見出し画像

『光が死んだ夏』5巻

「謎解きパート(なのかな?)」が進み、ここに来て思っていた以上にがっつり怪談•因習系ホラーとして展開していって驚き。
個人的には「ホラーミステリーの謎解き」としてはもうちょい「何がわかって何がわかっていないのか」を整理してくれると助かるんだけどとは読みながら思ってしまった。
「本人がそこにいる」という特殊設定もあって更にヒカルの記憶も何をどこまで覚えているか曖昧という状況なのでわかりづらくなっちゃうのはしゃあないとは思うんだけど、それでも「一番の謎はこれです」というのがもうちょいわかりやすく提示してくれると「ただの説明」と思わず楽しく読めるんだけどなぁ。という無い物ねだり。
でも基本的には、ヘタに雰囲気で逃げたりせずに真っ向から因習物ホラーをやってる姿勢は好感です。
ちゃんとホラーへのリスペクトがある感じ。

今巻では朝子が知ってしまった後のヒカルと朝子の会話も良かった。
思わず泣いてしまうまでの空気の自然さ。
終業式の裏、ふたりきりの教室、外は夏の日射し、窓から吹き込む風。
普通の中で普通でない会話をして普通の感情として泣いてしまう。
ちゃんとその朝子を見てヒカルが思うことがあって、ただの単発の「いいシーン」でなく物語全体を進めていくことになる展開も含めて、めっちゃいいシーンだなぁと思った。

同じようによしきと父親のシーンもいい。
5巻の中で一番好きな台詞は「この村に良いところが一つも無うなった、と思ったな…」です。


思えば1巻を読んだ段階でよしきとヒカルの関係性としての「BLっぽさ」が一番のウリだし一番面白いとこって漫画なのかなと感じたし、そこは確かに魅力だと思って読んでたわけだけど。
そのあと「ちゃんと恐い」と思えるホラーをしっかりやって、因習系ホラーとしての謎解きも真っ向からちゃんとやって、それを経ての浜辺のシーン。
「一番おいしいとこ」に戻ってきたと思うと同時に、「BLっぽさ」っていう、なんちゅうか、そういう「ジャンル感(言い方としてあんまいい感じじゃないかもですが)」を超えて、もっと普遍的な、「誰かは誰かを必要とする」「相手のためを想うという難しさとすれ違い」、そういうテーマにまで踏み込んでいて、「このふたりだからの物語」という部分が2重にも3重にも強く感じましたですよ。


すげえいいシーンだった、浜辺のとこ。

だからこそその後のタナカ登場からの衝撃的な台詞と「以下次巻」への引っ張りは「お前マジか!」と思いましたよ。
なんつー引きかたしてくれんだ! 商売上手か! バカヤロウ!
(あと流石にこのタナカの「どっから出てきたねん」感は看過しがたいぞ! ステルス能力あんのか!)

まぁすっかり作者にやられた訳です。

「このふたりの結末」は見届けずに死ねないやつだなぁ。いやぁ面白いっすわ。

この記事が参加している募集

#マンガ感想文

20,104件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?