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かなことエビとエモい海 〈田子〉

(2020年9月)

2年ぶり2度目に西伊豆・田子で潜った。前回同様、友人のお金持ちダイバーKGさんとの1泊2日ダイビングだ。なぜならガイドはこの方↓

元タオ島ガイド、その後モルディブで船乗りガイド、今はコロナにて一時帰国中の加奈子さんだ。右と左、東と西など〝どっちがどっち系〟の概念が少し苦手かつ「アレをアレして」という説明が多いものの、細やかで面倒見が良くて明るく可愛く巷で人気のお姉さんである。

タオ島時代の加奈子さんと、ハイクオリティな加奈子マップ。新米ダイバーだった私はこのマップの大ファンになってしまった。

そんな加奈子さんのホームがここ、田子なのだ。「帰ってきた!」と聞くと、同じく加奈子ファンのお金持ちダイバーKGさんと訪うのが定番化しつつある。


土曜日朝8:30。コロナの影響はもちろんここまでしっかり到来している。マスク(ダイビングのではない方)は潜る直前まで船の上でも必須、毎朝の検温もマストだ。エイも検温しているんだから私もね、と思わせてくれるポスターが貼られていて、思わず見入ってしまった。フィンアートで有名なYURIEさんの作だそうだ。さすがである。

1本目 9:57 田子島

台風10号のうねりが入り始めていたので湾内オンリーかと思いきや、なんとか外海に出ることができた。先にフトネで潜って帰ってきたチームに聞くと「洗濯機の中にいるみたいで楽しかったよ」とのこと。楽しいのかそれは。自信はないが、とにかく貴重な外海だ。田子島にエントリーする。



うねりはあるが、洗濯機ではない。十分楽しめるうねりかもしれない。そういえば2年前の田子でうねり酔いに撃沈したKGさんは今日は大丈夫だろうか。アネロンは飲んできただろうか。心配になったが、すぐに忘れて海に集中した。

前評判通りウミウシはおらず、小物といえばイソギンチャクモエビぐらいにしか出会えなかったが、お洒落なシルエットのサンゴがアートのように立ち並んでいて萌えた。次のお絵描きか彫り物の際に参考にしようと思う。

2本目 12:28 白崎

2本目は無理せず湾内の白崎へ。エダサンゴ群生の北限が田子なのだそうで、まるで沖縄?というような景色が広がっていた。エダサンゴの隙間には死滅回遊魚(黒潮などで南方から流れてくるが冬を越せずに死んでしまう不憫なこども熱帯魚たち。しかし最近は冬を越してしまうらしくそれはそれで複雑)がチョロチョロとしていて非常に愛くるしい。しかし写真に収めるのは至難の技なので、あまり粘らず諦めた。

サンゴ の隙間からふと顔を上げると、アオリイカがいた。ファミリーのようでもあり、なんらかの共同体…例えば町内会の寄合のようでもある。

再びサンゴの合間を除くと卵があった。なるほど、合同結婚式ならぬ、合同産卵式のようなイベントだったのか。自然の神秘に感動しつつイカたちを見送る。

3本目 白崎 8:59

2日目は湾内限定、再度の白崎でコース取りを変え、30m近くの深場へ向かった。お金持ちダイバーKGさんのウミウシロスが飽和したため、セトリュウグウウミウシを探しに行くことになったのだ。それにしても今日はさらに透視度が悪い。数m先しか見えない中で加奈子さんがやけにぐるぐる回っている気がして、「また右と左が分からなくなったのか?」と多少訝しみ出した時、突然目的のケーソンが現れた。慌てて加奈子さんを見直していると、瞬く間にセトリュウグウウミウシを発見。リュウグウウミウシ系はどれもこれもサイケなイメージだが、こちらの方は特にすごい。バブル期のスキーウェアを彷彿とさせるセンスだ。もちろん私好みの色合いではないが、ここまでウミウシに会えなかった寂しさから、無心でシャッターを切った。

そしてお隣のケーソンでは極小のエビに出会った。TG4の顕微鏡モードでズームにしてみてようやくアカスジカクレエビと分かる小ささだ。ここが陸地でこれが虫ならならば見ているだけで痒くなるであろうサイズ感なのに、全く嫌な気はせずほくほくしてしまうのだから、海は不思議だ。図らずも非常にエモく撮れた。

4本目 尊之島 10:57

最後は浅めで楽しめる尊之島へ。サンゴイソギンチャクの隙間にまたもやエビ。カザリイソギンチャクエビである。これまたエモい。

なんなら、どこにでもいるサラサエビまでエモく見えてきた。

ついにはケヤリムシがファサファサ揺れる様まで激エモで見惚れてしまう。田子は、エモさ割増の海なのだろうか。

見上げるとソラスズメダイの群れもエモエモではないか。いやはや、驚いた。田子はエモさに溢れている。加奈子のポテンシャルなのか田子のポテンシャルなのか。とにかく楽しかった。


宿泊
宿泊先も2年前と同じく「民宿はかまだ」である。竜宮城のような夕食がとにかくすごいのだ。今日も舟盛りに煮付けに塩焼きにとメインだけでもチビりそうな量だ。ここまで来るともはや戦である。プオォ〜プオォ〜というホラ貝の音色が聞こえる気がする。はかまだパパのそこはかとないプレッシャーも感じる。……………(無言で貪る時間)。結果は惜敗である。中年の胃袋が、竜宮城に追いつかなかった。しかし思い残すことはない、そんな心待ちである。よい戦であった。

明くる朝食も戦いである。戦略の一番の肝は、多すぎる〝ご飯の友〟をどのようにハンドリングするかだ。あじの干物、アカハタのあら汁、納豆、生卵。

そして最大の刺客が「万能塩鰹」である。西伊豆の名物・塩鰹をふりかけにした謳い文句通り何にかけてもオールマイティなエースなのだが、特に卵かけご飯の醤油代わりに使うと悶える旨さなのだ。自身の胃の容量、このあとのダイビング、来週の健康診断などを考えつつ、ごはんをどの配分でどの友といただくのか。ここ数週間で一番頭を使った30分であった。

部屋からは穏やかな漁港ビュー。パパとママの繰り広げる〝はかまだ劇場〟も朝ドラのようなほっこり具合で、幸せな気分になる宿だ。


ランチ
ダイビング後は、はかまだパパ絶賛の「やます」へ。とにかくかき揚げを食え、とのお達しであった。

暑いので、冷たいかき揚げ天おろしそば(1500円)を発注。エビとイカがゴロゴロ入っいて感動した。田子のエビのエモさは蕎麦屋まで続いていた。あっぱれである。

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