マウント、それは君が見た光

数年前から認知され、よく耳にするようになった言葉、マウント。

私もよく、マウントを取られる
でも取られる度に「(なぜ、この私にマウントを...?七夕とかに素で世界平和とか書くこの私に?なんで?)」と思っている。

でも、マウントしてしまう気持ちも分かる。

人は本能的に勝てるのなら、誰かの上に立ちたいのだ。ひっそりとそういう意識みたいなのはあると思う。私も過去を振り返ると「(あれは完全にマウントしちゃってたな...)」と思う。

ただ変なマウントもある。「(何?そのへんな勝ち筋?何?)」と思うマウント。

前に働いていた会社で、私たちの部署だけグループ会社のオフィスに間借りしていた時期があった。
業種は全く違うが代表は同じだし、なんだかんだ大きな衝突もなく働けていたが、そのグループ会社には個性的な人が多かった。

そして、その個性的な人たちの変なマウントは主に女子トイレで発生していた。

ある夏の暑い日、トイレで化粧直しをしていると経理担当のAさん(30代)が入ってきた。

「お疲れ様ですー」というと「お化粧直し?外勤あると大変だよね。」と言ってきたので、

「そうなんですよ〜。今日は特に暑かったので、すぐに化粧がよれてしまいました。フハハ」と返した。

すると彼女は私の隣にピッタリくっついてきた。
私の顔をジロジロとみて彼女は言った...

「フッ...私、肌断食してるの。」と。

「(はだ?え?なに....トイレは...?)」と思った。

思わずうろたえてしまった。
肌断食、あまりにも聞き馴染みがなかった。

多分、うろたえる必要は全くなかったんだけど
震える声で「は、はだだんじんき?ってなんですか?」と聞いた。

彼女は信じられないくらい真っ直ぐな目で

「何も、しないの。化粧も、保湿も。」
と言った。

そんな...無謀な...

確かに、彼女は毎日ノーメイクだった。
すっぴんで過ごしていたし、なんなら服装も結構適当だった。

彼女は肌断食のメリットをたんたんと私に語り出した。一通り話終えると満足気な顔で私に

「だから、私はあなたみたいに化粧しなくても綺麗な肌を保てるのよ...ふふふ...」

「基礎化粧品もベースメイクも...私には必要ないのよ...肌断食だから...」と言った。

そして、用を足すことなくトイレから出て行った。

「(トイレは........?)」と思った。

混乱した私はしばらく肌断食について考えた。
でも直ぐに考えるのをやめた。なんか怖かったし...保湿大事だし...

彼女とはその後も同じオフィスで働いたが、先ほどの「ふふふ...」みたいな態度を取られる事は後にも先にも無かった。

ちなみに、あとからちゃんと調べると肌断食は意外とメジャーな美容法であることを知った。
怖いことじゃなくて良かった。

その数日後、同じくトイレで別の人からRMK(ブランド)マウントを取られたけどその話はまた次の機会に................

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