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『ねずみの初恋』2巻

よーしよしよしよし!

イチャつけイチャつけ!
死ぬほどイチャつけ!
こっちが羨ましくなるくらい、
「あーもう幸せになっちゃえよ」と思うくらい、
盛大にイチャつけばいい!

お前達がイチャつけばイチャつくほど、
後に酷いことは起こるのは確定で、
つまりは漫画が面白くなるのだから!!!!


いやぁー面白いです。

てかちゃんと漫画うめえ。
1巻の出だしだけ見たらアイデア一発の漫画家さんの可能性もあるのかなーと思ってたんですが、2巻読んで「あ、これはすげえ」と思いました。
イチャつきと暴力のバランスもいい案配だし、暴力シーンの見せ方もすげえ考えてるなと思いました。
見せ物としてのグロい殺しかたとかそういうエンタメとしての暴力じゃなく「ここにあるのはリアルな死なんだ」ということをどう読者に感じさせようか凄く頭を使ってる感じ。
特にあお君の初仕事の見せ方は細かい描写を何段階も踏んだうえで、最後の「ナイフを握ってる手」の描きこみが凄く良かった。
ただ「死体を見せる」「血を見せる」じゃなく、そこで「命がひとつなくなった」という重みを見せるのは漫画家さんだなぁという感じで凄く好感。

あとこの人「外すタイミング」が凄くいいですね。
特に遠景の大ゴマの使い方。
「居酒屋のシーン」と「公園のシーン」で普通の漫画のテンポで来て、いきなりパッと引きの画を見せるのすごくいいです。
しかもどちらも手前に関係ないモブの姿をあえて描いて、奥で主人公がアクションをしてるという、あの見せ方。
アレめっちゃいい。めっちゃいい見せ方。凄く好き。
映画的というかなんというか。
ムチャクチャ特殊な状況である筈のねずみちゃんとあおくんという主人公が、雑踏の中に紛れているという風に見える。
このふたりの周囲にもちゃんと世界がある。
物語として世界を置いていってないというか、「有り得ないマンガの話ですから」という言い訳に逃げてないというか。ちゃんとこのふたりはこの世界に生きている人間なんだと見せたいんだろうなと個人的には感じました。
「普通の人達の世界」の中にいる「とっても特殊なふたり」。
でもそこで起きているアクションは「店の喧騒に紛れたキス」だったり「ボールを取るためにジャンプ」だったりとっても「普通」のアクションで、だからこそグッとくる。
どこまで自分が作者が伝えたい感じを正確に受け取ってるかわかんないですけど、描き方にしっかり意思を感じる見せ方で、すんごく好きです。

あとキャラクターに関してなんですけど、実はこの漫画で描くのがムズいのって「ねずみちゃん」の方じゃなくて「あおくん」の方だと思うんですよね。
これは個人的な考えなんですけど、物語を作る時って「最初にひとつ嘘をつくことが許可される」と思ってるんですね。
それがSF世界的なでかい世界観でも、ご近所物みたいな小さな世界観でも、どちらにせよ1個は嘘があると思うんですね。そこからお話が始まる。
で、ねずみちゃんの存在はその「最初の嘘」に含まれてると思うんです。
「ヤクザに雇われているかわいい女の子の殺し屋がいる世界です」という嘘。そこは前提として認めてくださいっていうフィクショナルな部分。
それに対してあおくんの存在って「たまたまそのかわいい女の子(の殺し屋)にひとめ惚れしちゃいました」という、許された嘘に頼れない設定だと思うんですよ。
「たまたま好きになった理由」をつけられないわけで。
そのヘタしたらご都合主義になってしまいそうなキャラクターを、純粋に細かい所作や表情や台詞で実在感を作ってるのは結構スゴいことなんじゃねえかと思ってます。
だってそこが嘘っぽかったら「かわいいねずみちゃんのために頑張らなくっちゃ」というお話を引っ張る大前提の部分が崩壊しちゃうわけせすから。
実はそこがあおくんのキャラクターひとつで成立させてるのが、すげえと思います。
(更にあおくんに場合、本当にただのひとめぼれなのかまだちょっとわかんないとこもあるのよねー。特に1巻のラストで過去の接点が示唆されてるもんだから。「知ってて近付いた」可能性もまだ残されてるんじゃねえかと。そこはまぁお話の部分だからまだわからないけど。でも「現在進行形の感情としてねずみちゃんが好き」は全く嘘に見えないからなぁ)

とりあえずねずみちゃんはちゃんとかわいいし、ふたりの初々しい恋路は見ててたまらんし、ちゃんと「応援したいふたり」になってるからこそ、すぐそこに迫る暴力とキツい運命の予感にハラハラしながら読める「超面白い漫画」になってると思います。最高。
次巻は「覚醒スーパーねずみちゃんモード大殺戮」展開ぽいし、めっちゃ楽しみよ。

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