ミュージカル「マチルダ」を語りたい!!【キャラクター編】

 【ストーリー編】に続き、こちらでは各キャラクターについて抱いた感想をまとめます。

↓【ストーリー編】はこちら↓

※ 以下ネタバレを含みます。
※ 恣意的な解釈が大いに含まれます。

1.マチルダ

 マチルダは言うまでもなくこの作品の主人公です。「正しくない」や「私は女の子よ」といった特有のセリフを持ち、それらが彼女の考え方や境遇を象徴しています。
 私もこの5歳児に、

「人生が不公平なら 我慢より行動しなきゃ」

と教わりました。私にとって、この作品に出てくる先生は、ミス・ハニー、ミス・トランチブル、そしてミス・マチルダの3人です。

● 正しさと危うさ

 若干5歳にして『罪と罰』とか読み漁っちゃう秀才マチルダは、「正しいか、正しくないか」という価値観のもと行動していきます。頼もしい限りですが、ちょっと気になる一幕も。

 気になったのはハニー先生の家でのこと。
 「ハニー先生にいじわるをする伯母とは誰か?」と考えを巡らせた結果、トランチブルだと分かります。
 ただ、この時点ではマチルダの憶測の域を出ないままそう結論付けたような覚えが。「トランチブルだ!!」に対するハニー先生の反応が知りたかった…。
 結局ストーリー上では、黒板に書かれたメッセージに対するトランチブルの反応が、それが真実だと物語っていますね。

 この、自分の考えのまま行動するところには、どうしても「危うさ」を感じてしまいます。パンフレットの木村達成さんのコメントでも、そのようなことに言及されていましたね。

● マチルダは「第2のトランチブル」となり得るか?

 では、その“危うさ”は、マチルダをトランチブルのようにしてしまうのでしょうか…?

 あくまで個人の意見ですが、この物語からすればそんなことにはならないのだろうな、と。

 この物語には、【学ぶ人】と【学ばない人】との違いが明確にある気がしています。

 トランチブルの主張は、すべて間違っているものだとも思えません。実際規則を守らねばならないときもありますし、その思考のもとでハンマー投げのチャンピオンという実績まで残しています。
 ただ、その思考に固執し、学ばないまま思考をアップデートできませんでした。トランチブルの問題はその一点に尽きると思っています。

 対して、マチルダは物語後もおそらく学び続けるでしょう。学ぶことで、どんどん新しい考え方・新しい正しさを知り、順応していくのではないかな…。個人的な期待も込めて、ですが。

要するに、「学ぶことは大事なことだ」!!

● 不思議な力

 マチルダは、第2幕の「体育」が終わった後、ものを見つめることで動かせる不思議な力を手にします。
 あのとき、なぜ不思議な力が使えるようになったかについては、いろいろ想像する余地がありそうですが、

不思議な力を行使しているのは第2幕だけではない

というのが、今回言及したい点です。
 「不思議な力」はものを動かす他に、

ハニー先生の過去を、「物語」を作る過程で見ていた

ということも挙げられます。「ものを動かす力」とは違い、観終わった後に、「“実は”不思議な力だったんだ!」と判明しますね。つまり、マチルダは序盤から不思議な力を使っていたことが分かります。

 マチルダが語る物語は、脱出名人とアクトバットを主人公として、マチルダが実際に周りの人から聞いた言葉を織り交ぜながら語られていきます。

 この「脱出名人」「アクトバット」も、『周りから聞いた言葉』のひとつなのですが、この言葉は誰が言っていたか、何を隠そうワームウッド夫妻です!

 これって、たまたまなのかな?

 実は、ワームウッドの夫妻も不思議な力を持っているのではないか?
 ただ、【学ばない】から気づいていないだけで。

 ・・・さすがに荒唐無稽ですかね。

2.ミス・トランチブル

 私が最近触れてきたフィクションだと、悪役側にも事情があるとか、実はいいやつだとか、悪役が悪役で終わらない作品ばかりでした。

 トランチブルは悪役として出てきますが、本当に悪のままで終わりますね。まったくもって救われません。
 この勧善懲悪っぷりは久々の感覚で爽快でした。

 とはいえ、トランチブル自体はけっこうコミカルに描かれていました。

何より“The Hammer”と”The Smell of Rebellion”の聞き心地が良すぎる!

LINE MUSIC で、英語版ではありますがつい聴いてしまいます(あんまり歌詞は分かってない)。
 このキャラクターが、私が「ミュージカル、いいな」と思ったきっかけかもしれません。

● 規則・契約

 規則や契約に厳しいトランチブルですが、規則に従ってハンマー投げチャンピオンという栄光を手にしているので、「まあ、そういう考え方になるよね」とは思います。

 このトランチブルの何が問題かって、

規則を自分の都合のいいように変えてしまう

ところだと思います。

 ブルースが罰として大量のチョコレートケーキを食べさせられるとき。食べきられてしまったトランチブルは、罰を追加します。
 確かに、「他人のケーキを食べた者は罰せられるべき」という点では規則に厳しいのかもしれませんが、追加の罰は明らかに後出しであり、規則を勝手に変えていますね。

 最終的に、規則・契約に厳しいトランチブルは、逆に「遺言」という契約によってとっちめられる、というのがまた美しい最後だと感じました。

● 表現のされ方

 最後に、私が個人的にグッときたトランチブルの描かれ方を2つほど紹介させてください。

 1つ目は「リボン」について。

 “The Hammer”では、次のように歌い上げています。

If you want to throw the hammer for your country,
you have to stay inside the circle all the time
(国を代表してハンマー投げをしたければ、いかなるときもサークルから出てはならない)

"The Hammer"

 トランチブルがリボンを取り出して踊りだしますが、踊りの一部でリボンを円形に回します。その円形を「サークル」とみると、

トランチブル全身がサークルにしっかりと入っている!!

 さすがはハンマー投げチャンピオン、サークルから決して出ないのですね・・・!

 2点目はトランチブル役のメイクについて。

 「『マチルダ』についてもっと知りたい!」と思っていろいろ調べていく中で、以下の動画にたどり着きました。役者の方のトランチブルになるまでのメイクアップ動画です。
(“トランチ”フォーメーションて・・・笑)

 動画の中で、歯を茶色く塗っています。私の拙い英語力で聞き取る限りでは、どうやらトランチブルの好物、チョコレートケーキを表しているそうな。

 これは日本版『マチルダ』でも同じっぽいことが最近分かりました。芸が細かいですね。

 居ても立っても居られず、大阪公演も参戦を決めてしまったので、ちょっと歯を見てみよう(見えるかな?)。


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