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ミュージカル「マチルダ」を語りたい!!【ストーリー編】

 ミュージカル「マチルダ」について、あふれんばかりの感想が溜まっているにも関わらず、発散場所がない・・・うずうず。

 ということで、こちらに感想をまとめておきたいと思います。
 ミュージカル初心者な上、なかなか個人の解釈が含まれているので、異なる点があればぜひ教えていただければ幸いです。

※以下、ネタバレを含みます。
※恣意的な解釈が大いに含まれます。

1.ストーリーについて

●ママは言う、「あなたは奇跡」

 ミュージカルを自分から観に行くというのは初めてな私でしたが、
「マチルダ、良くない?」と思ったきっかけの1つが

子どもの扱われ方のギャップ

でした。
 開幕では、「特別だ!」「奇跡だ!」と祝福されながら育ってきた子どもたち。対照的なのが「スクール・ソング」の冒頭。

 「ママは言う、わたし、奇跡・・・」

と、恐る恐る歌われるのが、私にとってはなんとも印象的でした。そして、「お前は特別じゃねえよ、おとなしくしていろ」と一蹴されてしまう。

 外国の児童文学が原作とのことですが、なんか日本に通じるところを感じる・・・。

●学ばない人

 いっぱい語りたい部分がありますが、・・・
 特に私が抱いた印象は

「バカは学ばなければバカのまま」

なんだな、と。 

 ワームウッド夫妻(とマイケル)は、言うまでもなく【学ばない】側のキャラクター。その結果、最終的には国外に逃げざるを得なくなってしまいます。

 トランチブル校長も、過去の栄光にすがり、「考えをアップデートできなかった」という点では、【学ばない】キャラクターと見ることができそう…?最終的には、トランチブルも見るに堪えない状況に陥ります。
(Netflix映画版のトランチブルは、これでもかという程ボッコボコでしたね笑)

●学んだ人

 これに対して、【学ぶ】側のキャラクターとしてマチルダを挙げることもできますが、それ以上に『ハニー先生のクラスの生徒』の方がよっぽど対照的だな、という印象。ここの部分を語らせて・・・!!

 学校初日では、「I(私)」という単語を「トマト」と(誇らしげに)読んでしまうレベルでしたが、終盤ではトランチブルの理不尽な抜き打ちスペルテストに全員が対抗できるくらい【学んで】います。
 このシーンは、「優しく教え続けたハニー先生のおかげで」という部分がメインかな?と思うのですが、教えられる側にも「学ぼう」という意識がないと成立しないわけで。ハニー先生の優しさ・根気強さと共に、

「あぁ、子ども達がんばったんだな…!」

と、勝手にグッときてました(号泣・・・)。

 この後、トランチブルお手製造語(黙字入り)のスペルテストという絶望の理不尽が待ち受けています。
 子ども達はなすすべなし・・・かと思いきや

「わざとスペルを間違える」

ことを思いつきます!!理不尽に抵抗し続けるんです!!

 物語前半では「トランチブルに目をつけられたら終わりだ」と、マチルダ以外の子ども達は抵抗しません。いたずらの冤罪をかけられていた子どもは、マチルダの発案でなんとか難を逃れました。
 これって裏を返せば、もしマチルダがいなければ、子ども達はこの理不尽を受け入れた、というでしょう。

 前半に対してスペルテストの抵抗には、マチルダのアイデアは1つも入っていません(だったはず?)。スペルを正しく答えるのも、わざとスペルを間違えだすのもマチルダ以外の子どもです(マチルダもスペルミスに加担はします)。

【学んだ】子ども達は、理不尽に負けないんだな・・・!!(号泣が加速)

と、勝手な解釈して楽しんでました。
結局、抵抗むなしく全員分のぎちぎちが用意されていたわけですが・・・。

●【学ばない人】と【学んだ人】

・【学ばない】ワームウッド家 → 現状から逃げざるを得ない 
・【学んだ】子ども達 → 現状を打破する
この対比が好きすぎる!!
(前者の“現状”は本人が招いたことですが)

 ただ、【学んだ】子ども達のきっかけは明らかにハニー先生なわけで。子どもの成長に対する大人の関わり方を考えさせられました。

2.劇中歌について

 劇中歌も、私の中では「マチルダ、良くない?」要素の立派な一部分を担っています。ここでは、特に以下の2曲について感想をまとめておきます。

●スクール・ソング(School Song)

 まず、言われ尽くされていることかと思いますが、日本語訳すごすぎ
 正直原作が海外云々をまったく知らずに観劇したため、
 「すごい、ABCになぞらえた歌詞になっているんだ」
と初めて知り感動。
 「どこかでこの曲を聴けないものか?」と探し回った結果、LINE MUSIC にて英語版(オリジナル?)を見つけたので、聴いてみたところ、

ただABCを入れて訳してるだけじゃなくて、
ABCのタイミングまで原典と一緒じゃね?

