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母の夢を叶えるプロジェクトvol.1

今から3ヶ月前。
母は自分の身体の痛みに耐えかね、緩和ケア病棟に入院した。
末期がんで延命治療は選ばないことを自らが決めていた。

昨年、病気がわかった直後、「緩和ケア外来に行こうと思ってるの、緩和ケア病棟で最期を迎えたいと思っているから、話を聴いておきたくて。あなたも一緒に行ってくれる?」
そう頼まれて、一緒にドクターに会いに行っていた。

まず、私は、ここで驚くことになる。
「もう決めちゃうの?」と。

母の意志は固かった。
子どもたち(私と妹)には迷惑をかけたくない。手を煩わせたくないから、病院で終わりを迎えたいの、と。
「お父さん(夫)の介護を20年以上してきて大変さをわかってる。
だからね、あなたたちには、自分のことをやって欲しいの。お母さんに時間はかけなくていいから。」

そんなことを言ってた。

が、しかし…コトは急展開をしていく…。


この3ヶ月で起こったことを、細かく文章に残しておきたい気持ちが私にはある。なぜならば、いのちに向き合う、とか、親の死に向き合うとは、物凄いエネルギーと、受け取るものが多いと感じたからだ。


そして、素敵。

美しさに溢れてる。

たくさんたくさん感情を動かして、疲れちゃうけど、イキイキしていて、いのちが輝いていると感じる瞬間が何度もある。
泣いて笑って、怒って、ぶつかりあって。
光と闇が混在する。
生きるって、こういうことかな、そう感じているから。


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母は来週、北海道を離れ、群馬県に移動することを決めた。
大移動だ。

これは、母の願い。
私たち家族は母の望みを叶えるべく先週から動き出した。

2週間ほど前から、下肢に麻痺が始まり、今はまったく足が動かなくってしまった。脊髄にある癌細胞が原因で神経が侵されてしまったそうだ。
日々、徐々に変化していく身体を受け入れていく苦痛、嘆き。
この恐怖は本人にしかわからない。
何度も一緒に泣いた。


群馬県には私の妹家族が暮らしている。
看護師の妹が言う。

「お母さんを私が看たい。こっちに呼びたい。
あとどれくらいかわからないけれど、限られた時間を孫たちの賑やかな声の中で過ごせる方がいいんじゃないかと思う。
病院のベットの上で天井だけを見つめている時間を過ごさせたくない気持ちが私にあるよ。
でも、お母さんがどうしたいかが一番だから、お母さんの望みを一番に考えたい。」


私たちは何度も対話を繰り返した。
病院のドクター、看護師さんと何度もお話をした。

母の「ほんとうはね…」を見つけるために。


身体の機能が徐々に低下し、現在は車椅子が母の足となった。
「毎日変化する身体を受け入れていくのはツラくしんどい。
こんな予定ではなかったはずなのに…、苦しいわ、」と母は言う。

日々変化する身体と心。
その状況下の中で、母は、自分の本当の喜びは何かと対峙を始めた気がしていた。
究極になった時、人は、周囲のことなんて考えない。

自分のことだけだ。

たった1人の自分自身のことだけを考える。

限りあるいのちの時間をどう過ごしたいか、を決める。


自分で決める。


周囲を徹底的に巻き込み、自分のいのちが喜ぶ選択をする。

お別れは近いかもしれないし、もっと先かもしれない。
考えると悲しみも湧いてくる。けれど、それ以上に、私の中には、母の願いを叶える熱い情熱のエネルギーと、一緒にそれができる喜びの方が強い。

まるで、旅の計画を立てるかのようなワクワクするものがある。


誰かの喜びを叶えるために、私は、至る所にお願いと、協力を要請した。
入院先の病院や、JALのプライオリティゲストセンター、群馬県で受け入れてくださる各医療機関に専門機関と、多岐に渡り、多くのスペシャリストの皆さんが動き出してくださった。

ちなみに。
移動に使う機内では、羽田まで座位で1時間40分が気がかりでもあり、万が一横になりたいとなった場合を考えストレッチャーを準備していただこうかと問い合わせた。
無料かと思っていたが、なんと5万円。
座席を9席つぶして確保するためにかかる費用だそうだ。びっくり!
こんなことでもないと知らなかったこと。
準備できていれば 何かの際に安心感もあるけれど、今回は断念した。
にしても、JALのプライオリティゲストセンターのスタッフさんのホスピタリティは素晴らしかった!


皆さんから受け取るものは、とてもとても温かく丁寧で、配慮や気遣いが行き届いている。ここまでしてもらってよいのだろうか、と思うばかり。
感謝ばかりが溢れてくる。


「いま、ワクワクする気持ちに溢れているの。楽しみ!」と、

今朝、母が電話越しに言う。


昨日、外科のドクターに、わざわざ「私のガンのステージはいくつですか?」と自ら確認し、「一番上ですね。」と返事をもらい落ち込んだ人とは思えない。

私は、それを聴きながら、「なぜにわざわざ確認するんだろう?」を思ったが、

「聴いてスッキリした!モヤモヤと思い煩うより、ハッキリしておいた方がいいわよ、自分のことなんだから。」と言う。


こんな調子で、一日がバラエティに飛び毎日濃厚。
いくつもの色が移ろいゆく日々。

時間は、いのちの時間。

それをどう過ごすか、を教わっている気がしています。

「最期までやりたいことをやる。」

私は、アイドルのマネージャーのような役割で、母の願いを叶えるプロジェクトリーダーです。

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写真:すべてkazufoto 橋本和典さん


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