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[短編小説]記録係のマモルくん③

 付き合って72日目のお昼休みに、わたしの手をものすごい勢いで引っ張ったのは、セナくんだった。

 渡り廊下の隅っこでひょろっとした身体を精いっぱい縮めていたのは、マモルくん。
 セナくんは鼻息荒くマモルくんを責め立てた。

「琴子。こいつストーカーだぞ!」

 セナくんはわたしたち3人に聞こえる音量で、レコーダーを再生した。
 セナくんがマモルくんの大切なレコーダーを奪い取ったのだ。


♫♫♫♫♫♫

 琴ちゃんは今日は紺色のハイソックスなので、膝のうしろのくぼみがかわいらしいです。

 琴ちゃんが2時間目のあとに僕の方を振り向いてくれました。

 琴ちゃんが英語の時間に指されて、Benjamin と言ったときの、nのねばり方がとてもよかったです。

 琴ちゃんは体育の時間、ジャージを脱いでました。僕は嬉しいけど、寒くないのかなと心配です。

 わたしは真っ赤になった。
 マモルくんは赤を通り越して、紫みたいな顔をしていた。

「オレ、先生に渡してくる。」
 セナくんはやっとレコーダーの再生を止めた。

 わたしは慌ててセナくんを止めた。

「違うの!!」

 ストーカーじゃない。

「わたしたち、付き合ってるの!」


 セナくんの上履きはスローモーションみたいに、渡り廊下を滑って、転んだ。
 バスケの3ポイントシュートを放った瞬間みたい。しびれるみたいな一瞬。


「だから、それ、返して!」


 セナくんは涙目でわたしにレコーダーを手渡した。

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