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『青野くんに触りたいから死にたい』12巻

この漫画は最初っからずっと「ものすごく単純なこと」と「ものすごく複雑なこと」が同時に走ってる。
「複雑なこと」はシステム(儀式)の話。
そして命って何だろう、幸せって何だろう、他人って何だろう。
なんでわからないんだろう。
なんでできないんだろう。
なんで永遠じゃないんだろう。
その理由は全部たぶん複雑で、訳がわからなくて、人の気持ちや人生を弄ぶように操ったりもして。
でも、それでも「ものすごく単純なこと」をこの主人公ふたりはずっと望んでいるわけで。

「好きな人といっしょにいたい」

その「ものすごく単純なこと」がどうやったって叶わない。
天地がひっくり返ってもそうはならない。
そこからこの漫画は始まっているんだという事を改めて思い出してしまう最新刊。

夜の公園で踊るふたりが、あまりにも愛おしくて、あまりにも健気で、あまりにも哀しくて、泣いてしまった。
喉の真ん中に古い釘でも打ち込まれたような気分。
なんにも言えねえよ。
もう漫画としての整合性とかテーマとか「こうあるべき」とか傑作として完結する可能性とかも全部かなぐり捨てて、ぜーんぶ嘘でしたとひっくり返して、このふたりが幸せになっちゃダメですか?
だって、漫画じゃん。
フィクションじゃん。
だったらもう、物語なんか全部放棄して「優里ちゃんと青野くんは幸せ暮らしましたとさ」で終わっちゃダメですか。

ダメなんだろうなぁ……。

最後のナレーションの不吉さが、終わりを告げる鐘のように脳味噌の中で鳴り続けてます。
もう残された物語少ないんだろうなと嫌でも感じる。

最後のクライマックス前に全巻一気読みしてから見届けたいもんです。

たまらんです。

傑作です。

終わるのか。

終わるんだろうなぁ。

ああ、マジかぁ。

何を思えばいいのやら。


ただもう本当にふたりの幸せを願います。
フィクションでここまで思い入れた恋人たちは、この2人が初めてかもしれない。

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