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中学受験で英語とどう付き合う?

今回のnoteでは、144校にまで増えた中学受験の英語採用についてです。中学受験で英語を選択すべきかどうかについて話をしたいと思います。

空振りとなった2020年の4技能試験
2020年、日本はオリンピックで多くの国からゲストを迎え、国際色豊かな一年となるはずでしたが、コロナ禍でゲストを迎えるどころか、スポーツイベントさえできないような状況となりました。実は2020年度は、英語教育においても大きな意味を持つ一年になるはずでした。4技能試験が大学入学共通テスト受験者に科され始める予定だったのです。それが文部科学大臣の発言を機に見送りとなり、2024年という延期期限が示されただけで、具体的に進んでいる話は聞きません。今年の高校卒業生はある意味「4技能1年生」と長いこと言われ、結局は大々的にそれは行われなかったので、4技能に振り回された学年でした。

それでも教育の国際化は進む
4技能導入の背景には、そもそも日本の大学が国際化しなければ生き残れないという切実な問題がありました。
東京大学をはじめとするTOP大学たちは、世界ランキングに晒され、順位を上げるためには国際化を進めないとアジアのTOP大学に勝てません。また中位から下位の大学は、定員割れの現実の中で海外から留学生を集めることに生き残りをかけます。これがどのように大学受験に影響を与えているかは項を改めますが、大学側には英語ができる学生を集めたいというニーズは切実なものがあります。大学受験で4技能試験の導入は見送られても、依然として英語の比重は高く、学校によっては4技能に近い試験を実施しています。

英語を採用した144校の中学校の狙い

近年の大学受験の英語偏重の流れは、中学受験にも大きく影響を与えています。小学校での英語の教科化が発表された、2014年度あたりから英語を受験教科にする学校の話題は出てきていましたが、当時14校だった英語採用校の数は、今年はなんと144校まで増えました。これは、英語が大学入試で重視されている傾向の中で、早くから英語ができる生徒を囲い込み、彼らにいい英語教育を提供することで大学進学実績で結果を出して、学校の評判を上げることで生き残ろうとする学校の狙いが現れています。

慶応湘南藤沢中学の英語受験科目に

2010年代中盤から始まった中学受験での英語試験の導入の流れでしたが、それでも導入したのは広尾学園や三田国際に代表されるような、国際化と共学化を進めた新興の中高一貫校や、英語重視で生き残りをかけたい中位以下の学校が中心でした。しかし、2019年より慶応湘南藤沢中学が英語を導入したことにより、誰もが意識するような大学附属校のTOP校でも英語を採用しました。このインパクトは中学受験を考える家庭で、英語とどのように付き合っていくべきかを考えさせる契機になると考えられます。
https://www.syutoken-mosi.co.jp/blog/entry/entry002133.php
(英語入試導入校一覧:首都圏模試センターより)

中学受験で英語を採用しない進学校の狙いは?

さて、ここまで中学受験での英語導入についての動きを見てきましたが、英語を選択することの是非について考えてみたいと思います。
まず御三家と呼ばれるような学校は、依然として国算理社の4教科を受験科目としていますが、この背景には早くから国立大学入試にむけた準備の意味もあります。国立大学のTOP校を目指す場合は理系文系に関わらず、センター試験では5教科が必須となり、中学受験で4教科を学ぶメリットがあるようにも思えます。
しかし、中学受験終了まで英語を取り組んでいなかった生徒は、他教科でのアドバンテージがある反面、英語に対しての苦手意識が生まれやすいという問題があります。

小学校高学年は英語を学ぶ黄金期
中学受験は小学校5、6年生の時に本格化を迎えますが、この10歳から12歳という時期は、言語習得の黄金期の最後に当たる時期です。小難しい話は避けますが、臨界期仮説と呼ばれる考えによると、聴覚の発達のピークの最終期を迎えるこの時に外国語を学んでいるのと、そうでないのとでは発音習得に大きな差が出ると言われています。正しい発音が習得できるかどうかは、スピーキングだけでなく、リスニング力やリーディングのスピードにも大きく関わる重要事項であるだけに、この時期に英語を勉強しないことのデメリットは小さくありません。

結論:中学受験で英語を選択するべきか

2014年には英語を受験科目に選択する学校の数は、14校でした。当時であれば英語を選択すること、つまり理社を選択しないことのリスクは、小さくありませんでした。しかし、現状では144校もの学校が英語を受験科目として採用し、慶応湘南藤沢のようにレベルの高い英語を求める学校も増えてきています。この状況においては、英語を選択しないことで逆に中学入学後の英語に対するハンデを負うことのリスクが大きくなっています。ただ、問題点もあります。小学校の現場で、受験レベルの英語が満足に教えられていない中で、高い英語力を受験生に求めることの是非はもっとも大きな問題でしょう。ただ、中高の主要科目であるだけでなく、英語ができるかどうかで人生で出会えるチャンスの数が大きく変わる現状において、中学受験を英語力で勝ち取ることができれば、その後の人生における英語に対する自信を持つことができます。中学受験で英語を学ぶことのメリットは、志望校に合格する以上のインパクトがあるかもしれません。

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