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商標の類否判断 ②商品・役務の類否

自社で提供しようとする商品名・サービス名などについて、他者商標のチェックを依頼される場合があります。
商標の類否は、①商標(標章)の類否と、②商品・役務の類否の2つを判断する必要があります。本記事では、前記事に続いて、②商品・役務の類否に関する基本的な考え方をまとめておきます。

なお、①商標の類否については、こちらをご参照ください。


基本的な考え方

商品・役務の類否判断は、2つの商品・役務に同一・類似の商標が使用された場合に、出所混同のおそれ(同一営業主の製造・販売に係る商品と誤認されるおそれ)があるか否かによって判断する。

商標が類似のものであるかどうかは、その商標を或る商品につき使用した場合に、 商品の出所について誤認混同を生ずる虞があると認められるものであるかどうかということにより判定すべきものと解するのが相当である。そして、指定商品が類似のものであるかどうかは、原判示のように、商品自体が取引上誤認混同の虞があるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞がある認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互に誤認混同を生ずる虞がないものであつても、それらの商標は商標法(大正10年法律99号)2条9号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。

最判昭和36年6月27日(橘正宗事件)

類否判断の基準

商標審査基準(4条1項11号「11.商品又は役務の類否判断について」参照)によれば、例えば、以下のような基準を総合的に考慮して判断される。ただし、これらに限定されるものではない。

商品の類否

  1. 生産部門が一致するかどうか

  2. 販売部門が一致するかどうか

  3. 原材料及び品質が一致するかどうか

  4. 用途が一致するかどうか

  5. 需要者の範囲が一致するかどうか

  6. 完成品と部品の関係にあるかどうか

役務の類否

  1. 提供の手段、目的又は場所が一致するかどうか

  2. 提供に関連する物品が一致するかどうか

  3. 需要者の範囲が一致するかどうか

  4. 業種が同じかどうか

  5. 当該役務に関する業務や事業者を規制する法律が同じかどうか

  6. 同一の事業者が提供するものであるかどうか

商品・役務間の類否

  1. 商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われるのが一般的であるかどうか

  2. 商品と役務の用途が一致するかどうか

  3. 商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうか

  4. 需要者の範囲が一致するかどうか

役務と商品とが類似するかどうかに関しては、前述の商標法の目的や商標の定義に照らし、役務又は商品についての出所の混同を招くおそれがあるかどうかを基準にして判断すべきであり、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか、商品と役務の用途が一致するかどうか、商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうか、需要者の範囲が一致するかどうかなどの事情を総合的に考慮した上で、個別具体的に判断するのが相当である。 そして、商品の販売という役務に用いられるべき標章と同一又はこれに類似する標章を、当該商品の名称として使用した場合には、当該役務の提供者と当該商品の出所とが同一であるとの印象を需要者・取引者に与えると解される。 

東京地判平成11年10月21日(ヴィラージュ事件:平成11年(ワ)438号)

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