と今とでは、どう変わっているのか、というお話。

村社会から都市型社会へ

昔は、私たちの暮らす社会の基本形態は村社会だった。同じ村の人たちと助け合いながら、自分たちの生活を成り立たせる互助社会で、村の中でお金をやり取りすることは、あまりなかった。
人間的な温かさのある反面、その村の人々とうまくやれなければ孤立し、生活を成り立たせることが難しくなるという側面もあった。また、所属する村は、生まれた場所で決まり、自分で選ぶことができなかった。

その後、都市型社会へと変遷し、私たちは「機能」としてうまく振る舞うことができれば、自分たちの生活を成り立たせることができるようになった。
村から都市へ人が流れた背景としては、豊かな暮らしへの憧れだけではなく、閉息的な村社会への疲れや、自分で住む場所や職を「選ぶ」ことができる魅力という点もあっただろう。

画像1

現在のお金システムが隆盛したのは、この都市型社会においてだ。
「お金」というものを手にするmy攻略法さえ編み出せれば、生活必需品も娯楽品も全て手に入れられる。人々は、お金のmy攻略法を編み出すことに切磋琢磨した。(巷にあふれるビジネス書籍や自己啓発本も、端的に言えば『お金攻略本』といえる)

おサルの親戚である私たちホモサピエンスは、本来的にゲーム好きな生き物のように思うので、お金を基盤とする都市型社会がここまで盛り上がった理由のひとつには、お金の持つ「ゲーム性」が人間と相性が良かった点もあったのではないかと個人的に推測している。

けれど都市型社会の
「『機能』として在り続けなければ、生活を成り立たせられない」
という点は、人間としての私たちを疲弊させていく側面も持ち合わせていた。

マルチコミュニティ社会へ

そして現在、都市型社会に疲れた私たちは、移動手段の発達や、インターネット普及の恩恵を受けて、自分自身で選んだ複数のコミュニティに所属する形で、モノ・ココロを充足させる生活へとシフトしつつある。

画像2

田舎で暮らしつつリモートで都市の仕事もしたり、あるいはその逆パターンをしたり、オンラインを通して住む場所も仕事もまったく異なる人と繋がって関係性を築いたり。

自分の持っているお金・能力・時間をエネルギーとして捉えると、
マルチコミュニティ社会では、これらのエネルギーをそれぞれのコミュニティに配分して、それぞれのコミュニティから自分が生きていくのに必要なエネルギーを受け取ることになる。自分にとっての心地よいエネルギーの回し方、エネルギーのバランス配分を見つけていくことになるのだろう。

画像3

現在はまだ多くの人は、
「生活に必要なものの多くは都市型社会に頼り、心の充足をそれ以外のコミュニティから得る」
という風に、エネルギーの大部分を都市型社会に注いでいる状態だが、都市型社会に片足を突っ込んでその恩恵を受けつつも、少しずつ、別のコミュニティへの比重を増やしていくことになるだろう。

画像4

やがて、現在の都市型社会は縮小していき、マルチコミュニティ社会の中の一つのコミュニティとなるだろう。

そして、新たに生まれるコミュニティのエネルギー媒介手段は、お金とは限らない。もちろん、お金を使ってやり取りするコミュニティも在るだろうし、在っていいと思うけれど、お金を使わずに成り立つコミュニティもあるだろう。

そして、私たちは、お金を使うコミュニティ、使わないコミュニティの両方に足を突っ込みながら、生活していくことになる。

画像5

まとめ

というわけで、お金システムを取り巻く前提の変化について、まとめ。

≪これまで≫
・ お金を介して、生きるのに必要なものを手にする社会に多くの人が属する
・ お金は、自分が「機能」として振舞うことで手に入れられる
・ 基本的に一人の人間が属するのは一つのコミュニティ
・ 属するコミュニティは、居住地による制約を受ける

≪これから≫
・一人の人間が複数のコミュニティに属する
・お金を流通手段とするコミュニティもあれば、お金を使わないコミュニティもある
・居住地による制約を受けないコミュニティが多くある


そんなわけで次回は、

「都市型生活に足を突っ込みながら、徐々にマルチコミュニティ社会へ移行する現在」
という前提の元に新たなコミュニティを作るとしたら、コミュニティの人々と、どういう形でエネルギー交換しあうのがいいのだろう?

てなことを考えるために、知人数名と行っている『お金を忘れた村』という思考実験についてのお話です。

この記事が参加している募集

お金について考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?