#2 生活

「最近、生きる目的がなくて」

目の前には、今までとは別人のような彼がいた。

アプリで出会った年下の彼と初めて会ったのは、5月。新社会人として歩み始めたばかりで、志望していた会社に入社し、一人暮らしにも慣れ、海外赴任を夢見ていた。

2回目も、居酒屋でビールと海鮮をたらふく食べて、満足そうに、にこにことして、私の手を取っていた。

1ヶ月ぶり、3回目の彼は、中身が空っぽになっていた。
自分の空虚さを悲しむそぶりもなく、淡々とどうやって生きたらいいんだろうと悩み、会話を盛り上げようとする気もなく、喫茶店のあたたかいスパゲティを食べていた。

3回とも彼が誘ってくれて、でもどこか違和感を感じながら会ったけれど、こんな状態とは思わなかった。

なんだか、彼と対照的な、日常に何も特別なことがなくても自分の機嫌を取ることができるようになったわたしは、申し訳ない気持ちになった。

人は置かれた環境でこうも変わってしまう。
自分で自分や生活を変えようとしないと、目に見えない、なにか、に押されて、進みたい方向に進めなくなり、どこに進みたいのかもわからなくなってしまう。

心が平坦になってしまって、人との関わりも少なくなってしまって、他者と積極的に関わろうとしない彼に、楽しみが見つけられるといいねという言葉しか掛けられなかった。

LINEの、「ごめんな」は、どんな意味だったんだろう。暗い話をしたこと?お酒を飲むのを断ったこと?約束に遅刻したこと?私への態度が180度変わったこと?

いつか彼が生き甲斐を見つけて毎日を楽しく生きられるようになるといいな。

あと、人の心配ばかりせず、わたしは、何度もアプリで出会いと別れを繰り返さないで、波動が似ていて、ずっと一緒にいられるような人を見つけたい。思えば、アプリで出会い、直接会った人のほとんどは、どこか寂しさを抱えていて、これまでの人生病み尽くして這い上がってきた(と思っている)わたしとは、どこか歯車の噛み合わない人だった。

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