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本当の価値

 先日、TBSのニュース番組で、リンゴ栽培の話題を取り上げていた。商品として出荷できるリンゴを作るためには、年間十三回もの農薬散布が必要なそうである。そうしないと、病害虫に弱いリンゴの木は、実だけでなく幹までも駄目になってしまうという。

 そんな現状の中で、青森でリンゴ農家を営んでいる須郷さんは、毎日、一本一本の木を見て回り、病気を一早く発見し治療をするなど、手間隙をかけた試行錯誤の結果、農薬散布を六回に減らすことに成功した。しかし、どうしても収穫できるリンゴには小さな傷や虫食いの跡が付いてしまう。そのために、買取り価格は通常量の農薬を使ったものより安くなってしまうという。須郷さんは、インタビューの中で「味なら負けないんだけどなぁ」と呟いていた。
 

 農薬をたくさん浴びて、傷一つないぴかぴかのリンゴと、農薬を半分にしたために少々傷のあるリンゴ。果物屋の店先に並べられていたら、皆さんはどちらを選ぶだろうか。人間の体にとって安全なのは、言うまでもなく後者である。しかし、市場では前者のほうが高価で取り引きされる。何かが矛盾している。
 

 価値観の矛盾。それはリンゴに限ったことではない。農産物、工業製品を問わずどんなモノにも言えることである。ひいては人間についても。
 

 人間の本質は、容姿や肩書き、性別や年齢などでは判断できない。しかし、私たちは、人を評価すときに、ついつい見た目にとらわれてはいないだろうか。
 

 見た目の美しさだけに惑わされない、しっかりとした審美眼を身につけることが、これからの混迷する世の中を賢く生きるためには特に必要である。

★見た目の美しさにだまされる傾向は、今も続いている。自動車の無資格点検問題、政治家の建前、教育現場の指導という名の下に行われる教師によるいじめ。物事の表面的な美しさにごまかされない審美眼を身につけないと、大損をすることになる。

学校教育には矛盾がいっぱい!