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【ご報告】「自分の家紋知ってる?」Twitterアンケートの結果について


こんにちは、着物コーディネーターさとです。

以前、中国のSNS、Weiboで家紋について投稿をしたところ
「日本人には一般家庭にも紋章があるの!?」
「かっこいい!」

等のリアクション(全てポジティブな反応でした)があったのをきっかけに、
私自身、家紋について考える機会が増えました。

これがきっかかけで、思い立ってTwitterでアンケートを行ったところ、
大変多くの方にご協力いただきました。
ご回答くださった皆様、RT拡散してくださった皆様、ありがとうございました。ご報告がてら、得られた情報をまとめさせて頂きました。

アンケート結果


キャプチャ



最初にアンケート結果をご報告いたします。
Twitterの結果なのでご存知の方もいらっしゃると思いますが、
78,000を超える数の投票を頂きました。

「知っている」「家族に聞けば分かると思う」は全体の63.2%
半数以上の人は知っている、もしくは確認すれば分かる状態、という事ですよね。
一方、「知らない」「その他」は36.8%でした。

Twitterのアンケート機能は、回答者の年齢や性別、出身地などの統計は取れないです。単純に「数だけ」の結果となります。
この割合、高いと思いますか?低いと思いますか?
私は「思っていたより高いな」と感じました。

「その他」のリプライ欄の多様性

私自身、私の実家、夫の実家、どちらの家紋も明確に認識していたので、「家紋がない人がいる可能性」を失念していました。
なので、このアンケート結果は選択肢に不自由さがあり、正確性には欠いているかもしれません。
しかし、ナマの声が集まり、実情がよく分かる結果になったのでは?と感じています。
また、「その他」に投票してくださった約550人の中からリプライを下さった方の中で、新たな発見がたくさんありました。

様々な家庭の事情

「その他」を選んで下さった方々のコメントをまとめると、
・記憶が正確である自信がない
・ご両親のどちらかだけ家紋を知っている
・結婚相手が家紋を知らないため、自分も分からない(女性によるコメント)

等のコメントが多いように思いました。

家紋はお墓に彫られていたり、誂えた節句人形についていたり、
仏壇や箪笥の湯箪、屋根瓦などに意匠として使用される事が多いですよね。
しかし、お墓参りや節句人形、大きな箪笥などなど、これらは現代では減少傾向にある風習ですよね。

この結果から、
・核家族化
・「家」という概念の薄れ

などの背景から、家紋の伝承が上手くいかないケースもある、という仮説が立てられると感じました。

「家紋がない」と答えてくださった方のコメント

さて、その他にも色々なパターンがありました。
「家紋がない」と答えてくださった方の中で、北海道や沖縄にお住まいの方から複数コメントを頂きました。

北海道に関しては
・ルーツがアイヌ民族である
・移住した際に家紋の伝承が途絶えた

等の事情があるようです。

沖縄も北海道と似ていて
・ルーツが琉球民族である
・王族は家紋を持っていたので、王族に近い家は家紋がある

というコメントを何件か頂きました。大変興味深いですね!

他にも、ご両親が外国人である、との回答も数件いただきました。
やはり民間人が紋章のようなものを使用しているのは珍しい風習なんですね。

また、
・様々な理由で血縁者と絶縁していて確認が出来ない
・確認しようにも、知っている人がもう他界している

等のコメントもありました。

上記の事から、家紋の伝承には、個々の家庭の事情が大変深く関わっている事も分かりました。
あまり良い記憶ではない事も書いていただいたり、
わざわざご家族に確認を取ってくださった方もいらっしゃったようで、
皆様本当にありがとうございました…!

「農民には家紋がない」「家紋は一部の特権階級の家のもの」とのご指摘も頂いたのですが、これに関しては私は懐疑的です。
理由と致しましては、
・法的効力がないまま現代に伝承されている→民間人が家紋を使用しない理由がない
・地域や各家庭による複雑な事情が色濃く反映されているため、一概に断言するのは難しいのではないか?

という大変シンプルな理由です。
家紋を持たない人が大半だったと仮定したら、アンケート結果がガラッと変わっていたでしょうしね。

「女紋」の文化について

さて、他にも「女性にのみ受け継がれる女紋の習慣」のコメントも複数頂きました。
・母から娘に受け継ぐ習慣が元々あった
・結婚相手の家紋と比較して、デザインが好みだったから選んだ

等などです。

恐らく地域や家庭により差があるのだと想定できますが、このアンケートの結果では地域までは判断できかねますので、
「こんな風習もあるんだね」までしか判断ができません…
しかし、女紋のデザインが揚羽蝶だとコメント下さった方も複数いたので、
これも何かの謂れがあるのかもしれませんね。

「家」の概念との関係


「うちは分家なので家紋がありません」とご回答くださった方がいました。
この「本家、分家」の概念って現代では結構廃れているのかな?と私は思うのですが、
本家=一族の中心となる家
分家=家族の誰かが新しく「家」を新設する
というニュアンスで、私は認識しています。
分家になった時に家紋を新設していない→家紋がないという意味合いですね。

