見出し画像

マレーシアのゴーストタウン フォレスト・シティ

マレーシア

 巨額の負債を抱え、先行き不安が深刻化している中国不動産大手の碧桂園(へきけいえん)は、2023年12月期決算を3月末までに公表できず、4月2日から香港市場で株式が取引停止となっている。

 2016年、碧桂園はマレーシアにおけるフォレスト・シティのプロジェクトを発表。中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路構想」にもとづいた、1000億ドルの巨大プロジェクトだった。環境にやさしい、マレーシアのこの未来都市には百万人近い人々が住むことになるだろうと予想されていた。

 中央、マレーシアは東南アジア、マレー半島の先端に位置する。首都はクアラルンプール ( Kuala Lumpur ) 。

 上にタイ、下にシンガポール。右の海は南シナ海。左はマラッカ海峡をはさんでインドネシアのスマトラ島。

 シンガポールとの国境が表示されている。

 中央に見える。

フォレスト・シティ

 衛星画像は2024年3月26日。ジョホール州南部。左上はプーライ川、河口には広大なマングローブ林が保護されている。シンガポールとの間の海はジョホール海峡。ズームイン。

 高層ビル群が見える。

プロジェクトの建設

 埋め立て工事は2014年から始まった。海や川の汚染といった環境問題、漁業問題などで、プロジェクトは中断することもあった。
 プロジェクトが当初から主要なターゲットとしていたのは、海外の不動産投資ブームに沸いていた中国国内の顧客からの購入だった。物件の価格はそれを見込んで高額なものに設定されていた。ところが、中国政府が国外への資産持ち出し、海外投資を制限すると、購入者は撤退・キャンセルし、売り上げは急速に悪化した。

2017年

 衛星画像は10月28日。右に伸びている埋め立て地は他の人工島を造成するためのものか。

 衛星画像は12月22日。縮小している。

2018年

 衛星画像は1月21日。人工島1つ、第一弾のみのプランに変更か。

 参考衛星画像は2月10日。建設工事途中の様子。

 衛星画像は8月29日。当時のマハティール首相は、ほとんど中国人のためのプロジェクトじゃないか、として反発を強めた。

2019年

 衛星画像は3月27日。

 衛星画像は9月8日。年末の段階で、目標の70万人に対して居住者は500人。

2020年

 参考衛星画像は1月26日。

 衛星画像は10月2日。新型コロナウィルスのパンデミックによる移動制限が行われるようになると、テナントは営業停止、撤退し、開発関連業者も従業員を解雇し始めた。

2021年

 参考衛星画像は2月28日。

 衛星画像は10月27日。

2022年

 衛星画像は5月10日。不動産の販売状況は決定的に悪化し、ゴーストタウンと呼ばれるようになった。

 参考衛星画像は10月28日。人が住んでいる気配がない。周辺も荒れ果てている。

 高層マンション群。全部で60棟以上。

 ウォーターパーク周辺。左下は公園エリア。右は人工ビーチ。

 左はタワービル。右は免税店などが入るショッピングサイト。免税店には近くの都市ジョホールバールからもアルコール商品を買いに来る人が多いそうだ。中央の青いところはプール。

 中央は戸建てのヴィラ群。100戸以上。左の建物群は全寮制のインターナショナル・スクール。

2023年

 衛星画像は5月20日。

 衛星画像は9月27日。

 フォレスト・シティの居住者数については70万人に対して9000人というのが公開されている数字だが、70万人というのは4つの人工島が完成した場合の計画数である。

 マレーシア政府はフォレスト・シティに対して「金融特区」構想を打ち出しており、さまざまな優遇措置を提示して海外からの投資を呼び込もうとしている。なにしろこのプロジェクトには、マレーシア国王のジョホール州スルタンが関係する企業が参画していて、今後の展開が注目されている。
 中国の不動産危機はまだまだ続きそうだし、習近平指導部がどう出るのか、見ものだな。

注記)
a.衛星画像は、欧州宇宙機関 ( European Space Agency : ESA ) が運用する COPERNICUS ブラウザからスクリーンショットしたものを使用しています。.
b.地図画像・参考衛星画像は、ESRI が運用する World Imagery Wayback からスクリーンショットしたものを使用しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?