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「冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST~」観劇感想

長塚さんがKAATの芸術監督に就任されて立ち上げられた企画の一つに、劇場側から神奈川県内各地に出向いていって演劇を届けられないか?というものがありまして、その第一弾がこちらの「冒険者たち ~JOURNEY TO THE WEST」です。2022年2月8日の横浜(KAAT)から始まり最終地の横須賀まで計7か所の予定でしたが(下記チラシ参照)残念ながら途中2か所が公演中止となり、横浜・川崎・相模原・小田原・横須賀の5カ所で上演されましたが、幸いその何ヵ所か伺えたので楽しい一時を過ごすことが出来ました。

公演チラシ(表)
公演チラシ(裏)

今回の企画の主旨自体が、多くのお客様(大人・子供問わず)に演劇を楽しんで頂きたいという前提なので、観劇感想と言ってもあまり小難しいことを書くのも何かな?と思い、自分が面白かったなとか、笑っちゃったとか、凄いなと思ったとか、そんなところを箇条書きにしてみました。(順不同)

☆神奈川県の出落ち(笑)
☆行き倒れが似合い過ぎる三蔵法師
☆ニョキっと背中から出てくる電車の吊り革
☆ジャック&ベティーで上演されていた映画は「冒険者たち」なのかな?
 (「レティシア」というタイトルの映画音楽がありました)
☆(あ、本当に御坊さんなんだ)と思える三蔵法師@こがね町
☆玉龍の大輪くぐり、否、捕獲が上手い園長
☆園長につかまって(ちっ!)と思った瞬間にちょっと馬相が悪くなる玉龍
☆ヘビはヘビだし何とかなるか的な頼れる園長
☆気になるブラックマンバ(でも苦手なので検索出来ない)
☆人間には可愛い女の子に見えるけど実は青龍界の王子らしい
 という事は男子じゃないの?疑惑が残る玉龍
☆何となく馬語が解っちゃう園長(と解らない三蔵法師)
☆道祖神は変幻自在(前髪の分かれ目と共に声色も変わる)
☆恐るべし道祖神達の情報網(みんな三蔵が日本に来てること知っている)
☆観音経を覚えた皆様は凄いです(最初の10文字で挫折しました)
☆木像の弘法大師にムカつき始める三蔵法師(その俗っぽさが好き)
☆大好きが空回りした弘法大師木像が凹むのを放っておけず慰める三蔵法師
☆ハグされてちょっと嬉しそうな木像の弘法大師
☆慰められると復活が早い上にツケ上がるタイプの木像の弘法大師(笑)
☆途端に態度がデカくなる弘法大師をウザっと思う三蔵法師
☆慰めて内心<失敗した>と後悔した三蔵法師(もう遅い)
☆玉龍の「ぷるるんぷるるん」が好き
☆めくじり川に向かう前にちゃんと準備運動をする玉龍(えらい)
☆だんだん遅れていっちゃう玉龍に気付かない園長と三蔵法師
 (ダメじゃーん)(途中で待っててあげようよー)
☆妙に語呂が良いコストコ座間倉庫店
☆メジャーを持ってるわりには目で計っちゃう園長
☆子供の頃から動物商というマニアックな職業を目指す園長
☆コンビニ袋の中のお箸が二膳あったのを見て同棲を察する園長
 (するどい)
☆地元のカッパはキュウリが好きらしいんですが
 沙悟浄はバランス重視のサラダ派&野菜生活セット
☆沙悟浄の首にかかってる髑髏、ちゃんと9個ありました
☆さゆりを毛皮にしてマフラーにしたい沙悟浄の屈折した愛
☆カッパは水になっちゃうんだ・・・という衝撃
☆元息子の眼鏡をそっと持ち帰る沙悟浄
☆山下君が持ってきた御茶菓子(黒い丸いの)は何だろう?
 あんこ玉?と最初は思ったんですが小田原の御菓子のこれですかね?