自分が筆頭で戸籍を作った例

上記のような理由で「家紋がない」方もいれば、
「自分が筆頭で戸籍を作ったので、新しく家紋を考えた」という方もいらっしゃいました。
中には自分でデザインを考えた方も!
何を参考にされたか尋ねてみたところ、自分の姓のルーツの紋を下地にされたとの事でした。

家紋って新設してもいいんだ!というお声もたくさんありました。
ちょっとワクワクしちゃいますよね。笑

結婚がキッカケで分からなくなる例

女性からのコメントに散見されたのが
「結婚相手が家紋を把握していない」というケースです。
恐らく家紋の認識には男女差もあり、お葬式や紋服を誂える、などのタイミングで初めて認識する方も多いのだと思います。
これも、現代の社会的な背景から、家紋の認知機会が減少しているのが原因なのでしょうね。


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フリーサイト「発光大王堂」管理人さんにお話を聞いてみた

さて、この度のアンケートがきっかけ(?)でアクセス数が増えた、ツイートされていた、
家紋のフリーサイト「発光大王堂」の管理人hakko_satouさんに、家紋について気になる点を伺ってみました。
(以下、太字部分がhakko_satouさんからのコメントとなります。)


家紋の著作権について


いただいたコメントの中に、「家紋の著作権」を主張される方もいらっしゃったのですが、
フリーサイトの運営方針としてはどう捉えていらっしゃるのか、単刀直入にお尋ねしてみたところ、

ー 個別の家紋を著作物と捉えたとして、
『著作者は誰なのか?』
『著作者の没後70年が経過していないか?』
『仮に権利が有効であったとして、権利を主張する人は存在するのか?』
を考えれば、まず権利の発生している(伝統的な既存の)家紋はないだろうと考えています。


との事でした。(私も同感です。)
※あくまでサイトの運営方針ですので、実用面で何か調べている方は、法律の専門家に相談して下さいね!
ただ、家紋を使用した著作物については「著作権保持者がいる」と考えるのが妥当かと思います。この辺もちょっと紛らわしいけど、注意が必要ですよね。

また、
ー 注意が必要なのは、一部の家紋には『商標登録』されたものがあるということです。
有名なところでは、仙台藩主・伊達氏の『竹に雀(仙台笹)紋』が現伊達家当主によって商標登録されているようです。

との事です。家紋って商標登録できるんですね!

今回のアンケートに対してのリプライの中で「家紋を新設した」とご回答いただいた方もいらっしゃったのですが、

ー 新設された家紋のほとんどは、個人レベルでの使用にとどまっているケースがほとんどでしょう。
弊サイトとしては、そういった新設家紋の一般的な需要を考えても、自主的に素材としてデータ製作する予定はありません

ただ、新設家紋は、誰かの創作したオリジナルデザインであると考えれば、著作権は存在するのではないかと考えています。

との事でした。
「家紋だから」必ずしも著作権フリーな訳ではないという事ですね。

サイト内で人気の家紋

また、「家紋の需要」ってどんな需要なんだろう?とちょっと気になったので、人気の家紋についても質問させていただきました。
サイトのシステム上、ダウンロード数は不明との事でしたが、

ー 現在のところ、検索流入を含むアクセスの多い家紋は、
順に『五三桐』『下がり藤』『丸に剣片喰』『丸に抱き茗荷』『左三つ巴』『丸に片喰』『丸に立ち沢瀉』といったところです。
使用家系が多いですからね。
戦国武将の家紋でいえば、順に『織田信長』『徳川家康』『武田信玄』『上杉謙信』『明智光秀』『真田幸村』となっています。わりとベタな結果です。

なるほど納得です。
戦国武将の家紋については、素材使用目的がほとんどでしょう、との事でした。

印象的な家紋

最後に、私自身が家紋についての知識が乏しいので、
「デザインが秀逸だと思う家紋や、見たときに衝撃を受けた家紋ってありますか?」とお尋ねしてみました。

ー 衝撃を受けたといえば『逆さ三つ大の字』ですかね。「バイオハザードじゃないか!」っていう。笑
あと『細輪に覗き〇〇』の系統もすごい発想ですよね。
デザインが秀逸だと思うものがいっぱいありすぎますが、いくつか挙げるとすれば『八つ藤の丸』や『東六条(八つ)藤』みたいな藤の浮線文様由来のものとか、
『加納輪宝』とか、シンプルに『七宝花菱』
笹竜胆も好きな形です。

との事です。
家紋って枠が丸で立体表現が少ないのに、意外にデザインの幅が広いんですね!見ていて面白かったです。


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さて、私からのご報告は以上となります。
今回のアンケート結果を受けて、家紋の継承は各家庭事情や生き方の選択、社会的な背景が強く反映されている、という新たな発見がありました。
今一度、ご協力くださった皆様に御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。

当初予定していた通り、
中国や台湾、香港向けに家紋の記事を書く予定です。
しかし、集まったコメントの数が膨大なので、もう少々時間がかかりそうです。大変恐縮ですが、書き上げた際には都度ご報告させていただきます。

お読みいただきありがとうございました。