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「トラペジウム」感想(暫定版)

映画「トラペジウム」を鑑賞したのでその感想を書こう。


トラペジウムメイン4人


それに先立ち、高山一実氏作の原作に当たる小説版「トラペジウム」も一読したのでそれについても触れようと思う。「トラペジウム」の要旨を簡単に説明すると

帰国子女の主人公・東ゆうはカナダにいた頃、録画テープに記録されていた歌を通じてアイドルを知り、その光に感動したゆうはアイドルになりたいと願う。日本に帰国高校進学後、ゆうはアイドルになるために4箇条を課し、地元城州の東西南北からアイドルを志すメンバーを集め、4人組のグループ「東西南北」を結成するも...

という話です。原作小説と劇場アニメでは違う点も多いですが、この流れは変わりません。この両者で印象は異なりますが、まずは原作小説の印象を書いていきたいと思います。

原作小説の印象~終盤が...~

原作小説の配分はこんな感じである(正確にページ数を測定したわけでは無く主観的)。

仲間集めからアイドル始動:80%
アイドル活動から空中分解・再集結:20%

何が言いたいのかと言うと、原作一読後の感想としてはアイドル始動したはいいもののあっけなく空中分解..東ゆうの作中の言葉を借りれば「やっと掴んだと思っていたアイドルという称号は、私の手からするりと逃げていった」である。正直物足りなさを覚えたのは事実である。

しかし、個人手に気それにもまして物足りなかったのは最終盤の主人公の描写である。「東西南北」が空中分解した後にゆうは美嘉と再会し「ファン1号」として告げられ、その後アイドルではなくなった「東西南北」の他の3人と再会し本編は終わる。

此処に至るまでのゆう(だけではないが)心境の変化が原作小説では殆ど書かれないのだ。一読しただけなので見落としているだけかもしれないが、何にせよ印象に残らなかったのは事実だ。

これでは感情移入以前の問題である。

アニメ映画版

原作を一読した私は...正直映画の出来にもあまり期待していなかった。上田麗奈氏が華鳥蘭子役を演じるのでそれだけは期待していた。

そして映画をミッドランドスクエアにて見たのだが、期待よりはずっと良かったというのが率直な意見である。色々良かった点はあるのだが、一番良かったのは「終盤(正確に言うと「東西南北」契約解除後)の東ゆうの心理描写」が大幅に増えていたのは良かった。

例えば...
◎ゆうが解散により精神的にどん底となり不登校状態になっていた時の母のフォロー 具体例を1つ挙げると「嫌な奴だよね」というゆうに対し「そういうところも、そうじゃないところもあるよ。ゆうには。」というのはゆうには響いたと思う。

◎デビュー曲「なりたいじぶん」 映画オリジナル要素だが、映画においてはこの曲が収録されたCDを4人が同じタイミングで購入したことで再会に至った。再開に至る経緯としては良いと思う。

他に語るとすれば‥上田麗奈さんの演技だろうか。華鳥蘭子は良い意味で上田麗奈さんと分からない、情緒安定な演技であった。

率直な感想(小説と映画共通)

アイドル系統の作品は、最初は泣かず飛ばすで苦難を重ねながらもアイドルとして大成かそこまでいかなくともある程度自分たちなりのアイドルとしての着地点を見出すものが多い。

しかし本作はそうではない。4人はアイドル「東西南北」としては空中分解して終わってしまう。無論その後も話は続くし、(特に映画版では)この後こそがクライマックスでアイドル活動すらその前振り&伏線でしかない。何故そうなったか。色々と「東西南北」の4人がおかしくなったきっかけはあるが根本はこれに尽きるだろう。

主人公かつ「東西南北」発起人の東の星、東ゆうを除いては、そもそもアイドルへの志も適性も無かったのだ。この手のタイプは作中でアイドルの魅力に気づき成長..というパターンも多いが本作はそうはいかなった。

東ゆうでなくて、凄腕のプロデューサーでよても華鳥蘭子、大河くるみ、亀井美嘉の3人を「アイドル」という方向に向けるには無理だろう。

「気付いたことがあるの。アイドルって楽しくないわ。」

華鳥蘭子

華鳥蘭子のこの一言が全てだった。


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