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0~3歳向けオンラインリトミックをやってみた

近年、幼児の音楽教育として注目を集めてきたリトミック。しかし、新型コロナウイルスが拡大する今、どこの教室も休校に追いやられています。リトミックのレッスンは、ピアノや電子ピアノがある"密閉空間”。複数のお友だちと手をつないだりハイタッチをしたりの"密集活動"で、さらには大きな声で歌やリズムを発声する"密接内容"...いわゆる「3密」の極みだからです。お友だちと手をつないで歌を歌える日は、いつ戻ってくるのでしょうか…。

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リトミックの先生、乳幼児向け教室の先生は、レッスンをしたくてもできないこの事態に、頭を悩ませていることと思います。集中力が必要なリトミックを画面を通して行うことに抵抗感がありましたが、自粛の長期化がみえてきたことと、生徒からの要望で重い腰をあげました。私が試してみたことを書き留めることで、今後の方向性に迷われている先生方や、心配されている親御さん、おうちで時間を持て余している子どもたちの助けになればと思い、ここに綴ります。

教室の概要

私の教室は、まだまだ若い教室で「ベビークラス」「1歳児クラス」「2歳児クラス」と乳幼児が中心です。いろいろなニュアンスの音や音楽、素材、空気…季節のものに触れて感性を養うという、本格的な音楽教育に入る前の内容です。

これまでの経緯

3月から休校にしました。しかし、3月は修了の節目の季節。毎日、政府の会見やニュースを見ながら、夜も眠れない日々での決断でした。4月も休校の決断をしましたが、緊急事態宣言が出る前の判断はとてもつらかったです。

休校が生徒さんからも寂しいというお声をいただき、おうちで少しでも音楽を取り入れてもらえたら、おうちで楽しむきっかけがつくれたらと動画を配信しました。


「先生の想いが伝わりました」などと喜んでいただけましたが、生徒の反応が見れないことで継続に抵抗がありました。

オンラインで”リトミック”ができるのか?

どうやら、自粛が長期化しそう…このまま、毎月休校を決断するのみでは、子どもたちの心も、私の心も離れていきそうで、前に進むことを考えました。それが、オンラインリトミックです。

リトミックは、単に手遊びやお遊戯ではなく、その場の音楽を感じ取り、表現するものです。乳幼児のレッスンでは、音や息遣い、空気管、さまざまな素材や色に触れて感性を養うことを取り入れてきました。これらは画面を通しては伝えられません。その指針がブレてしまう気がして、オンラインリトミックを検討するも行動にうつせない日々が続きました。

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オンラインリトミックの目的は…

そこに、「オンラインリトミックやらないんですか?家で退屈していて…。みんなで歌を歌うだけでも元気がでると思うんです」という元生徒さんからのメッセージが届きました。

即時反応ができなくても、リズム教育にならなくても、今は音楽をするきっかけづくりが求められているんだ!

リトミックの本質は、音楽を表現すること。そのためには、まずは心のこもった音楽体験をたくさんして心を豊かにすることです。”家庭での音楽体験が豊かな心をつくる“という基本に立ち返って考えたとき、オンラインをする意味が見えてきました。

オンラインリトミックの目的は、親子で楽しい時間を過ごすための音楽あそびの提案。リアルとの目的の違いを親御さんに説明した上で、試験的にオンラインリトミックを実行することにしました。


オンラインリトミック テストの概要

○Web会議用アプリ「zoom」を活用

○全クラス合同

○テストなので無料

○平日10:30~11:10(zoomは40分で切れてしまうため、20~30分レッスンを予定)

○指導者の声を伝えやすくするため、レッスン中は(歌以外)全員ミュートにする

○内容:はじまりのうた/歌「ちゅーりっぷ」/歌「しあわせなら手をたたこう」/活動 お母さんの膝の上でバス(即時反応)/活動 動物になる(キリン・ゾウ・カメ・パンダ)※できるだけ親が関われる動き

実行までの流れ

①生徒さんに、LINE公式アカウントでテスト開催に関するご協力のお願いを配信

②12名の参加表明の返信あり。ほとんどの方がzoomが初めてで、「アプリダウンロードからでドキドキしますが、がんばります!」とちょっとしたイベント的な感じになりました。

③zoomをpcにインストールし、スマホを招待して家庭内テスト。音質が悪いことがネック。動きの説明をするための広い空間とピアノとの導線確認。pcを持って移動することに。