 原典を知って2度目の感動・・・。こだわりえぐすぎるて!!!

 ただ、和訳したときに、同じ曲に込められる意味の量は英語版よりもどうしても少なくなってしまいますね。これは日本語の特性として仕方のないことなのかなと。

【日本語版(出だし)】
その過去の栄(A)光   捨てて生き延び(B)ろ
この戦場 逃げ場なし(C)  捨て去れ 思い出(D)

WOWOW特別番組「ミュージカル『マチルダ』奇跡を起こすための第一歩」#2

【英語版(出だし)】
And so you think you're Able
To survive this mess by Being
a prince or a princess, you will soon see(C)
there's no escaping trageDy
(お前たちは、自分が王子様やお姫様だからこの雑然とした世界を生き延びられると思っているだろうが、すぐ分かるだろう、悲劇から逃れることはできないと。)

School Song | Roald Dahl’s Matilda The Musical | Netflix Philippines

 日本語版も、よく意味が反映されているなとは思いますが、この直前の歌詞も考えると、"prince" "princess"が含まれる英語版の方が整っているなと感じてしまう・・・。
 とはいえ、冒頭に述べた「日本語訳すごすぎ」って思いは変わりません。

 第二に、この曲は「奇跡だ」「特別だ」と育てられた子ども達が一蹴される曲です。なんといっても、

この殺伐とした曲に「スクール・ソング」と名付けるセンスが好き!!

 もっと「洗礼」だの「生き地獄」だの殺伐命名のしようはいくらでもあったろうに。
 曲名も含めて、この曲は特に序盤の「マチルダ」を象徴しているなと、そう思った次第です。

●いつか(When I grow up)

 第2幕の冒頭で、子ども達・ハニー先生・マチルダの、その時点での思いが集約されている、これも象徴的な曲でした。

 これ、ハニー先生は歌っている人の中で唯一の大人なんですよね。

いつかは 立ち向かう強さを持つ 怖い怪物 倒せる大人になるため

ミュージカル『マチルダ』カンパニー スペシャルパフォーマンス "When I Grow Up"

 まったく同じ歌詞でも、子ども視点・ハニー先生視点でこうも印象変わるのかと!!
 ハニー先生が歌うと、「私は成長していない・・・」と自分を卑下する歌に聴こえるし、その直前で子ども達が将来を夢見て歌っているものだから、なおさらハニー先生の思いが際立って聞こえました。
 この表現、素敵。

 第二に、これも日本語版と英語版の違いの話。
 「スクール・ソング」と同じように歌詞を見比べてみました。

When I grow up,
I will be strong enough to carry all the heavy things you have to haul
around with you when you're a grown-up.
(大人になったら、君が引きずらないと動かせないような重いものをすべて運べるくらいに強くなるよ。)

LINE MUSIC "Matilda the Musical"歌詞情報より

いつかは
力持ちになるよ 大人が持たなきゃならない ものをちゃんと持つため

ミュージカル『マチルダ』カンパニー スペシャルパフォーマンス "When I Grow Up"

 また、若干のニュアンスの違いを感じるが・・・

日本語の歌詞、抽象的でむしろ良くない?!

 「スクール・ソング」で述べた通り、日本語に訳すときにはどうしても意味が制限されてしまうと思うのですが、今回に関しては歌詞に「含み」ができたような気がする!!
 「大人が持たなきゃならないもの」って、「重いもの」以外にもいっぱいあるよね・・・?みたいな。

 そんなことを考えてから、「いつか(When I grow up)」に関しては日本語版が好きです。

【ここからは完全主観ですが】、この曲は
 ① 子ども
 ② ハニー先生
 ③ マチルダ
で構成されていますが、①の中でも、
 ①-1 声変わりする前の子ども
 ①-2 声変わりする前の子ども+声変わりした後の子ども
で別れているように聞こえます。そして、それぞれの歌詞は、

〈①-1〉
・大人が登る木にちゃんと登るため背が伸びるだろう 
・どんなに難しいことも分かるくらい賢くなるよ
・たくさんのケーキを食べて、夜更かししたい

〈①-2〉
・大人が持たなきゃならないものをちゃんと持つため力持ちになる
・怖い怪物を倒せる大人になるため立ち向かう強さを持つ

 心なしか、それぞれに
①-1:自分自身のために成長したい
  ①-2:他のだれかのために成長したい

という内容が多い気がする・・・。
 原曲の英語版はそんなことないので、たぶん気のせいなのですが。

3.おわりに

 ここまで素人の感想・解釈にお付き合いいただき、ありがとうございました!!
 実はまだまだ話し足りない・・・。
 どこか機会を見て、「各キャラクターについて」感想をまとめたいと考えています。


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