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「MCバトルって?そもそも何を競ってんの?」って思ってた人が読み終わる頃にはバトルヘッズになってるNote

フリースタイルダンジョンが終わってバトルブームも終焉するかと思いましたが、いまだに熱を持つMCバトル。
めちゃくちゃ面白いコンテンツなのですが、やっぱり
・何を競ってんの?
・どこが凄いの?
・なんか敷居が高くて取っ付きにくそう…
っつーか怖い
なんて思ってる人も多いと思います。

まあね、イカツイ風貌のにーちゃんねーちゃん達がマイク使って怒鳴り合ってたらそりゃ引きますよね、最初は。
大丈夫、その感覚は普通です。

東京で一番メンチが怖いと噂のSIMON JAPさん
会場もアングラだしこんなの絶対ヤバイやつじゃん…

ただ、ちょっと危なそうなところに面白コンテンツが詰まってる…
なーんてこともこの世の真理だと思うので、折角だから解説記事を書いてみようと思った次第です!

MCバトルってなんなんだ?ルールや仕組みについて

日本でのMCバトルの始まり

日本では90年代〜2000年代初頭にかけて、海外から輸入されてきたHIPHOPのカルチャーがブームになりました。
MCバトルはそんなHIPHOPカルチャーの1つで、ビートに乗せてラップをしながら、対戦相手をDisりあう「戦い」です
当時一番大きい大会だった、BBOY PARKの会場ではボクシングのようにフェンスの貼られたリング上で言い争ってましたね!
時に乱闘寸前までバチバチにぶつかりあう様子は今見てもスリリングです!

BBOY PARKを3連覇したKREVAさん。
日本のラッパーにとってはレジェンドです
それにしてもこの画像、人相悪いな…(現在はダンディなイケオジです)

勝敗は何で決まるの?

大会にもよりますが、基本は以下の2つで決まります!

・オーディエンス(=お客さん)が「勝った」と思った方に声を上げて、より支持を集めた方の勝ち
・審査員達が勝敗をジャッジし、より投票の多かった方が勝ち

実力が拮抗している場合は判定をつけず、延長戦になることも!
お客さんとしてただ見ているだけでなく、試合の判定に参加できるところも面白いですよね!

スタイルウォーズってなに?

MCバトルでは「スタイルウォーズ」という言葉がたびたび登場します。
試合に出るMC達はそれぞれ異なるスタイルを持っており、例えば

・韻に特化して踏みまくるスタイル
・相手と会話し、論破して闘うスタイル
・卓越したスキルとフロウで会場の空気を味方につけるスタイル
・自分の背負ったバックボーンをもとに、オーディエンスに訴えるスタイル

など!
異なるスタイルを持つMC同士が対面してぶつかり合った時、どちらがより支持されるのかで勝敗が決まります!

また、ラップの内容については
・韻を踏むスキル(ライム)
・聴き心地のいいメロディを乗せる(フロー)
・相手を打ち負かす論戦の強さ(ディス)

などの技術的な部分が勝敗を分けることも多々あります。

中にはこんな変わり種も!
スタイルウォーズがかっこいいのは、
それぞれが信念を持ってマイクを握るからこそ!
(このラッパーは「我二郎MIC」という方です)

まあ正直これだけで記事が一本かけちゃう内容なので、ここではざっくり「いろんな個性があるんだなあ〜」「ラップの技術って結構奥が深いんだなあ〜」ぐらいで大丈夫です!

バトルをみる上での醍醐味 - どこに注目すればいいんだ?

ここからは実際のバトルを見てみながら、注目ポイントを解説していきたいと思います!
まだ耳が慣れていない方のため、字幕付きのバトルを中心に選んでみました!
(書きづらいので各MCの敬称は省略します!ごめんなさい!)

会話の内容

SILENT KILLA JOINT(SKJ) vs Amateras

★解説
Verce1:
過去にLEGALIZEという大会でも戦っている両者。
「今日はRapのスキル、音楽で勝負しに来ている」というSKJに対し
「ラバダブskillの披露じゃ失笑、本物のMCは言葉を刺すんだよ」というAmateras。
ちなみにラバダブとはレゲエの用語で、即興で持ち歌をアレンジして乗せる技法ですね!

Verse2:
「ノリ方が日本のお前らと違う、俺はUSの音楽をずっと聴いてきた」と相手をDisるSKJ。バース全体を通して非常に遊び心もあり、聴き心地の良いフロウで翻弄します。
対するAmaterasのアンサー「US?ただのリスナーじゃないすか?」もなかなか良い返しだと思います。自分に自信があるから日本もUSも関係ないというスタンスなんでしょうか。

Verce3:
ただのリスナーとDisられたことに対しSKJは、自分たちは一生HipHopに魅せられたKidsのままだとアンサーを返します。
そして聴いている音楽から様々なものをサンプリングし、オリジナルを作るんだとも。
(※:HipHopでは既存のものを引用して新たな作品を作ることが「サンプリング」として認められています。いわゆる「パクリ」とはちょっとニュアンスが違うよ!)
それをAmaterasは「俺はサンプリングしたものを自分のものにする」と言い放ち、「馬鹿ばっかだ全く」と落とします。
これ、この試合でバトルビートとして使用されている「洗脳」という曲の歌詞を"サンプリング"しているんですよね。
文脈に沿った返しで、上手いなあ〜。

判定の結果、勝者はSKJ!
Amaterasも一歩も引かない、良いバトルだと思います!

各MCの背負ったストーリー

言xTHEANSWER vsMC☆ニガリ

★解説
過去に高校生ラップ選手権(=高ラ)で競い合い、ライバル同士だった二人。
特に第7回では決勝戦で戦い、その際は僅差でニガリがANSWERを倒して優勝しました。その後ANSWERはしばらくバトルからは距離を置き、音源を中心に活躍します。
そこから数年。久々にANSWERがバトルに参戦!さらに相手はあのニガリ!ということで、ANSWERにとってはリベンジマッチになるわけですね。これは熱い!