④zoomでミーティングを予定登録し、IDとPWを取得。LINE公式アカウントでIDとPWをお知らせ。

検証課題

○音質が維持できるか

○画面越しで集中してくれるか

○即時反応ができるか

○みんなで一緒に歌えるか

○そもそもこのような企画が求められているのか


検証結果

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まずは、実行してみてよかったです。何よりも、私自身がみんなの顔を見て元気をもらえました。子どもたちも、親御さんも同じ気持ちだったようで、とても喜んでいただけました。そして、歌うって気持ちいい!一人で歌うよりも、みんなで歌うとより幸福感が増します。そして、下に掲載した感想からも、みなさんに求められていたことなのだと感じました。

私が課題として挙げていた内容は…

○音質が維持できるか → OK

○即時反応ができるか → バッチリできていました。

○画面から離れる動きを入れることで集中が途切れないか → リアルレッスンで即時反応が身についていればOKだと思われます。体験や単発で入られた際は、そのケアができないので、事前にお伝えしておく必要がありそう。 

○みんなで一緒に歌えるか → 音が遅れて聴こえるとのこと。参加者が許容してくださっていますが、その後全員ミュートにして歌ったところ、「先生の声やピアノははっきり聞こえるけど、少し寂しい感じ」との意見が多数でした。

○そもそもこのような企画が求められているのか → 下の感想から求められているのでしょう。

退会者の参加も多い

驚いたことは、退会した生徒さんからの参加があったこと。プレ幼稚園や保育園入園のために退会した生徒さんたちも、今は園が自粛で自宅で時間を持て余しているようです。

参加者の感想・意見

回答率:8名/参加者12名中 ○=良い ●=要検討事項

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【子どものようす】

○終わってから「もう一回!!」と言われました(笑)※複数

○画面をのぞき込みながら話しかけていました。

○先生の声を覚えているようで、にやにやしていました(笑)

○みんなの顔が見れて終始楽しそうでした。

○声を出してみんなで歌うということが久しぶりだったので張り切って歌っていたように思います。

○はじめは不思議そうに見ていましたが、歌がはじまると嬉しそうにしていました。

○嬉しそうでした。集中力は普段のレッスンと変わらない印象です。(興味を持つときと持たないときとありました)

○画面から離れる動きの集中力は、何度か通って慣れているおかげか、音楽が変わると次に行くという感じがわかるみたいで、特に問題なかったです。

●画面ごしだと集中力が持たず後半は参加できなかったです。(1歳。リアル教室参加回数4回)

●途中で電車やる~と言い始めましたが、違う内容になったら気を持ち直しました。飽きるか飽きずかギリギリの時間のような気もしました。(2歳。1年前に退会済み。)

【お母さんの気持ち】

○とても楽しかったです。※複数回答

○久しぶりにみんなの顔が見られて嬉しかったです

○家にいることが長くなり、子どもとの関わりが適当になってしまっていて、、でも、今日のあの時間はちゃんと子供と向き合って関われたので本当によかったです。

○オンタイムがお教室感があって良いですね。いつでも見られると思うとなかなか始められなくて。

○親子でなかなか身体を使って遊ばないのでこんな遊び方もいいいなぁと参考になりました。

【zoomに関して】

○音声トラブル、画像トラブルなかったです。※3名回答

○音に関して、ピアノの音の後にどなたかが歌っている声が少し遅れてくる感じに聴こえました。ピアノに合わせて歌うのを意識していれば問題ないようです。

●映像が暗い。※2名回答  顔が暗く映ってしまっていたのでもう少し明るいと表情も良いく見れて嬉しいです。/ピアノのお部屋に行くと、先生の顔が見えなくなってしまうほど暗くなっていました。本の絵や文字は見えました。

●一方通行だと子どもたちが飽きてしまうかな??と思ったので、こっち(生徒側)の声がみんなに伝わっていることがわかればさらに楽しいかなと思いました。

新たな課題① 集中力について

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「いつもと変わらない集中力だった」「最後まで楽しんでいた」などの意見がある一方、「後半は参加できなかった」「途中で電車やるー・・・」など集中力に差がありました。後者は、リアルレッスンの受講回数が少なかったり、ブランクがあった人です。このことから、単発参加者やリトミック初心者は集中しずらいかもしれません。

