
コンテンツの体験時間を変える「マッハスロー発想法」
ブルーパドルの佐藤ねじです。自分が勝手に命名した発想法を紹介するシリーズを始めます。まず1回目は、コンテンツの体験時間を変える「マッハスロー法」についてです。
コンテンツには体験時間がある
あらゆるコンテンツには、およその体験時間があります。映画は2時間。テレビは30分や1時間。Twitterの動画は2分20秒まで。ツイートは数秒。軽めのボドゲは10分—30分。YouTubeは数分—1時間。
このコンテンツの体験時間を変えてみると、変わった切り口の企画が立ち上がりやすくなります。
1:コンテンツをマッハにすると面白くなりやすい
一番わかりやすいのは、何かを「マッハ」にする方法です。
●「3分クッキング」ならぬ「3秒クッキング」
●10分で髪が切れるQBハウス
ありえない速さにすることで、強いコンテンツになったり、画期的なサービスになったりします。
なんだかアイデアが出にくいときは、息抜き気分で、とりあえずマッハにするのもいいかもです。ブレストで停滞している時なんかにもオススメです。
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2:スローにすると深みが出る
でも、だからといって何でもマッハにしたって、どこかと似た企画になってしまいます。大事なのは「マッハ化」することではなくて、人は無意識のうちにコンテンツに体験時間があることを感じており、そこをいじることで、違和感や面白さが立ち上がるということです。
個人的にはスローにする方が、深みの出るコンテンツができやすいなと感じています。
例えば、劣化するWEB。
これは、一瞬で消費されてしまうWEBコンテンツに抗う気持ちでつくった、5年かかって完成するWEBです。
http://web-media.blue-puddle.com/degradation/
WEBサイトには、本のような劣化は起こりません。そこで、アクセス数と時間に応じて劣化していく記事を作りました。アクセスが増えると文字がかすれ、時間が経つと黄ばんでいきます。
公開時に、いわゆるバズ的に拡がりましたが、ふつうはそこで終わり。でもこのサイトが面白いのはその後も、定期的にスクリーンショットを撮って観察してくれている人がいたりすることです。
そしてカメラフォルダをいじっていてこの写真が出てきた。
— 🌷👑みついりりんご👅👍 (@3210lingoSRwPBB) December 11, 2019
2017年2月から本当に劣化していて変な感動が湧いた。https://t.co/2mC5CoTV33 pic.twitter.com/jzeQiP7bnD
公開時(2017年2月)は、まだきれいな真っ白なWEBページでした。もうすぐ3年が経ちますが、だいぶいい感じに劣化してきました。
他にもスローなコンテンツでいうと、
●300年後に完成する建物「サグラダファミリア」
●クイズの答えが1年後に分かるテレビ番組
なども、このジャンルに入ると分類しています。
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アイデア出し
この発想法のいい所は、脳が動いてないときに、動きやすくできることです。
企画の中身がなくても、ひとまず「マッハサッカー」とか「1日で壊れる家電」とか、言葉を置いてみて、そこからそれはどんなコンテンツなんだろう?と想像してみると、発想が拡がることがあります。
いくつか実際にマッハスロー法で、アイデア出しをしてみます。
1つめはふつう長くても1時間くらいのYouTubeを、めちゃくちゃ長くしたらどんなコンテンツが発想されるでしょうか。
例えば、地球が誕生した時間「46億3000万年時間」の動画があったら、どんなことになるでしょうか。そもそも人間の一生をかけても全編見ることができない動画になります。
そして2019年現在のシークバーの位置によって、地球の残り時間が明示されることになるので、ちょっと環境問題的な表現にもなります。
この「46億年動画」は、私のやってみたいメモに入ってたアイデアなんですが、これはまさに、マッハスロー的な発想です。
2つ目は、人狼。ワンナイト人狼などすでにありますが、例えばめちゃくちゃマッハにしたらどうなるんでしょうか。
10秒で終わる人狼…。ゲームになり得るんでしょうか。交渉の余地がないので、もう印象で決めるんでしょうね。ただ単純に、こいつが人狼に違いない!という決めつけるだけのゲームになるかもしれません。
たぶん、クソゲーになるかもしれませんが、すごくポジティブに考えると「The Mind」のように、人間の第6感を働かせるようなゲームにもなりるかもしれません。
3つめ。期間限定の会社ってどうでしょうか。
会社というものは、何か目的があって作られるものです。ということは、その目的が達成されたら解散したっていい訳で、必ずしも持続することだけが正しい訳でもありません。
1年限定で絶対目的を達成するぞ!という強い意思のもと、それを世に宣言して立ち上がった会社。
なんとなく社員の指揮も高そうだし、仕事の質もすごく高くなりそうな気がします。
超スローフードなマクドナルドがあったら、どんな店なんでしょうか。
1口につき、50回ずつゆっくり噛んで食べることが推奨され、店内にはスピリチュアルな音楽が流れます。ポテトの向こうに大きく広がるじゃがいも畑が目に浮かび、食べることの喜びを存分に味わうことができそうです。
10分どん兵衛みたいに、チーズバーガーをゆっくり食べると、実は超うまい。みたいな発見もあるかもしれません。
中学校の授業で未来の自分へ書いた手紙が、10年後に届いたことがあります。あの経験はとても切なく衝撃的でした。
こういう体験は紙の方が素敵ですが、これを多くの人が体験できるサービスにするには、膨大な人的コストが必要になります。
もう少しライトな感じで、10年後に届くGmailの拡張機能みたいなものがあったら、10歳になる息子に向けて、2019年の状況をメールしてみたいです。
「XXくん。元気してますか。XXくん、こちらはまだ1歳ですが、あなた、今日、初めて立ったよ。すごいね!」みたいな。
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以上、マッハスロー法の紹介でした。マッハとかスローといっても極端に伸ばすばかりでなくて、2時間映画を観ることが耐えられない人たちのための「30分映画館」みたいに、微妙に体験時間をいじることでも、いろいろ企画のタネは立ち上がるんじゃないかと思います。
ブルーパドル
僕ら、小さくてもいいから新しい「0→0.1」の発見をたくさん見つけることを目的にした会社です。いろんな企業のPR・広告コンテンツを作ったり、自社でコンテンツ作ったりしています。
ふだんから、仕事のオリエンがなくてもこんな感じで、ビジネスになる/ならないは無関係に、こんなのあったら面白いねとか、アイデアを貯めております。
そして、変なデジタルコンテンツつくったり、商品企画したり。最近では京都に「不思議な宿」というエンタメ宿つくったり、「小1起業家」とか「等身大パネルマザー」みたいな子供コンテンツをつくったりしています。
また、変な発想法シリーズなのか、何かしらの文を書いたりもしてみようかなと思います。
それでは。
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