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インド北部のレー・マナリ・ハイウェイは過酷だけど絶景でした

インド北部ヒマチャル・プラデシュ州のマナリからラダック連邦直轄領のレーまで陸路で移動する場合、レー・マナリ・ハイウェイという道を通ることになります。マナリの街にはこれからレーに移動するという旅行者がたくさんいて、マナリ〜レーの陸路移動はけっこうメジャーみたいです。

この道路はマナリ〜レーをつなぐ唯一の道路であり、同時に北部の国境紛争地帯に通じる道路でもあるため軍事的にも重要な道路です。
また、マナリの街にはあちこちにこのハイウェイのルートマップが描かれており、この地域の象徴的な存在のようです。


移動手段

レー・マナリ・ハイウェイを通る方法は大きく4つあります。費用が高い順に、①車をチャーターして行く方法、②自分でバイクや車をレンタルする方法、③乗り合いのバンで行く方法、④大型バスで行く方法です。
ただし、後述のように道が非常に過酷で人里離れた道を通るため、②はおすすめしません。事故や故障が起こると本当に詰みます。
私は③の乗り合いバンで行きました。料金は3200ルピーでした。④のバスは1800ルピーでした。

14人ぐらい乗れる乗り合いバス

所要時間

所要時間は約13〜18時間ぐらいです。グーグルマップで調べると10時間と出てきますが道路状況が悪いのでこの時間で着くのはほぼ不可能です。
夜間にこの道路を通るのは危険すぎるので、どの交通機関で行く場合もほぼ早朝出発で夜到着というパターンになるんじゃないかなと思います。

道路のコンディション

ハイウェイというからには高規格の道路かと思うかもしれませんが、実態はかなりの悪路です。全体の8〜9割は舗装されているものの、未舗装の区間もある上に舗装区間も道幅が狭く道路に穴が空いていたり水没していたりするためスムーズに走れる区間はごく一部です。
私が通ったのは6月末ですが、この時期は雪解け水が大量に流れている時期であり、あちこちで道路が水没していたり土砂崩れが起きていました。

沿道風景

固有名詞の読み方が間違ってたら教えてください。

マナリ〜ロタン・トンネル(Rohtang tunnel)

バスはマナリのバスターミナルからで、出発時間は朝の7:00でしたが運転手が来ず実際は7:35ぐらいになりました。こういうのをTIIって呼ぶんだよって別の人が言ってました。(TIA = This is Africaをもじってます)
自分の他にはノルウェー人が1人とロシア人の4人のグループ、地元の人が8人ぐらい乗ってました。

最初はまだマナリ近郊なので道路状態はよく、スムーズに進みます。沿道には集落があり、そこで何人か客を拾ったり降ろしたりしながら進みます。
途中で乗ってきて途中で降りたおじさん、空いてる席がなかったので助手席の他の乗客の膝の上に座ってました。見知らぬおじさんどうし何のためらいもなく膝の上に座ってて笑いそうになりました。これもTIIですね。

8:00 ヒマラヤスギの森林の中を進む

しばらくするとロタン・トンネルという10kmぐらいある長いトンネルに入ります。最近できたトンネルで、これができたことで所要時間がかなり短縮されたそうです。

北側の出口。小屋みたいなのが出口です。

余談ですが、沿道の壁や標識のあちこちにBROという文字が出てきます。最初はbrotherの意味かと思っていて、「よおブラザー!」みたいなノリかと思っていましたが、実際はBorder Road Organizationというこの道路を管理している組織の略称のようです。
Border Roadって名前、最果てに来たという感じがしてちょっとわくわくしますね。

ロタン・トンネル〜サチュ(Sarchu)

ロタン・トンネルを抜けると急に風景が変わります。
マナリ側は雨季で湿度が高く、森林に覆われていましたが、トンネルを出た途端に木がほとんどなくなり乾燥していることがわかります。

木がほとんど生えていない山

バスはしばらく山道を進みます。舗装されていてセンターラインもありますがヘアピンカーブの連続なのでかなり乗り心地は悪いです。

マナリ出発直後はわりとムーズでもしかしたらGoogle Map通りの時間でいけるんじゃないかと楽観的に思ってたりしたんですが、出発から2〜3時間走ったあたりからだんだんと雲行きが怪しくなってきます。
あっちこっち土砂崩れが起きていたり道路の修復をしていて、それが原因で車が詰まってるんです。

11:00 土砂崩れの修復工事中

車が止まると乗客が勝手に降りて休憩したりするので、自分も降りて立ちションしたりしてました。
運転手も降りてダラダラしてたら急に車列が動き出して運転手と乗客もろともダッシュでバスに戻るという状況が何度かありました。(笑)

