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投開票日に思ったことー成功と幸福についてー

 衆議院選挙投開票日となりました。
珍しく妻も今回の選挙では各党の公約や、選挙区候補者の考えを調べ、どこに投票するか、検討していました。妻の争点の一つは夫婦別姓のようで、自分たちの子供が大人になるときに、選択肢が得られる社会の方が望ましいと考えているようです。
 僕自身は、与党の政策もだいぶリベラルに寄ってきているので、どちらかと言えば政策よりも緊張感のある政治の実現に繋がることを願って一票を投じました。

 政策や日本の課題に関する本を読んでいると、いかに日本人は問題を先送りにしてきたのかが分かります。少子化問題は1970年代からトピックになっていたし、環境問題だって1990年代には相当にアラートがならされてきたにもかかわらず、あまり進展してきませんでした。むしろ、現状維持バイアスが強く出ていることで、今後もこの国はきっと変わらないのではないかという諦念も個人的には持ってしまっています。

 実際のところ、僕にできることは、投票によって国を変えることではなく、自分たちの子供が将来、少しでも楽しんで生きられる大人になってもらうように育てることだろうと思っていて、なかなか実際にはできていないですけれども、出来る限り子供に寄り添って生きていきたいと思っています。

 僕自身はあまり人生を楽しむことが得意ではありません。誰かに甘えることも得意ではありません。自己肯定感が強くなく、親(特に父親)からは基本的に否定されて生きてきたせいか、40歳になっても実際のところ自分が何をしたいのか、今一わからないのが正直なところです。特に僕の場合は、「六大学以上の大学に行かなければ、大学の学費は絶対に出さない」とまで言われたことや「お前は弁護士になれ」とか、そんな無理なことを父親に言われてきた結果(もちろん、そんな能力もなく弁護士を目指したこともありませんが)、どこかで成功=幸福だという固定観念があります。いや、恐らく40代前後の僕と同様の世代の人たちは、成功体験に塗れた団塊の世代近傍の年代の父親に育てられた結果、そのような成功=幸福だという呪いに縛られている人も少なくないのではないかと思います。

 高校生のときに、三木清「人生論ノート」に出会い、それから数年に一度、読み直すということを続けています。具にその内容を思い出すことはできませんが、「習慣は壊すためにある」とか自分を奮い立たせる言葉をいつも受け取っています。

NHK100分de名著ブックス「人生論ノート」(岸見一郎)を手に取り、今読んでいます。そこで、いみじくも成功と幸福について記載があります。以下、引用です。

成功するということが人々の主な主題となるようになったとき、幸福というものはもはや人々の深い関心ではなくなった。
成功と幸福とを、不成功と不幸とを同一視するようになって以来、人間は真の幸福が何であるかを理解し得なくなった。

この三木清の引用した岸見一郎は、三木の文章を引用しつつ、以下のように記します。

 しかし、成功と幸福は別物です。その違いを三木は・・・成功は『直線的な向上』として考えられるが、幸福には『本来、進歩というものはない』。また、幸福が『各人のもの、人格的な、性質的なもの』であるのに対し、成功は『一般的なもの、量的に考えられ得るもの』であり、純粋な幸福は『各人においてオリジナルなもの』だが、近代の成功主義者は『型として明瞭であるが個性ではない』。幸福はオリジナルなもので、誰も真似することはできません。他方、成功は一般的で量的なものなので、模倣されたり、追随する人が出てきたりします。

 どこかで、僕はまだ成功=幸福であると、当然のものとして考えている節があります。これは、いわゆるバイアスなのでしょうが、それを乗り越えることはまだできていません。恥ずかしながら、今でも社会的に自分の存在は認知されることを少しばかり期待してしまっています(特段の努力をしていないにも関わらず)。自分が子供たちに伝えられることは、成功=幸福ではないということをしっかり伝えること、幸せは自分だけのオリジナルなものであり、楽しいことをどんどんした方が良いということ、自立とは誰も頼らないということではなく、頼れる人や場所をたくさん作ること(局所的に強く依存しないこと)で、人には甘えていい、と伝えることではないか、と最近思っています。

 経済的にも日本の足元の状況やこれからの状況を見ても、成功することは難しいと思います。だからこそ、まずは幸福を目指して欲しい。そのために、楽しいことをして欲しい。

 親ができることは、そのために子供たちとちゃんと話をすることと、ちゃんと選挙に行って、少しでも子供たちが将来大人になるときに、マシな世の中を作ってくれそうな政治家に票を投じることなんだろうと思います。

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