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ここは水族館かよ 〈石垣島〉

(2020年9月)

石垣島で夏休みを過ごした。ここ数年なぜか年末年始は石垣でというのが自分の中で定番化しているのだが、夏はこれまたなぜか海外に行かなければ気が済まない気がするため、この時期の来島は初めてなのである。当初はお金持ちダイバーの友人KGさんとメキシコ・ラパスでのダイビングを計画していたのだが、コロナのご時世で早々に断念、シフトしたプランBであった。しかしプランBがプランAになれば全力で楽しみになるもので、ずいぶん前からワクワクが止まらなかった。

ショップはこちら、シートリップ。元気な関西おじさん、太造さんのお店だ。KGさんからは〝太造フリーク〟と揶揄されるのだが、太造さんのガイドが好きなのはもちろんのこと、奥さんの昌子さんや太造ガールズ(女性ガイド陣)、常連のお客さんたちの雰囲気も大好きで近ごろは浮気なしの一択だ。とにかく毎日何かしら笑えるのがたまらなく楽しい。

今回は5日間のダイビングを総括して、萌えたポイントベスト3と、悶えた生物ベスト5を語りたいと思う。


萌えたポイントベスト3

1. 御神崎

ここ数年で復活したという珊瑚がとにかく素晴らしい、海中お花畑のようなポイントだ。澄んだ海の浅場にきらきらと太陽が差し込む光景に、「水族館の水槽に入る」という夢が叶った気分になる。しかもこれだけ広い水槽であれば言うことはない。

いつ見てもちょうど良い愛らしさで〝会いに行けるアイドル〟感のあるハタタテハゼがチロチロとそこらじゅうにいる。

クマノミオールスターもすごい。ハナビラクマノミにカクレクマノミにクマノミにと、まるで坂道シリーズ合同オーディションのような華やかさである。

そう思ったら、彼らのおうちの下にはコホシカニダマシがいたりする。イソギンチャクの裏面(?)のピンクの水玉模様が草間弥生デザインのようで心に残る。

そのほかアオウミガメやイシガキカエルウオやコクテンフグなど、一か所で「これでもか」な生物多様性。これが石垣島か、と天啓を受けた気分であった。

2. 大崎

御神崎と同じく絶品サンゴが楽しめるポイントなのだが、私の推しは「カメハウス」だ。その名の通り亀の寝床が無数にあり、高確率で出会うことができるエリアだ。しかもだいたい寝ているか寝ぼけているのでかなり近寄れる上、時には息継ぎをしに行く姿を見上げることもできる。亀好きにとっては垂涎のポイントなのである。

おネムすぎて物足りない気もするが、らしいと言えばらしくて癒される。もちろん亀以外のカクレクマノミのようなアイドルたちにも会うことができる。

ちなみに見上げるタイプの亀さんは、カメラの設定が間に合わないとこんな感じになってしまう。ちっさ!これは映えない。

3. リサコシティ

今回唯一マンタに会えたポイントだ。マンタ発見とともにボートが急停止し、そのままエントリーするとホバリング中の数枚に出会えるという具合だ。ガイドのリサコちゃんに「ここリサコシティっていうんだね」と言ったら「えっそうなんですか?」という反応だったので、本人すら知らない間にできたホヤホヤオリジナルポイントであることは間違いない。残念なことに一回しか行けず、しかもその一回はカメラのバッテリーが切れていたためノーフォトである。痛恨の極みだ。


悶えた生物ベスト5

1. コクテンフグ

通称イヌフグとも言われ、怒って膨らんだ時の破壊力たるや凄まじい…とはアクアパーク品川のくだりでも書いた通りだが、約2年ぶりに生でその姿を拝見できた。とにかく抜群に愛らしくコミカルだ。

感動しすぎて、ログブックに描き残してしまった。

2. 隠れられないカクレクマノミ

そんなヤツがいる、と聞いて、そんなヤツおるんか、と思った。しかし百聞は一見にしかず。本当に隠れられていなかった。家であるイソギンチャクが小さすぎるのだ。それでもなんとか隠れてやろうという意気込みだけは伝わってきた。ナイスファイトである。

3. おネムな亀さん

カメハウスで出会った一体。少し小さめで、木陰でまどろむ姿にキュンとなった。何度か目が合ったので、なんとなく挨拶と自己紹介程度のコミュニケーションは取れた気がする。