13:00 車から降りてそのへんで遊ぶ乗客たち

何度も停車して道も悪いので大変ですが、このあたりから景色が素晴らしくなってきます。

ゴテゴテにデコレーションされてる古いトラックがめちゃくちゃ好きです。

そうこうして数時間するとサチュに着きます。ラダックは政治的に微妙な地域のため外国人は入域にパスポートチェックが必要で、ここサチュで検問があります。
検問所が近づくとおもむろに運転手が「パスポート!」といって外国人客のパスポートを回収し、道路脇の事務所でまとめて手続きをしてくれます。
理由はよくわかりませんがこの周辺でパスポートチェックは2, 3回ありました。ヒマチャル・プラデシュの州警察と連邦政府で別々に検問してるのかな?

サチュ〜モレイ平原(Moray Plain)

ラダックに入るとさらに道路状況が悪くなり、未舗装区間が多くなってきます。
センターラインもいつのまにかなくなり、乗用車1台分ぐらいしかない細い道路になっていきます。そこを大型トラックやバスがすれ違うのでそれはもう大変です。片方は道路をはみ出して崖ギリギリのところを走って、もう片方は路肩の斜面に乗り上げながらなんとかすれ違います。
そんな状況なので対向車が来るたびに渋滞が発生し、場所によってはもう歩いた方が早いんじゃないかっていうぐらいのスピードになります。

15:00 こんなせまい道がずっと続きます

危なくないのかって?そりゃあもちろん危ないに決まってます。
崖下には転落した車やトラックがちらほらありました。こんなところにレッカー車はこれなさそうなので、たぶんずっと放置されるんでしょう。

転落して放置されているトラック

そういえばさっきから息が苦しいなと思ってGoogle Mapで確認してみるとすでに標高は4000m以上でした。自分はマナリでトレッキングなどをしていて高度順応していたので大したことはなかったですが、高山病でゲロゲロしてる乗客もいてかわいそうでした。

途中でNakee LaとLachung Laという標高5000m前後の峠を越えます。このあたりから未舗装区間が多くなり、雪解け水によるぬかるみがあったり道路が水没している場所もあって、まともに座っていられないぐらい車が揺れます。全行程で一番つらい区間でした。
激しく揺れるとなぜかとても眠くなるんですよね。でも寝るとすぐにどこかに頭を強打して起きます。その繰り返しでした。

16:00 Lachung Laの峠

モレイ平原〜タグラング・ラ(Taglang La)

過酷な悪路をずっと走っていると、突然視界が開けてモレイ平原に入ります。センターラインのある舗装道路になり、線形も気持ちのいい直線になります。

車窓からは野生のキャン(チベットノロバ)や家畜のヤクと羊、遊牧民の住居みたいなのもあり、車内の雰囲気もさっきまでの殺伐とした感じから一転してみんな楽しそうに写真を撮り始めます。
というかこんなところで暮らしてる人がいるのがびっくりです。

18:00 モレイ平原の直線道路

モレイ平原を30分ほど走るとまたしばらく山道になりますが、さっきとは違ってきちんと舗装されているので比較的スムーズに進みます。

山道を登ると平原を見下ろせます。

どんどん登って行くと、ついにこのハイウェイの最高地点のタグラング・ラに到着します。観光バスではないので素通りされるのかと思いましたが、意外にもしばらく停車してくれて記念撮影などができました。

19時ごろにタグラング・ラに到着。世界で12番目に高い峠らしいです。
余談ですが世界一のウムリング・ラもラダックにあります。
標高5300mで空気はかなり薄いので長居しないように注意しましょう

ここまでの道のりが過酷で長かった分、タグラング・ラの絶景はご褒美みたいな感じでした。ここを過ぎると気持ち的にはレーまであと少しです。※実際はまだ3時間近く走ります。

タグラング・ラ〜レー(Leh)

タグラング・ラをすぎると一瞬未舗装になり道路が悪くなりますがその後は舗装区間になり、高度もどんどん下がっていきます。
1時間ちょっと下るとぐねぐねした山道から比較的まっすぐな道になっていき、沿道にも人家が見え始めます。
このあたりで日が暮れたため周囲の状況は分かりませんでしたが、特にトラブルもなく進んで、22時前にはレーのバスターミナルに到着しました。

まとめ

文章では表しきれませんでしたが、道路状況は想像を絶するぐらい悪い上にほぼまる一日バスに乗るので正直かなり辛いです。自分も2回は通りたくなかったのでレーからの帰りは飛行機を選択しました。
でも、沿道はそれに見合うぐらいの絶景続きであり、1回は通ってみる価値があるんじゃないかなと思います。
気になる方はぜひ通ってみてください。

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