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中国 鬼城(ゴーストタウン) オルドス市カンバシ新区

中国

 日本で廃墟といえば草藪に埋もれてボロボロになった施設、屋根や壁が崩れ落ちている家屋を思い浮かべるよね。ところが最近の中国では、完成したばかりの高層マンションや商業施設が廃墟になっている。周囲には真新しい道路が伸びているのだが、車が走っていない。入居者、住民がいない都市が各地につくられて、ゴーストタウンだ、鬼城だと騒がれているのだ。鬼城と言われると、鬼つまり妖怪や幽霊の類いが跳梁跋扈している街をイメージするのだが、怪談動画の見すぎだろうか。
 日本だったら廃墟は即、不気味な心霊スポットになってしまうだろう。そんな廃墟には心霊現象大好きな人たち、肝試しの若者らが訪れるようだ。一部のマニアの人たちには、不動産の訳あり物件は普通の物件よりかえって人気があるらしいしね。
 ただし中国の廃墟、訳あり物件はあまりにもバブル、大きすぎ、広すぎな気がする。

 上のほうからロシア、モンゴル、中国。オルドス市のある内モンゴル自治区はモンゴルと国境を接している。

 中央あたりにオルドス市。左から上はゴビ砂漠。

 中央にオルドス市。同市の北にクブチ砂漠、南にムウス砂漠。

 オルドス市はオルドス高原にある。石炭をはじめ鉱物資源が豊かな土地である。以前は高品質なカシミヤで知られていた。

オルドス市

 衛星画像は、2023年9月30日。マーカー地点はカンバシ新区。オルドス市のあたりは黄河が大きく北に回りこんでいる。わかるだろうか。

 上の画像をデータ処理した。左上から右下にかけての青い線が黄河である。

 右上が旧市街、東勝区。

 ここがカンバシ ( 康巴什 ) 新区。中央下にオルドス空港。ズームイン。

カンバシ新区

 石炭開発による経済成長、石炭バブルの資金流入が背景にあったとされている。新区は100万人都市として、2004年から建設が始まった。東勝区から30キロ離れた草原に、高層マンションなどの住宅、大型ショッピングセンター、スタジアム、美術館、図書館・・・空港などが次々と姿を現していった。
 ところが、2008年のリーマンショックに端を発した世界的な金融危機が発生、中国でも不動産市場が低迷。中国政府の大規模経済対策によって住宅価格は持ち直すものの・・・。

2010年

 参考衛星画像は、2010年7月1日。
 アメリカの「タイム」誌は、新区の高層マンション群がゴーストタウン化していると論評した。この記事によってオルドス市カンバシ新区は、世界最大のゴーストタウンとして知られることになった。

 2012年、世界的に脱炭素の動きが高まり、石炭価格が急落、石炭マネーによる経済成長が崩壊。地方政府主導の新区開発が行き詰まる。不動産バブルもはじけた。
 2014年の住民は10万人。

2016年

 参考衛星画像は、2016年3月1日。住宅の入居率は2%。建設プロジェクトが放棄され始める。

 2017年の住民は15万人。

2019年

 参考衛星画像は、2019年10月20日。

2022年

 参考衛星画像は、2022年10月4日。

 ウォーターフロント地区。ズームイン。

 人いるの?車が少なすぎる。

 高層マンション群。

 公共施設。左のメタリックな建物がオルドス美術館。すぐ隣がオルドス図書館。右の円形の建物は劇場。

 居住者は中心部にまとめられているようだ。人口の目標は30万人に修正されているという。

オルドス空港

 衛星画像は、2023年9月30日。

2010年

2019年

2022年

 参考衛星画像は、2022年10月4日。

 ゼロコロナ政策が急転換する直前だから、一般駐車場はガラガラだ。

 クレーンが停止して工事が中断したままのオフィスビル。途中の階までしか窓が取り付けられていないアパート。典型的な中国の鬼城の風景だ。でもどういう事情なのか、不自由な環境でもそこに住んでいる人たち・・・。語られる言葉には鬼気迫るものがある。誰のせいでこうなったのか?不動産会社?地方政府?中国政府?ほんとに鬼城なのかもしれない。

注記)
a.
衛星画像は、欧州宇宙機関 ( European Space Agency : ESA ) が運用する EO ブラウザからスクリーンショットしたものを使用しています。.
b.参考衛星画像は、Esri が運用する World Imagery Wayback からスクリーンショットしたものを使用しています。


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