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二拠点生活その4(キーマンに逃げられない為の工作について)

社長が失踪(後に、最後の思い出と思い家族と海外に二週間行っていたと判明)したその会社で学んだのは、箱だけ整理したところで人が逃げたらお終いだという事だった。

それと同時に思ったのが肩書が人を育てる事もあるって事だ。

新参者は裏方に回る方がやりやすい。これも経験から学んだ。最初に社長に頼んだのは、若いけれど古参の社員を取締役にする事だった。

正直、その時点では頼りない男にも思えたが、兎に角個人商店から抜け出すには手を打たなければいけなかった。

「仮に社長に何かあったら、今の社員はどうするのか。社員の家族も含めれば大勢が困るのだから会社にもう一人取締役が必要だ」なんて話を折に触れ耳打ちして実現した。

まあ、裏のテーマは逃げられたら困るって話だ。

その頃にはもう一人キーマンが出てきた。支社の営業で名目は支社長。先に取締役になった彼より一回り上で、元々は個人営業は得意だったが、社長の影響で法人営業で成果を出し始めていた。

だが、この手の人材は実は厄介である。数字が取れる=見合った報酬を欲しがる。当然の事だけれどその頃の会社には彼が満足できる報酬は払えない状況だった。

そのままでは遅かれ早かれ辞めるだろうと思った。社長は感じていなかったけれど。

「社長、今一番ヤバそうの人材ってわかります?このままだとあの子辞めちゃいますよ。法人営業覚えたし自分が他でも稼げるってわかっちゃいましたからね」「そうか…そうだよね」

どうしますか?って事で彼も取締役にしたらどうかと進言した。まあ、肩書大好きって事はわかってたし。反面、私にとって厄介な存在になるであろう事もわかってはいたが仕方がない。結果、図に乗ってやらかす事が多いのと、私にとって唯一の抵抗勢力なのだがまあ構わん。

そんな存在もいないと面白くないし、そもそも会社を牛耳る気など毛頭ないのだ。

後にちょっとした騒動もあった。酔っぱらった彼の部下が「佐多さんに役員にしてもらったくせに…」とか言ったらしい。

どうやら、彼を役員にする際に社長がその部下にヒアリングした流れで私の進言の事を聞いていたみたいだ。

そもそも彼は私が嫌いなので、相当お気に召さなかったらしい。会社を辞めるぐらいの勢いで社長に電話。「仕事が出来るから役員にした方が良いんじゃないかって話はされたけれど、それが気にいらないっておかしいだろ?」って言ったら納得したって社長から聞かされた。

気持ちはわからんではないが、色々大変なのだ。

つづく

元経営者、某サイトで大賞→小説出版歴有り。現在、金融関連役員(中小企業)コンサルティングも行う何でも屋。証券外務員一種。基本…ただのオッサン