その名も「ご黒うさん」

☆弁財天様の超マイペース
☆ささらの音、久しぶりに聴きましたー
☆いろんな音があって面白いんですが、おはんの返事とか特に好き
☆太鼓も叩ければギターも弾ける道祖神の中の人
☆春の日向のような角銅さんの柔らかい声
☆何でも演奏出来ちゃうし、ブンブン何か振り回してる角銅さん
☆孫悟空が「どぶいた通り」から沙悟浄のところまで一瞬で移動する時の音
 (何の音でも出せる角銅さん)
 (まさかマリンバも吹かれるとは思ってなかったろうな 笑)
☆孫悟空のミシンの音はちゃんと工業用
☆きんと雲を操れるのは孫悟空だけじゃなかったと初めて知る
☆弁財天様の8本の手にもなる「ささら」の丸薬を取る手の動きが好き
 (あのニョロンとした感じ)
☆冥界の中までも応援する道祖神大忙し
☆孫悟空と沙悟浄のヤンチャな二人(校舎の裏庭状態w)
☆孫悟空と沙悟浄の落ち着きのなさは小学生
 (人の話は最後まで聞きましょう)
☆金次郎のちょい切れ
☆悪かったなと思ったら素直に謝れる孫悟空
☆金次郎の目が上がった瞬間(おめでとー)
☆二宮金次郎の「次」は通名で幼名は「金治郎」@報徳二宮神社
☆おはんの首を傾げるしぐさが可愛い(想像だけど)
 (あざと可愛い系か?)(さすが元ペット)
☆御師匠様と命を共にする言葉に嘘なしな兄貴@孫悟空
☆孫悟空の「その時、俺はいない」と言い切るその言葉の説得力
 (あの言葉を観客が信じられないと多分とたんに陳腐になるかも)
☆座棺って今の子達は知ってるのかな?と心配になる
☆ところで心願が叶うあの御経は何という御経なんでしょう?
☆猪八戒を置いていこうとする三蔵法師と諫める弟子
 (立場とか見た目とか本当に関係ないよねと思う)
☆俺もちょっと・・・と言う沙悟浄に、変なところで感がいい三蔵法師
☆そういえば玉龍が持ってたスマホの出所にも直ぐ気付いた三蔵法師
☆神様も湯治なさるのねと思った大山祗大神さま
☆いや、神様と一緒に湯治ってそれこそ恐れ多くないですか?三蔵法師
 (と突っ込みたくなる 笑)


さて。
最後にちょっとだけ?芝居の感想を。

「冒険者たち」を横浜公演の時から何回か拝見させて頂いているんですが、その中で(だよねー)と感じることが二つあります。

一つは、人の立場と人の本質は必ずしも一致しない、ということ。
例えば、徳の高い僧であり後に偉業を成し遂げる三蔵法師でさえ俗世の欲には負けそうになる(お腹すくし、玉龍の分まで食べちゃうし、ちょっと玉龍のこと可愛いと思ってるし、仏典を取りに行くことを急ぐあまり弟子たちへの思いやりにかけちゃう面もあるし)。
逆に弟子である孫悟空達は(立場としては三蔵法師より下だけれど)自分達の命がけで御師匠様を助けようとする、その真心に偽りがないんですよね。

長塚さんがトークショーで御話されていたように、確かに今回のツアーの美術セットの木工は作れると思うけれど(笑)、肝心要な部分の言葉を観客が信じられるか?とか、効果音まで含めた多彩な音の面白さとか、「誰でも出来る」とは言い難い面も多分にあって、それらの表現としてのクオリティーが作品の面白さに直結してるんじゃないかな?と感じます。

二つ目は、劇中、ところどころで出没する道祖神ですけれど、中では「道とか、辻とか」と表現されていますが、何となく(勝手に感じただけですけど)自分でも気付かない内に自分のことを大切に思ってくれている人達の想いとか手助けとか、そういう「数々の想い」の具象化のようにも思えるんですよね。自分一人で生きているわけでもなくて、仮に孤独を感じていたとしても、互いに自分の気付かない内に誰かに助けられたり助けたりしている、この世の中なんじゃないかとも。

劇場の中って、一人一人の御客さんそれぞれ日常の中の色々な想いや感情を抱えていて、この数時間、同じ空間で同じものを見ているけれど、本当に人それぞれ、色々な想いを感じているんだろうなぁ・・・と思います。
そう考えると劇場という場所の特殊性を実感すると共に、身近にそういう場所がある必要性を改めて思う時、この「神奈川ツアープロジェクト」を通して劇場という場所が神奈川県内の地元の皆様の生活に根付くことを心から願っています。