これは、リアルレッスンでも同じことが言えます。レッスン中に駆け回ったりということは、乳幼児レッスンにはつきものですよね。しかし、リアルでは、ひとりひとりに対応したり、違うことに目が行ってしまっても”同じ空間にいる”ということだけでレッスンの意味がありますが、オンラインレッスンでは、画面から外れてしまったら手の施しようがありません。そのことを先生も親御さんも事前に理解しておく必要があるかと思います。

NHK教育テレビの代表番組「いないいないばぁ!」や「みいつけた!」などは、15分で統一されています。ベネッセコーポレーションのしまじろうの動画も15分のことが多いようです。このことからも、画面越しの集中力は15分が妥当とみることができそうです。

単発参加者や初心者が多ければ、15分でぎゅっと。私の教室のように面識のある参加者が多数の場合は、20~25分程度を考えても良いかもしれません。あとは、集中が途切れないようなレッスン展開を考えるのみです。

新たな課題② 画質について

画像が暗いとご指摘のあったカメラは、PCの内蔵カメラを使用していました。スポットライトなどを使用しても、ピアノの部屋は明るさがうまくでませんでした。Webカメラはどこも売り切れ。そこで、スマホのカメラ(iPhoneSE)を代用することにしました。以下のサイトを参考にしました。ものの5分で完了! 改めて検証してくださった生徒さんからは、画面が明るくなったとのお墨付きをいただきました。

【実践後】オンラインリトミックの目的

○家庭での歌唱や歌遊びのきっかけをつくる

○音楽を通して親子の遊びのきっかけをつくる

○お友だちとのコミュニティ:同じ時間に、同じものを見て、楽しんでいるという安心感

とはいえ、ビート感覚やリズム体験、身体表現やさまざまなニュアンス表現を促していくことには変わりありません。リアル教室との目的意識を変えて多くを求めないということです。

リアルは月2回、オンラインは月4回(毎週)に

私のレッスンは、月2回です。しかし、普段のレッスンよりも短い時間で、オンラインという少し距離のある形態ですから、少し寂しい気もします。毎週実践して生活に馴染ませてはどうかと考えました。自粛生活で行き場がなく、生活リズムが崩れているという声が聞かれたことが決め手となりました。

欠席者にも届けられる録画

zoomは録画モードがあります。録画したものを閲覧できるようにすれば、お昼寝にあたって参加できなかった方や、時間が合わなかった方などが楽しめるのではと考えました。また、参加者も振り返りができます。子どもたちの「もういっかい!」の声が多かったとの話からもアップロードしようと考えました。生徒さんたちの顔がたくさん入った動画は、信頼できるサイトにアップしたいです。YouTubeは、セキュリティをかけても他者に閲覧される可能性があるので、vimeoという動画アップロードアプリを活用しました。

https://vimeo.com/jp

収益化させるために

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試験的に実践したオンラインリトミックは無料でした。これから自粛が長期化する上での新たな取り組みですから、収益化していかなければなりません。友人のダンス教室では、月謝から1レッスンの価格を割り出し、その半額を受講した分だけ月末に支払うというしくみだそうです。母が通うダンス教室では、先生からの配信のみで月謝の半額とのこと。半額が相場のようです。

私の教室は、

月2回/40分/月謝3000円。1回あたり1500円という計算です。その半額なので、1回750円。

しかし、ダンスやピアノのように技術的なものはわかりやすいのですが、リトミックは感性や人間教育…伝えるものに実体がありません。レッスン時間も20~25分と約半分。なので、1回あたりの価格を下げることにしました。リアルでは単発を受け入れていませんでしたが、保育園自粛、プレ幼稚園や幼稚園も休校と一時的な需要が高まって、退会者が参加されるケースがあるため、単発も受け入れることにします。

月4回/20~25分/月謝2000円※録画つき 単発500円

支払いはLINE pay?

PayPayとLINEPayを検討しています。


まとめ

今、私たちの生活が大きく変わろうとしています。新型コロナウイルスを機に、勤務はテレワークが推進され、買い物は通販や宅配、リアル店舗でもキャッシュレス、紙幣よりも仮想通貨、新学期も9月になるかもしれない…。これまで受け入れられなかった変革を、受け入れざるを得ない。全世界が揺れ動いています。

会って、触れて、笑いあうリトミックは、事態が落ち着いたときに。今は、それぞれの家庭でできる音楽の土壌づくりのお手伝いをすることが、将来の子どもたちの成長につながるのではないでしょうか。離れていても”リトミック教室”という組織ができることを最大限考えたいと思います。


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