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サブ3ランナーは3%ではない

統計データの話をしたい。日本のランニング人口は約1000万人だという。サブ3ランナーが、(巷でよく言われるように)約3%だとすれば、日本には約30万人のサブ3ランナーがいることになる。マラソン大会にいくらか出たことのある人なら、さすがにこの数字には違和感があるのではないだろうか。

ランニング人口と男女比について

まず、ランニング人口から始めたい。データはこちらのサイトを参照させていただいた。

概要をまとめると・・・

2012年に初めて1000万人超え
微増減をくりかえして、2018年は960万人くらい
男性人口は女性人口の2倍かそれ以上

だが、見逃せないのは、上記が「年に一回以上走る」という条件であること。これが「週に一回以上」になると、一気に550万人くらいまで下がる。
これを加味すると

ランニングを生活習慣としている人口は550万人くらい
その内3分の1弱が女性

ということになる。

陸連登録者について

今回の話のキモは、実はここである。以下のデータを見ていただきたい。

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「サブ3ランナーは3%」という話の根拠はこれに違いないと思う。つまり、3%とは、「ランニング人口の3%」ではなく、「陸連登録者男子の3%」なのだ。また、先のデータから、走力(タイム)には有意な男女差があることもわかる。ちょうどサブ3.5のあたりが、陸連登録者女子の上位3%になっていることから、このあたりの速度域では、男女のタイム差が30分くらいあると言えそうだ。

また、登録者数は、男子で約30万人、女子で約8万人となっている。登録者は全体の4%程度ということだ。

案外知られていないことも多いので、陸連登録そのものについても少し触れてみる。
まず、選手権や国際大会に出場する選手やそれを目指す選手は、登録が必須。だいたいが、実業団やチーム名義で登録するのではないだろうか。とにかく、登録しないことには、プロとしては活動できない。
では、市民ランナーにとってはどうか。登録するメリットは以下のような点がある。

大会結果を、陸連に「公認」してもらえる(陸連公認大会に限る)
前方ブロックからスタートできる(同上)
一歳刻み年代別順位をもらえる(年度末)

福岡国際マラソンや別大マラソンのようなレースは、参加資格が「公認記録で○時間以内」などとなっており、走力があっても陸連登録していなければ、参加不可能。
前方ブロックスタートは、例えばフルマラソン5時間かかる選手でも、BやCなどからスタートさせてもらえるので、前半の渋滞を回避できる。
僕の印象だが、陸連登録ゼッケン(色が違う)をつけている選手のうち、本気でタイムを取りに来ている選手は、半分くらいだろうか。残りの選手は、前方ブロックスタートの権利を買うことで、マラソンを快適に楽しもうとしている感じだった。これは年間2000円弱を払えば、誰にでも与えられる権利なので、まったく平等。ズルでも不真面目でもない、公平なオプションだと思う。

ここまで、長々と陸連登録の話をしたのは、「陸連登録者と非登録者の走力平均値はどのくらい違うだろう」という問題を検証する参考になると思ったため。まとめてみる。

陸連登録者の構成
現役プロカテゴリランナー
市民エリートランナーおよび予備軍
積極的にマラソンを楽しみたい、一般の選手たち(登録者の半数くらい?)
非登録者の構成
元・プロカテゴリランナー
エリートレースに出る気のない市民エリートランナー
大多数のその他一般ランナー(大会を楽しむ、できればPB出したい、完走できたらラッキー、早く終わってビール飲みたい・・・etc)

非登録者にも、恐ろしく速いランナーは大勢いるが、もしフルマラソンの完走率や平均タイムを比較したら、大差があることは容易に想像できる。

残念ながら、非登録者の走力に関する統計データはない。作れるわけがないと思う。例えば、2つの大会に同姓同名の選手がいたとして、これが同一人物なのか、そうでないのか、検証する時間も予算もないはずだ。(登録者は、個別にIDが振られているので、その問題はない)

まとめ

陸連登録者男子(約30万人)の約3%がサブ3ランナー
同女子(約8万人)の約3%がサブ3.5ランナー

さらに、非登録者の平均走力は、登録者のそれに比べて格段に落ちる上に、ランニング人口の96%を非登録者が占めることから、以下が言える。

ランニング人口に占めるサブ3ランナーの割合は、3%よりもかなり小さい

蛇足かもしれないが、ひとつ推定値を検討してみたい。
サブ3以上のランナーは陸連登録率がかなり高い傾向がある(マラソン大会で上位帯を観察すれば明らか)が、その登録率を仮に50%としてみる

先の統計データから、陸連登録者のサブ3人口は、男女合計で約9600人、それと同数の非登録者がいるという仮定になる。つまり、日本全体で約19200人である。これをランニング人口の1000万人で割ると・・・0.00192。
約0.2%という数字が出てくる。うーむ、思ってた以上に少ない・・・

この数値には、約400万人の「週に一回未満しか走らないランナー」と大多数の「完走を目標とするランナー」が含まれているわけで、「だから何?」と言われればそれまで。僕個人としては、新しい目安の数値が出せたので、まぁまぁ満足ですw

※データ引用:ランナーズ発行、全日本マラソンランキング(2018年度)


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