Verce1:
先行はANSWER。久々の対面に触れつつ「今日だけは負ける気がしない」と宣戦布告します。
すっかり若手最強格とも目されるニガリに対し、「ニガリに勝つ?浅はかだ?でも俺だけは俺を信じてやらなきゃな」と韻を踏みながらぶつけるANSWER。かっこいい!
対するニガリは流石の貫禄。「カードだけ見て湧いとけ、実際ラップやらせてみ?相手じゃねえ」と、数年間で培ったスキルを武器に一蹴します。

Verce2:
負けじと食らいつくAnswer「今日だけはお前のこと逃がすかよ」とリベンジに燃えていますね!
たまに昔を振り返ると吐露し、当時流行していた3連のフロウを畳みかけます。
ニガリはこれに関しても「そのリズム倍でとってるやつ…」と呆れた感じでさらっと受け流します。
スキルの 
わかってるん 
言xTHEAN SWER(さー)
このブンブン カッ
乗れるかどう 
と、間を開けたフロウに気持ちよく語尾を合わせて乗せていきます。これ即興でやってんのはマジでヤバすぎる
しかし会話としてはイマイチ相手を刺しきらない感じはありますね。

Verce3:
曖昧な返事をするニガリに対し、すかさずANSWERは「調子悪かったから負けた、とか言い訳するなよ」と攻めて行きます。
アイドル的な人気で一時期DisられがちだったANSWERは、それでもまだステージに立っていることを強調。
「何度も心は折れたしな、でもこれ(MCバトル)流行らせたの俺たちだ
は、ライムとしても綺麗ですし、かつて若手MCの筆頭としてバトルシーンを盛り上げたANSWERが言うことで強烈な説得力がありますね!
動画の編集が一瞬、高校生ラップ選手権風になるのも熱い!
ニガリは「(ステージに)立ってるだけじゃ自慢になんねえ」と返し、「俺に勝ちたきゃ指折り数えて待て」と、今のANSWERでは自分の相手にならないと挑発!「俺が一番だって分かってる」と言い放つ通り、若手最強格は伊達じゃない!

判定の結果は延長!
同世代のMCとしてバトルシーンを牽引してきた二人。
バトルから離れ音源を通じてシーンにいたANSWER
音源も出しつつ、バトルにも出続け実力を磨き続けたニガリ
そういった裏側のストーリーも踏まえると、このバトルってなんだか感慨深いものに見えませんか?
このように各MCが背負った物語が反映されるバトルは見応えありますね!

スキル

ONO-D vs DOPEMAN

★解説
字幕はついていないのですが、めちゃくちゃヤバいバトルなので紹介させていただきます!
両者とも卓越したラップスキルが持ち味のMCですが、このバトルはまさに会話など度外視したスキルのぶつかり合い!
変幻自在のフロウで会場中を巻き込み、まるで音源のようなクオリティでフリースタイルします。
まだ慣れていない方はこれまでのバトルと比べて「なんとなーく聴き心地がいいなあ」「なんかお客さんが湧いてるなあ」と思っていただければOKです!

Verce1:
先行のONO-Dはいきなり完璧にビートに合わせて華麗にラップを始めます
リズムキープが上手いのと、音を抜くタイミングが絶妙ですね!
8小節が経ち折り返しのスクラッチが入ったタイミングで、「まだまだ上に上がるためやる」と、これまでと全く異なるフロウを乗せて行きます。
受けて立つDOPEMAN。ONO-Dがリズミカルに乗せていたのに対し、あえて最初はスローに乗せることで会場の空気を一気に自分のものにします
段々とギアを入れて、自分のスタイルの凄さを強調していく様子は、対戦相手のONO-Dも思わず笑ってしまうほど

Verce2:
尚も続くフロウ勝負。今度はONO-Dもスローに乗せつつ、裏声をテクニカルに入れ込む!上手すぎる!
この二人はステージングも上手いですね〜、音に身体全体を使って乗っている感じ、引き込まれます
さて、多彩なフロウを披露したONO-Dに対してDOPEMANは「色んなの多用しすぎて音楽じゃない」「こいつがやってるのただの自己満」と煽ります!
特徴的な声も相まって破壊力がすごい。
これ、自分にラップのスキルがあるからこそ映えるセリフですよね。
先述の通りONO-Dのスキルは文句なしなのですが、「確かに"アート"なのはDOPEMANなのかも」と思わせる説得力が彼にはあります
音抜きを使ったり、リズミカルにトラップのフロウを乗せるなどこちらも半端じゃないスキルを見せつけて試合終了!

判定の結果、勝者はONO-D!!
これまで紹介したバトルとはちょっとテイストが異なりますが、お互いがフロウに重きをおいたスタイルのMC同士だと、こんな感じで音楽的な要素の強いバトルが生まれるんですね!
いやー甲乙付け難いバトルでした。

まとめ

どうだろうか!ここまで読んでくださった方には魅力が伝えられてる…はず!
関連動画がMCバトル系に染まり始めたら、あなたも立派なMCバトルヘッズですよ!!
最初のうちは聞き取れない方が多いと思いますので、字幕付きのバトルを中心に紹介させていただきました!
今はよく分からなくても全然OK、界隈でよく使われるスラングなどを覚えていくと段々と聞き取れるようになってきますよ!最後に紹介したONO-D vs DOPEMANのバトルも、実はフロウだけじゃなく案外面白いこと言ってるなーっていうのがわかるようになります!

こんな感じで少しでも興味湧いてくれたら書いた甲斐があるというものです…!

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