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筋肉が中心となる肩関節周囲炎の佐藤よしのりSSテクニック

今回は、肩関節周囲炎の拘縮期に行う治療法のひとつ『筋肉が中心となる肩関節周囲炎』についてのSSテクニックです。

こちらでは、筋の影響によって可動域制限となってしまっている方に対して、どの筋肉が影響して可動域制限となっているのかを判断するために私が臨床で用いているSSテクニックになります。

それぞれの筋肉に対して操作方法が微妙に違ってきて、覚えにくいところですが、それぞれの筋肉に別けてあります。

この辺りは曖昧にしがちな部分になりやすいのですが、組織ごと丁寧に見て判断できると治療成績もよくなるので、是非、参考にしていただけたらと思います。

目次の最後には今回の要点だけが書かれている【まとめ】があります。
タイトル通りとりあえずこれだけ覚えればいいやつです。

サクッと最後だけ見てもよし!
順を追ってゆっくり見てもよし!
5分〜10分で読める内容になっています。

それではどうぞ。



まず始めに肩関節の筋肉以外の問題を事前チェックします。


肩関節の事前チェック

不安定な関節とは

不安定な関節とは筋肉の問題でも言えることですが、そのほかに大きく分けて2種類が考えられます。

  • 不安定症となる関節
    器質的な緩みや形態的な破綻などがある場合。

  • 拘縮による関節
    拘縮より骨頭の動きに妨げがある。

どちらも安定した関節運動ができないので、まずはこれらがあるかを確認する必要があります。

肩関節の安定性を保つために筋肉はかなり重要ですが、その前に不安定症や拘縮などがあった場合は、いくら筋肉に対してアプローチを行ったとしても改善の見込みが少ないので、それらに合った治療法を選択する必要があります。

この辺りは見落としがちなので、治療計画を立てる前に確認の必要があります。
それらを除外した上で肩関節周囲の筋肉の問題を疑うことになります。


肩関節における運動障害

肩関節周囲炎では運動障害が多くありますが、こちらも理解しておくと肩関節の運動障害がよりわかりやすく整理できると思います。

肩関節において拘縮性なのか疼痛性なのかで運動障害は別けることができます。

  • 拘縮性運動障害
    組織の伸張性や組織間の滑走性がなく運動が制限された状態。
    obligate translation理論はこれになる。
    つまり、関節の転がり運動ができないことで運動障害となっているケースもある。

  • 疼痛性運動障害
    腱板、肩峰下滑液包、上腕二頭筋長頭腱などの炎症で疼痛による運動が制限された状態。
    関節拘縮はしていないが、炎症により侵害受容器の閾値が低くなって、あらゆる運動で疼痛が強い。
    そして疼痛コントロールが必要。

筋肉の状態をチェック

問診と併用してどの筋肉にどのような状態になっているのかをチェックします。
圧痛と筋肉の伸張を確認して可動域における制限因子をチェックして、その筋肉に対してアプローチをしていく。

圧痛をチェック

筋肉の圧痛は筋攣縮や炎症部位を把握する上で重要なチェックになります。
評価する際にはその筋を適度に伸張させた肢位にすることで筋緊張がわかりやすく、また圧痛も確認しやすい。

筋の伸張テスト

圧痛が確認させた筋肉の起始停止間を伸張させ、可動域をチェックする。
これで可動域の制限因子となる筋肉をチェックしていく。

圧痛と伸張テストをチェックしながら可動域の制限因子となる筋肉を見分ける必要があります。
なので筋肉ごとに伸張テストを別けて行えるようにしておく必要があるので後述します。
そして1st肢位、2nd肢位、3rd肢位で何が伸張するかも把握しておくと、日常生活動作に直結するので、筋肉による可動域制限がある場合は活用できると思います。


筋肉それぞれの伸張テスト

座位や背臥位で行うのですが、座位でチェックできる方が問診と組み合わせて行いやすいので実用的だと思います。
なので、そういった事も確認してもらえると実践でも使いやすいです。

また、伸張性の低下を疑うための指標となる角度を記載してますが、あくまで参考程度になります。
疑いがあった場合は、健側と患側を見比べてより精度の高いチェックを行うといいかもしれません。

棘上筋

棘上筋は回旋軸に対して前方にある前部線維は内旋運動に作用して、後方にある後部線維は外旋運動に作用する。

なので棘上筋の伸張テストは前部線維と後部線維それぞれを見る必要があります。

前部線維の伸張方法

座位で行います。
肩関節外転45°・外旋30°の肢位で肩甲骨の動きを固定しながら、内転させて内外転0°にならない場合は棘上筋前部線維の伸張性の低下を疑います。

後部線維の伸張方法

座位で行います。
肩関節外転45°・内旋30°の肢位で肩甲骨の動きを固定しながら、内転させて内外転0°にならない場合は棘上筋後部線維の伸張性の低下を疑います。


棘下筋

横行線維(上部線維)の伸張方法

背臥位で行います。
伸張させる動きのイメージは1st内旋になります。
ただ、下垂位で行うと内旋した際に体幹にぶつかってしまうので、肩関節軽度屈曲位から肩甲骨の固定しながら内旋を行います。
参考可動域の80°から90°にならない場合は伸張性の低下を疑います。

斜走線維(下部線維)の伸張方法

背臥位で行います。
伸張させる動きのイメージは2nd内旋になります。
こちらも肩甲骨を固定しながら2nd内旋の動きを行い、内旋30°にならない場合は伸張性の低下を疑います。

小円筋

小円筋は棘下筋と近い位置にあり、作用も似ているところからしっかり別けて理解する必要があります。
小円筋の外旋作用が最も働く肢位は3rd外旋になります。
また、後方関節包と結合しており、外旋運動時に後方関節包の挟み込みを防ぐ機能を担っている。

小円筋伸張方法

座位または背臥位で行います。
伸張させる動きのイメージは3rd内旋になります。
肩甲骨を固定しながら3rd内旋の動きを行い、内旋30°にならない場合は伸張性の低下を疑います。


「応用」棘下筋と小円筋を別けた運動療法

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