4. 水玉模様の小さい子たち

御神崎の草間弥生的イソギンチャクしかり、石垣の海では水玉模様が流行っていた。特に小さな子たちの水玉模様は萌える。

ピンポン玉大のミナミハコフグベビー。

5cmあるかないかのノコギリハギベビー。

小さいと言うには長めだが、つい必死に撮ってしまうチンアナゴも水玉柄だ。

ちなみに小さくも可愛くもないが、カクレクマノミの撮影に夢中でイソギンチャクに刺されてしまった私の右腕も水玉模様である。

5. イシガキカエルウオ

石垣と言えばイシガキカエルウオ。ニッコリ笑ったようなおとぼけ顔がたまらない。何とか映える写真が撮れないかと粘ったが、絶妙な場所にいるイシガキカエルウオを見つけ、逃げられないうちにピントを合わせて撮るというもろもろの技術が私にはなかった。この課題は次回に持ち越しである。

番外編 石垣空港のハリセンボン

空港のど真ん中に鎮座する水槽に、一匹だけハリセンボンがいる。ハリセンボンといえば基本的に可愛いのだが、石垣島の玄関口にいるにはあまりにもシャイな雰囲気に目が離せなくなる1匹である。しつこく追いかけていると、検温をしている空港職員の人に話しかけられた。「好きなんですか?」「好きなんです」「ハリセンボンって怒ると膨らむんですよ」「知ってます」。そんな旅先の何気ない会話であった。


おまけ。アフターダイブ3選

1. 呑み食い

石垣島は美味しいものが多いので、何はともあれ食べ歩き飲み歩きだ。今回は…

シートリップでお友達になった素敵女子ダイバーAさんに誘っていただいた島イタリアン。トマトしか見えないブルスケッタと車海老のパスタがとても美味しかった。

昨年末にイノシシ刺を食べに連れて行っていただいたお店でハマったグルクンのこども(ジャコと呼ばれている)の唐揚げ。

石垣牛とほぼ同じ?きたうち牛の特上カルビ。1枚目が天国、それ以上は少し苦しい中年の胃袋。

2. 貝のアクセサリーを買う

シートリップのイベントでこちらのお店の3,000円チケットをいただいたので、せっかくだから何か買おうと訪ってみた。

サクッと見てパパッと買おうと思っていたのに、1時間以上滞在してしまった。オーナーさんの貝トークが異常に冴えていたのだ。学んだことは、貝のアクセサリーはお洒落するために着けるものではない、ということだ。沖縄では昔から貝の力が信じられていて、夜光貝などの螺旋状で先の尖った貝は魔除け、シャコ貝は幸せを呼び込む、蝶貝は危険から身を守ってくれるといったパワーがあるのだとか。島人同士は今でも貝を贈り合う風習があり、家の玄関などにそれらの貝を置くのだが、出かける時にもそのご利益を得るためにアクセサリーとして身につけるのだそうだ。パヤパヤとした動機で訪れた自分を恥じた。そしてそういうことならと、赤いサンゴのブレスレットと、シャコ貝のアンクレットを購入した。ちなみにサンゴはその生態から〝チャンスを掴む〟と言われているらしい。

そして、家に帰ったら置き方を間違えていたシャコ貝を裏返し、いつぞや誰かにもらったまま置きっぱなしになっているスイジガイを玄関に吊るそう、と心に誓った。貝への造詣を深めるためにもまた訪問したい。

3. 島へ渡る

石垣島は周辺諸島へ渡る海の玄関口だが、おすすめは10分で着いてしまう竹富島だ。テーマパークのような雰囲気、そしてそれ以上にパーラーぱいぬ島のかき氷を求め、到着日や帰京日など少し時間があるとフラっと訪れてしまう。今回はコロナ後初ということもあり恐る恐る渡ってみた。船にはそこそこの乗客がいるのに集落は閑散としていた。

お店もほとんど開いていない。目当てのパーラーぱいぬ島も開いていない。

やらぼーも開いていない。祈るような気持ちで竹の子を覗くと、開いていた。そういえばこんなことが何度かあった気がする。竹の子は神なのか。

そばとビールをいただいた。

一人でそばをすすっていると、近ごろ見ないアンティークで文化祭的な占いがあった。心理テストを目で追っているうちについ100円を投入してしまった。

なんにせよ、何もなくても青い空と白砂の小道とオレンジ色の屋根に乗るシーサーを見ているだけで癒される島である。

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